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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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16話 穴へ

 一言それだけ言って、そのまま街道を走った。


 遠く、荷馬車の皆がありがとうと言っていた。

 私はガストンの真似をして手を挙げた。


 目当てのつく場所まで走ってから森に入った。

 しばらくすると崖のはずだ。


 川の音がだんだん大きくなっきている。


 崖にたどり着いたが、前に戦った場所より反対側が広い。

 しかし、向こう側が開けていて気に入った。


 少し戻ってから助走をつけて飛んだ。


 いけるか?


 思ったより高く飛べたのでそのまま樹の枝につかまり、回転して乗る。

 ……最初に目覚めた時より動けるようになってないか?

 鉈を手に持ってるんだぞ。

 握った手はちゃんと使えてもいないんだ。


 身体が強くなっている気がする。


 あのブレゴと名乗った馬の“しゃべらない言葉”も、少し不思議な気がする。

 一日たったからか、前の自分とは変わっている。


 まぁいい、おいおい確かめていこう。

 

 スチャ……短剣を、眼前を歩くホブゴブリンの後頭部に投げた。

 同時に飛び立ち、剣鉈を振りかぶる。

 ズドッ。


 次だ。


 後頭部から短剣をはやして倒れた音に驚き振り向くもう一体のホブゴブリンの上空から、銀の閃きが走る。

 ズバンッ!

 その光景が、彼の最後に見た景色だった。


 ビュオンッ、ビシャッ。

 二匹を屠り、目ぼしいものを漁って走り出しながら、剣鉈を見る。

 ドロっと血まみれたそれは、刃こぼれだらけでボロボロになっていた。

 ちょっとまずいかもしれない。

 ガチャ……。

 短剣がまた増えたが。


 崖のこちら側は蛇が多かった。


 警戒しつつ急ぐ間、小集団と二つ遭遇し殺した。

 魔狼ワーグも一匹いた。

 奴はゴブリンより感覚が鋭かったがなんなく倒せた。


 矢がいくつか手に入った。

 盾持ちが最初にいたのでひったくり、防御と突きを実践? してみた。


 長剣はなく剣先がない剣鉈だった為、鉈の跡にへこんでゴブリンは死んだ。

 悪くないが、剣鉈でするものではないと納得した。


 なるべく戦闘を避けていてこれだ。

 ゴブリンの数はとても多い。

 気配も匂いも、実際の数もだ。

 恐らく異常なことなのだろう。


 こいつ等はどこから来ているのだろうか? お化け穴の中からたくさんやってきているのだろうか? 深いのか?


 そう思案しつつ、大きく空いた暗闇の奥を見つめた。


 穴の場所はすぐに分かった。

 何しろむかむかする臭いがだんだん強くなってきていたからだ。

 ゴブリン共からもわずかにしていた臭いでもあった。

 というか、奴らの腰布の臭いだ。


 ゴブリン自体も特有の臭いはしているのだが、それとは別のものだった。

「あ」

 そう考えてハッと気が付く。

 変異していたゴブも同じ臭いだったと。


 穴は森に坂、傾斜増えて昇りなり始めてから突然視界に現れた。

 崖に似た形の土、いや岩壁にホブ三体を横に並ばせた大きさで開いている。


 見てる間に二匹ゴブが出入りしていた。

 ホォォォオオ。

 奥から何者かの声が響いてくる。


 臭い共に生ぬるい風が吹いた。

 ああ。

 風の音っぽいな。


 これがお化けとやらなのだろうか?


 さて、行こう。

 特に必要ないものはここの、樹の上の、何もいないうろの中に隠しておく。

 魔法薬も持っていく。

 少しこっそり、ええと、忍ぶ? か?

 それか突撃するか?

 

 ちょっと迷ったが同じことだと思い、剣鉈を構え穴に入って行った。



 ――――


 マルコ「あれ? 家だ……とうちゃん? ねえちゃん?」

 目を覚ますと二人とも起きたのかいなかった。

「スン……くさいっ」

 あたりが酒臭い。

 酒瓶が転がっている。

「もうおひるかな? おなかへったぁ~わっ! なんであなぽこだらけなのとびら!?」


 その時、広場の鐘の音がかすかに聞こえた。

 三回、行商が来た時の合図の音だった。


「! ケンおじちゃんきた!! うおおおお」

 ニコは走った。


 広場は大騒ぎだった。

 行商がやっと来たことも嬉しいが、なんと数日前に襲われ逃げ帰った際に、ゴブリンの暴走の兆候があると街に知らせたそうだ

 現在討伐体が組織されているという。


 村長の膝が崩れ落ちる。

「と、ということはじゃの、耐え忍んでおりゃあ無事に済むかもしれんのぅ。救援も呼ばなくてよいしのぉ。ふぅおお~~」


「よおおし!!」

 マルコは両手を天に突きあげた。


 これで行ける。


 救援の任ではなく、攻めの任に。

 ルーナに追いつこうと。 


 さっきは悔しかった。

 あいつ、絶ってぇ先走る気だと思ってたんだ。


 ちくしょうめ!

 罵った連中はどうしもうもねぇボンクラだよな!

 俺もなんも言えねぇで見てるしかなかった馬鹿野郎だよ!


 村がちょっとばかし心配だけどな。

「おぃガストン! ちょっとつきあえや!」

 マルコは冒険者の血が騒いで仕方がなかった。


「ああん? なんだよ藪から棒に」


 そして、行商の面々も大変驚いていた。

 門の横に大量のゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンシャーマン、ワーグと死屍累々。

 更には見たこともない、歪で巨大なホブゴブリンの死骸が積まれ、山になっていたのだ。


 確実にゴブリンの暴走を確信した。

 

「ちょ、ちょっと待ってください、誰か、誰か、あ村長! これ、これ誰が、皆さんが!? まさか……まさか……」


 明らかに元冒険者のマルコと村の人々だけで倒したのは無理がある。

 討伐体を組織したとしても被害はもっと出る方だ。


 ケンウッドはその実、本当は誰がやったかは、薄々頭のどこかでわかってはいた。

 しかし、理性がそれを認めまいとしていた。


 マルコ「あぁ、もちろんルーナに決まってらぁ」

 一同「「誰だそれ?」」

 彼女の名乗りをわずかに聞いた一部「「あぁ」」「やっぱりか」


 ケンウッド達「「あ、やっぱり」」


 一同「ええ? 知ってるの? なんで?」


 村長とケンウッド「あのエルフのお方ですね」


 どういうこと? とひそひそと村人。

 マルコの親父が名付けたって言ってたぜ、と中年傭兵のガストンが答えた。


 村人と行商と護衛の彼らはお互い旧知の仲だ。


 ケンウッド「ここまでこれたのも通りがかった彼女の助力のおかげです」

 ガストン「だな」


 マルコ「(ガストンの馬鹿が怪我してら)ケンウッドさんよ、ルーナは街に向かったかい?」

「はい? や、いえ、途中で何故か森に入って行きましたね……山の方でしょうか」

 彼は遠くで止まって、道を外れ森に入っていったのを見ていたのだった。


「なぁ? はぁ~やっぱりか! おい! 聞いたかおめえら! ルーナのやつは俺達に断りもせず黙ってよぉ、一足先に連中のいる洞窟に向かってったぞ! どうすんだ! 小娘に守ってもらった腰抜け共!? 俺は今すぐ追っかけるぞ!」


 ニコ「ぼくもいく!!」

「坊主は留守番だ!」

「ブウウウウウ!」


「お、俺行く!」「俺も!」「僕も行かせてください!」「私も連れてっとくれよ!」

「あたちも!」「ギャハハハ俺もいくぜぇ~ヒック、千鳥足だけど、行くぜぇ~」


「ちびっこいのも酔っ払いもダメだ! 戦えるやつ……おめぇと、おめぇ残れ、よし、半分だけついてこい! おいケンウッドさん、ガストンのやつも貸してくれや」


「なんでだよ! おめぇそもそも引退したんじゃねぇのか! ……そんで、肝心の報酬は出るんだろうな? 誰持ちだ?」


 ケンウッド「ちょ、ちょっと待ってくださいマルコさん。ルーナさんが単独でゴブリンの暴走源に向かったと言うのですか!?」


 ビクター「暴走源って」

 ソニー「スタンピードの元凶がその洞窟にあるんだよお兄ちゃん」


「だからそう言ってんだろうが。もう一週間も持たねぇぞこの増え方だと」


 ケンウッドは死骸の山と、ホブゴブリン数匹を見る。

 ゴブリンの軍団が出来上がりつつある証拠が目の前にある。


「わかりました。報酬はこちらからも出させてもらいます。ガストン、構いませんか?」

「出るならどこだって行くぜ、親父も来るしあの姉ちゃんも向かったんだろ? ルーナっつったか」

 と、ガストンは死骸の山をニヤニヤ見ている。

 金勘定しているように見える。


「では条件としてこの兄弟も連れて行ってください、有望株です」

 ケンウッドはガストンに続いて兄妹にも目線で確認を取る。

 兄妹「「え!?」」


 驚いた後、ヒソヒソ相談し始める。

 ビクター「……ソニーいいかい? わかった。じ、自分たちも連れて行ってください!」


 ニコ「ぼくもぉ!」

 一同「「駄目だって」」


 ガストン「ふぅむ……」

 ガシャ。

 大剣を杖代わりにし、変異した異様な魔物を彼は見下ろしていた。


 村長「うむ、勿論こちらも報酬は出す。村は保たせる。無事で帰ってくるんじゃぞ」


 マルコ「へっへっへそうこなくちゃなぁ、よぉ~しおめえら! 町の連中に先越されるんじゃねぇぞ! 早い者勝ちだからなぁ! ってもルーナの嬢ちゃんがもぅ全部片づけちまってっかもしれねぇけどなぁ!! 行くぞおお!!」


「「オオオオオオオオ!!」」


読んでくださりありがとうございます。

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