表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音 
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
15/64

15話 街道走

 街道は走りやすい、ので爆走する。


 山脈や記憶を頼りに目算しお化け穴とやらの近くで森に入ろうと考えた。

 崖の在った地点から奥に洞窟があるはず。


 道の向こうに影が見える。

 ゴブリンが二匹、こっちを背にして向こうへと走っていた。

 向こうに何かあるのだろうか?


 ボキッ!

 ザンッ!

 パタパタと走る二匹の右側の首を思いきり飛び蹴り、反動で飛ぶように左斜め前の首斬り飛ばした。


 ドサァッズザァーーッ……。

 吹き飛んで滑りながらゴブリンは首の骨を折って死亡していた。


 キインッ。

 ヒヒイインッ。


 立ち止まり耳を澄ますと、戦う音が向こうからしている。

 先の街道は曲がっていて向こうは見えない。


 音源に真っすぐ直進するように森を突っきって、茂みの中から音の場所を覗き見た。


 キイィンッ!

 ガアンッ! ガンッ!

 ???「くそっ! まずったぜ、ゴブ如きに……」

 ???「このっ! このおっ!」

 ???「お兄ちゃん!」

 ???「横ですっ! 横からも来てますよ!」


 ゴブリンの集団に荷馬車が襲われていた。

 ぎりぎりで今すぐにも全滅しそうだった。


 道を外れ斜めに溝に片側が落ちて、立ち往生している。


 馬の手綱を道に戻そうと引っ張る、ゆったりした衣に身を包んだ、恐らく行商人の小さな男。

 背後を守るように、護衛の少女が“杖”と短剣を。

 少年が長細い剣と、四角い中くらいの盾でゴブリンの攻撃を防いで、一匹の腕を斬りつけた。

 剣士と魔法使いか。

 二人とも同じ緑の髪だ。


 !

 少女が先ほど前から何か唱えていたのが終わり、杖のすぐ先の空中から水の玉が出現し、どんどん大きく、ゴブリンの頭ぐらいの大きさになった。


 かと思うと高速で飛んで、少年が突く剣を、ボロ盾で防いだ一匹の頭部に、ぶつかってつんのめさせた。


 鼻が潰れて血が水しぶきと一緒に弾けている。

 まるで岩をぶつけたようだな。


 すかさず長細剣で止め刺そうとする少年。


 しかし、横やりを入れてきた一匹の攻撃をぎりぎりでよけ、あわてて後退した。

「ヤラセナゲヒャヒャー」


 そっと弓をつがえる。


 荷馬車の反対側には片手を抑えた中年の男がいる。

 右目のみの片目で、左に眼帯、をしているな。

 この男は黒髪だが、ごくわずかに緑だ。

 皆兄妹だろうか。


 ボルトが、抑えた腕と脇に二本も刺さって流血している。

 大剣使いのようだが、振り回せそうにない。

 苦しそうだ。


 腕を抑える手には短剣。

 男は背後側からゴブリン達の接近をけん制していた。


 敵は五匹で、うち四匹が盾を持っている。

 獲物は短剣二、棍棒一、小剣二だ。

 背後は棍棒持ち。


 更には街道の片側端、待ち伏せ穴の蓋が開いてボルトを撃っている。

 ガアンッ!

 少年が盾で娘に当たるのを防いだ。


 ピヒュンッ――。

 私もその穴に向かって弓を撃った。

「グェッ」

 一同「「!?」」

 続けて二斉射し、四匹固まってる内、手前の短剣二匹の背中を撃つ。


 弓を捨て少年と打ち合う一匹を無視し、少女に回り込もうとする一匹に駆け寄り、剣鉈でぶった斬る。

 ズガンッ!


「!? っ一対一なら!」

 ドガアッ――ズド!

 少年が小剣を振りかぶるゴブリンに、盾を押しぶつけ体勢を崩してから長細剣を胴体に突く。

 そして直ぐに抜き、痛みに悲鳴を上げうろたえたその隙を下から斜めに首を切り裂いて、蹴り飛ばした。


 ズドッ!

 周囲を警戒しつつ、瀕死のそれに駆け寄りとどめを刺した。


 油断なく周りを警戒し、私を、待ち伏せ穴を、そしてまた私を見た。

 少年「ハァッハァッハァッ」

 見事だ。


 ブンブン――バキャッ!

 そうこうしながらも、私の投げた剣鉈が、後方の男に飛び掛かるゴブリンの頭部をかち割り吹っ飛ばす。

「どわあ!? なんだいきなり!」


 と後方から男の叫び声。


 行商人が仰天した目で私を見ている。

 彼は人族ではなかった……動物の顔で、驚いて衣から尻尾が持ち上がっている。

 ヒゲがひくひくして、目がまん丸だ。


 少女もだが、少年と同様に突然の乱入者に警戒をしている。


 二人は顔立ちが似ていた。

「お、お兄ちゃん、あの人」

 少年「ゆ、油断するなソニー!」


 後方から傷ついた男がこちらに来る

「おい今の……うわ! なんだあんた!?」

 商人「あ、あなた様はもしや」


 彼らはいいが、私はすぐさま取って返して弓を拾い上げ、道の向こう側の森に狙いをつけた。

 一同「「!?」」


 何かが来る。


 ふと思い、矢を二本、同時につがえてみた。


 なんだかいける気がする。

 撃った。

 左右に飛んだ矢が飛び出てきた二匹の頭部に、それぞれ当たってつんのめって倒れた。

 よし。


「ブルルル!」「グベッ」

 グシャッ!

 皆「「うわっ」」

 まだ生きてるのがいたようで、馬が顔を踏み潰した。


 少女「うそ、まだ居たの!?」

 少年「え!? 今」

 男「ヒューッ、二本打ちかよ、痛つっ……」


 無理をしたせいか一本駄目になった気がする。


 確かめに行くとやはり羽が駄目になっていた。

 残りは十一本だ。


 少年「おい! お前!」

 少女「あ、あのぉー?」

 中年「おい、そこのエルフの姉ちゃんよう!」

 いかん、気持ちが急いでいた。


「こんにちは、もう大丈夫だ」


 商人風の男「おや、これはこれは、今日はお嬢さん。私の名はケンウッドと申します……獣人をご覧になるのは初めてでしょうか? 私はカワウソの獣人でございます。今は集落間の物資を移動し、売り歩く行商人をさせてもらっている若輩者でございます」

 うん?


 ケンウッドというカワウソ、の獣人は衣のフードを降ろしてお辞儀して色々言って来た。

 丁寧な言い方、なのだろうか。


 耳が小さく、頭も手も滑らかな毛皮に包まれていた。

 髭がひくひくしている。

 多分、全員からもだが、かなり警戒されている。


 ケンウッド「この者は傭兵のガストンと、こちらの傭兵の兄妹はビクター、そして妹の魔術士ソニーでございます」

 魔術士。

 ゴブリンの呪術士とは別なのだろうか。


「きれい……」

 ソニーという少女はゆったりとした長い衣服で、ゴブリン呪術士と同じ感じだが、ずっと清潔で青と白にわずかな桃の色合いもよい。


「……」

 ビクターという少年は兄か。皮鎧で他は金属の胸当てに兜に籠手と長靴姿で、中型角盾と長細剣を構えている。

 妹を後ろに隠すようにして、警戒されている。


「冒険者な」

 ガストンという熟練らしき片目の中年は大きい外套の下に、金属の細かい輪を重ねた服のような鎧を着ていて、皮の長靴には鉄板がはめ込まれている。使い込んでそうな見事な大剣を引きずっている。


 それと多分、怪我をしてるようだが、私が下手に動くとあの大剣を振って来そうだ。

 立ち位置をさっきからそういうふうにして少しずつ動かしている。

 ケンウッド達を守ろうとしてるかのように。


「いえガストンさん、他国の方ですから、ギルドを知らないかと……」

 ギルド、村で誰かが言ってた、冒険者組合の別の言い方か。


 彼は恐らく、ゴブリンなんかより強い。

 下半身の具足、路肩に傾いて沈んだ馬車の後車輪と同じに泥まみれだ。

 そう言うことなのかもしれない。


 ケンウッド「この度は手助けをして頂き誠にありがとうございます」

 中年が手を上げ、少女は驚いて素早く背を曲げ、少年は睨みながらも頭を少し上下にした。

 個性的だ。


「エルフ殿は大変腕が立ってらっしゃいますね。我々はこのすぐ先のベイリ村に行く途中なのですが、よろしければお礼の相談もかねて道中のお話をお聞かせ願えますか?」


 ビクター「ケンウッドさん! 得体が知れないですよこのにんげ……エルフの女」

 中年ガストン「おめえは黙ってろっ、あ痛てて」

 ソニー「あ!大変! ガストンさん今治療しますね」


「すまねぇ、とりあえずボルト抜いてくれ、ビクター、その待ち伏せ穴は平気か?」


 ケンウッド「ビクターさん、ここは雇い主の私に任せてください。周りの警戒をお願いします。失礼しました。どうでしょうか。お幾らか色を付けさせてもらいます」

「は、はいっ、はい、わかりました」


 中年ガストン「いってぇ!もっと優しくっ優しく抜いて!」


 ビクター「先輩、中は一匹いて、もう死んでます」


「すまないが何もいらない。急いでいる。私は“村”から出てきたところだ。あ、ゴブリンの短剣を何本かもらっていいだろうか」


「え、ええもちろんですよ。“ベイリ村”の人たちは無事ですか?」

 ケンウッドは私の背後、村の方角に視線を動かして、そう聞いて来た。

「ああ、男たちが何人かケガしていたけど皆元気だ」


 投げやすそうな二本をもらい、皮鎧の帯に装着する。

 周りの足跡を見るに、ゴブリン達の来た方角は、お化け穴からだな。

 そうしながらも私は、ソニーの治療とやらから目が離せなかった。

 

 魔術士と思われる少女、ソニーがまじないいをヒソヒソと唱えている。

 ガストンとやらの傷口に手と杖先を当てながら。


 水のつぶてを出した時と、ゴブリン呪術師の目くらましとやらが言ってたまじないのと似ているが、どこか違う。


 今回は子守唄みたいだ。


 ケンウッド「エルフ殿、魔術に興味がごありで?」

 彼は私の耳をチラっと見てから言う。


「うん、ゴブリンの呪術士とやらも、今やってるのとは違うのを使っていた」

「ほう」

「目くらましとかマルコが言ってた。眼が真っ暗になるやつだ」


 ガストン「あん? なんだ、ひょっとして、顔見知り繋がりか姉さん」

 兄妹「「?」」


 話してる間に、魔法を当てた辺りが柔らかく光り、鎖でできた服の隙間の傷が治ってゆくのが見れた。

 怪我の血の中に、怪我してない肌が出来ている。


「あぁ、マルコさんをご存じで、しかしそれは、黒魔術ですね、ゴブリンシャーマンが出ましたか、やはり……」

 ビクター「え? まさか、村が襲われたんですか? 村まで?」

 ガストン「まぁマルコの親父がいるし、大丈夫だったんだろ」

 シャーマン? ……小鬼呪術士の別の呼び名だな。


 ガストン「あ~~染みるわ、治ったか? 助かったぜソニー、ったく、くそゴブ野郎、隙間にまんまと撃ち込みやがって、完全に油断してたぜ……泥んこだしよ」


 ブルルンッ。

 馬車もだな。


 見ると怪我が塞がっていた。

 傷を治す魔法のようだ。

 すごい。


 じっと見つめているとソニーが真っ赤になってうつむいた。

「あ、あの、あまり見つめられると、恥ずかしいです」

 声がしりすぼみになっていく。

「すまない。怒らないでくれ」

「? あああの、お怒ってはないです」


 ビクター少年「ケンウッドさん、もう奴らはいなさそうです。さっさと移動しましょう」

 チラチラこちらを見ながら少年が言う

 私も賛成だ。


「わかりました。あ、エルフ殿、お名前をお聞きしても構いませんか?」

「構わない。私はルーナだ。マルコがくれた」


 一同「「くれた?」」


「じゃあ」

 私は助走の準備を始める。


「あ! ちょっ、ちょっとお待ちを! ルーナ殿!」

 ケンウッドが慌てて荷馬車に屈みこんでゴソゴソやってこちらに来る。

「どうぞこれをお受け取りください。“汝の道を照らすように”」

「?」


 中が少し透けて見える、赤い汁の入った栓のしてある小瓶を両手で差し出してきた。


 これは……。

「酒だな」


 ――「違います。魔法薬です。治療水とも呼びます。怪我をした際、ひどく疲れた際に飲み干すと瞬く間にそれが治療されます」


「ほう。ありがとう」

 大事に鞄にしまった。


 ケンウッドは私の首位の高さだ。

「いえいえ、大変命拾いしました。感謝するのはこちらの方でございます」

 ケンウッドは前に村人がしたように腰を曲げて頭を下げてきた。

 村人よりさらに深い。

 丁度ニコの頭ぐらいの高さだったので、なでた。

「うむ」


 すべすべしてて気持ちがいい。

 しっぽがフルフル震えている。


 ガストン「なにしてんだ嬢ちゃん」

 兄ビクター「あんた何やってんだ!?」

 ソニー「ぁ、いいなぁ、お兄ちゃん」


「あはは、これはお恥ずかしい」


 去ろうとしたが、彼らは溝に落ちた荷馬車を、協力して引き上げようとしていたのでそれだけ手伝った。


「ここか?」

 中年ガストン「おぅ、せーので押してくれ、だんな! いいぞ!」

 兄弟は前から、ケンウッドは馬の手綱を引っ張る役を。


 私とガストンは後ろから押す。

 一同「「せーのっ」」

「ってうわあっ!」


 ガラアアアっ! 荷馬車は簡単に溝から外れ街道に戻った。

 抑えた馬車が勢いよく前に行き過ぎて、両手を空振りしたガストンが思い切り滑り転び、溝の泥に顔を突っ込んだ。

 兄弟は尻もちをついていた。


 ガストン「おいおいルーナ? すげえ力だな!?」

 兄妹「「??」」

 ケンウッド「お、驚きましたね……」


「ブヒュンアリガトルルッ」

 と馬がそう言った気がする。

 ……ブレゴと名があるのか? すごいな。

 私は朝に名をもらったばかりだぞ。

 どういたしまして、ブレゴ。


 一同「「……」」


 思ったより軽かったな。


「では、さらばだ」


読んでくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ