13話 夜襲
「弓持ちは下がって横から隙を狙え!」
「俺と嬢ちゃんが斬り込むから続け! 奥にいる“呪術野郎”の“目くらまし”に気ぃつけよろよ! 残りは路地に逃げる奴に気を付けろ! 女達の家に入られるなよ!」
マルコが指示を出している。
ふむ、さっき出会ったばかりだが、彼は良いな。ただの村人と違う、斧もすごいし。
……呪術野郎? 目くらまし?
ともかく戦おうか。
小剣を手先でくるりと回し、突っ込む。
やはり使いやすい。
左の一匹の首を切り落としながら、勢いそのまま剣鉈の柄を掴み引っ張るようにして突き進む。
鉈が引っこ抜けた。
勢いそのままで中型に斬り込む。
ボグッ!
剣鉈の勢いは中型の持つ短剣では耐えられずに頭蓋ごとめり込んだ。
左右から槍持ちの小が怯えながらも突いて来る。
鉈から手を離し、くぐるようにして転がり進む。
素早く回転するように回り込んで、その勢いで右の槍持ちを下から斜めに斬り上げた。 残十。
マルコが遅れて突っ込んで来た。
両手の手斧――戦斧か、風のようにビュンビュンと振り回されて、槍持ちが切り刻まれた。
近くの小をその巨体で蹴り飛ばして、家の壁にめり込ませた、残八。
村の男達が突っ込んで来る。
マルコと目配せし、お互い脇に避けるようにして敵の足や脇を流し斬りし、奥へ。
男達の木槍の突きや棍棒の攻撃がそれらに当たる。
中一と小二匹が死んだ、残五。
その時だった。
後方で見守る男が叫ぶ。
「エルフん姉さん! すげえ“すばしっこいの”がそっち行ったどお!」
!
近くの家屋、間の通路、台車の影から、黒い影が素早く足元に迫る――キラリと光る短剣。
わかるぞ、よし来い――「っ!?」
突然、同時に目の前が真っ暗になった!
何だ!?
あ! またこれか!
マルコ「目くらましか!? 嬢ちゃん黒い奴が足元に来たぞ!」
男達「”呪術士”が居やがんのか!」「まま魔法だべ!?」「呪に気を付けろお!」
目くらまし?
呪術士と呼ぶのか彼らは。
呪。
いかん来る!
――後方に向かって飛んだ。足の裏を少し斬られた。
慌てて飛んだが、何も見えない。
集中しろ。
恐らく……。
剣鉈がめり込んだ中型の倒れた死骸の傍に、うまいこと狙い通りに着地した。
まっすぐこっちに突っ込んでくるすばしっこい奴の気配がする。
見えない彼女の元へ、ジグザグに夜の村の影を蛇みたいに迫っていた。
「っ」
視えなくても感覚でわかるぞ。
剣鉈で防ぐように構える。
ズドンッ。
突然、横から戦斧が勢いよく回転しながら、影を巻き込み目の前を通り過ぎ、近くの家屋の窓を突き破って飛び込んでいった。
ガシャアアアンッ!
「キャアアアア!」
「何? 死んでるの!?」
「ウワアアアア何これ!? 何!? この真っ黒いゴブリン!!」
ニコだ。
マルコはよく動くのでわかりやすい。
相手しないでよかったんだ。
ヒュウンッ――ドスッ。
そして、鎧から瞬時に抜いた短剣を投げる。
「グペッ」
右の呪術士の法服の黒い顔の中に短剣が吸い込まれた。
おお、当たるとは思わなかった。
「ぅおっ」
む、視界が元に戻った!
左手ではマルコが片方の戦斧を高速で振り回しながら呪術士に近づいている。
「ウオオアアアアかかってこいオララアアア!」
彼も食らったようだ。
見ればマルコの目の辺りに黒い靄が集まっている。
なるほど。私もああなってたのか。
マルコの戦斧がどんどん早くなっていくな、誰も近づけないぞ。
「温まって来たぞおおお!」
ブオオオオオ!
風が吹き荒れて、まるで旋風だ。
このまま突っ込んでいけば恐らく、敵は全部粉々になるな。
今は何も見えないところでそこだけ嵐のようになっている。
最後の呪術士ゴブリンは脂汗を流し呪文らしきものをブツブツ唱えながら後ずさっている。
隙だらけだな。
「射て射てえ!」
バンバンッ―ヒュンヒュンヒュンッ。
後方の男たちの矢の一本に貫かれた。
ドサリ。
最後の一匹の小はあわあわとしてる隙に、背後の窓を開けて、中年の女性が平たい鍋で後頭部を叩いて倒した。
ガアアンッ!
他にはもういない。
あいつだけだ。
私はのしのしと歩み出て来る、最後の大型の二つ首を睨みつけていた、残一。
ズズウンッ!
睨み合う、首の二つある一部青黒いホブゴブリンとエルフの娘。
二首「フゴオオオッ」
「……」
ゴブリンは大人の男を掴んでるかのような大きな棍棒を軽々と片手で持っている。
反対には折れた丸太、村の柵だな。
木の枝のように軽々と持っている。
「おっよし! やっと見えたぜ! ヒュ~」
と汗だくのマルコは言うや否や、戦斧を二首に投擲した。
旋風はやめたのか?
そのまま突っ込んでいかない理由があるのかもしれない。
私も突っ込む。
二首の、横におまけみたいにくっついてる顔の方は、朧げな呆けた顔をしてる。
真ん中の顔は横目で戦斧を丸太で弾いて、こちらをまた見据えた。
私とマルコを同時に吹き飛ばそうと横殴りに大棍棒を振りかぶる。
ドガアアアアンッ!
間合いが広く、傍の家の角が弾け飛んだ。
「うおっ」
飛び避けるマルコ。
私は――目測? 通りに調整して飛び上がり、振りかぶり終えた棍棒の上に上手いこと着地して、そのまま走り寄り剣鉈を主らしき頭部に叩きこんだ。
ズグッ!
マルコ「マジかよ!」
寸前で二首は頭をそらした。
二つの頭の間を丁度剣鉈が振り落ちる。
致命傷ではなかった。
突然の切り込みと斬られた痛みに驚きつつも怒りをあらわにし、二首は叫び、青黒い変質した肩越しに体当たりをしてくる。
手を添えた小剣を盾にし、衝突の瞬間、大棍棒から飛ぶ。
バコォォォン!
パキィイィィン!
「!」
吹き飛ばされた。
剣は折れた。
マルコ「嬢ちゃん!」村人達「落ちるぞおぉ!」
「お、おお、おあああみんな集まれ集まれよいしょおおおっ」
ドッサアアン!
放物線を描いてはるか後方まで吹き飛ぶ彼女を、男たちは塊になって受け止めた。
そして全員倒れた。
「「おおわああっ」」
さすがに痛い。
「~~痛っ、ふう……すまん、助かった」
村人「なんだ、ずいぶん軽いんだな嬢ちゃん」(や、柔らけぇ~)(ええ匂いがしたな……)
マルコが戦斧を拾い上げ戦っている。
みんな応援している。
矢やボルトを撃ちこんでもいるが、まるで効いていない。
「ふむ、いいか?」
男達「「?」」
私は傍の夜警の長から弓を借りて、拾われていたゴブリンの“獣脂の袋”を開けてもらう。ズチャ。
ボオッ、メラメラ……ギリギリ……矢尻を突っ込んで篝火から火を点けて、狙い、撃った。
マルコ「おわっ!? あっ危ねぇな!」
「グオオオオオ!」
見事に二首の主の目玉に直撃した。
まだ生きている。
そこだけ燃えている。
ドオオオン、ズウウン、ダアアアン!
大棍棒と丸太を振り回し暴れるのをかいくぐり、油袋を顔面にぶつけた。
ビチャアッ――ボオオオオオオオオ!
頭がもっと燃え上がる。
「「うわぁ~……」」
マルコ「がぁっはっはっはぁ、ざまぁみろ!」
その時だった。
虚ろだったもう一つの首が突然目をかっと見開き、こちらを怒り睨む。
ボコボコボコッ。
同時に、青黒い体に変化が起きて肥大化? し、角が生え、蠢き始めた。
すぐさまもう一つも狙うも、角が邪魔だ。
変化の影響でせり上がったのか、剣鉈が抜け落ちた。
こちらに突っ込んできそうだな。
行こう。
走る。
「あ、嬢ちゃん」
マルコを走り抜け、私を睨む二首の脇下をかいくぐり抜ける。
そのまま破壊された柵の穴を抜け外に出た。
二首――いや一首はこっちに振り返り突進してきた。
よし、来い!
チャキッ。
「ウウウ、ウウォオオオアアアア!!」
バキガアンッ――ズグウッ!
「あっ」
恐らくこいつが破壊したのであろう、崩壊した柵の隙間を肩から突進するも、角が柵に当たり体制が崩れた拍子に転び、折れた柵の切れ先に首元から落ちて、死んだ。
一首「ゴプブブゥ……」
あっけなく。
ボタボタボタアッ……。
一同「「……」」
「!!」
ボコボコボコッ!
バシュシュシュシュウッ!!
村人「「うわっ!?」」
マルコ「んなろ!」
ギィンッ!
ヒュンッ。
とっさに避けた。
なんと角が突如振動したかと思うと、全てがボルトのように射出されたのだ。
顔面に直撃するのをかろうじて躱し、頬が少し斬れた。
村人達の反対側に出てて良かった。
マルコの方に飛んでった一本は、斧で叩き落としていた。
運よく、あっちは運がなかったが、あのまま来て戦いになってたら、食らってたかもしれない。
……完全に死んだようだ。
一同「「ふぅ~~~」」
村長「ふおおぉ、か、勝ったぞい!」
マルコ「やったなぁおい! ゴブリンなんかに落とされてたまるかってんだ!」
一同「「おおおおお!」」
しかし、丸太か、使えるな。
読んでくださりありがとうございます。




