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竜眼のハーフエルフ  作者: 二砂音
一章 小鬼と辺境の村 覚醒と旅立ち
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10話 ベイリ村

 ガンガンッ。


 夜の街道をしばらくニコと連れ立って歩いていると、木、丸太、を繋げてできた大きな門が現れた。


 彼がしばらく蹴っていた小鬼の頭は、坂になってる脇に転がってって藪中に消えた。


 道はそこをそれて、丸太の柵でできた壁を添うようにして、左に曲がって続いていた。

 どうやら着いたようだ。


 やっと落ち着ける、のだろうか?


 ガンガンと門を叩いている小鬼の群れがいなければ。


「ベビアケロゲッキョ!」

 全部で五匹の小鬼が門の前にたむろしていた。


 内一匹が、わめきながら棍棒で門を叩いている。


「イレンギャグガァ」「ベッキャオトセッギャ」「ゲゲ」

 その手前の三匹は、四角い、サイコロ、だろうか。

 それを転がして遊んでいる。


 残りの一匹は、少し離れ街道脇で寝ていた。

 あそこは影になっていてニコに見えないかもな、と私は思った。


 当然こいつらには気が付いていたので、少し手前の場所でニコには隠れているように言って、私は街道を逸れ森に入り、静かに回り込み、藪に隠れて門を窺っているところだ。

「あたまさがしてていい?」「だめだ、じっとしてろ」



 ベイリ村の人々は撃退しないのだろうか?

 無視してほぼ寝ているのか?


 だが壁の向こうにはかがり火か何か灯を焚いているのか、燃える音や、明かりが壁上に漏れている。

 そもそも、すぐ向こう側で何人か人の気配がする。


 小鬼一匹が手に持つ短剣にわずかについている血、あそこからしている匂いは、奴らの匂いではなかった。


 人族と小鬼達は、どうやら争っているようだ。

 やはり、相容れないのか。

 話も通じないしいきなり襲い掛かって来るしな。



 攻撃することに決めた。

 弩達を両手に構える。

 カチャ……。


 ヒュコンッ。

 門を叩く小鬼の後頭部に突如刺さるボルト、それは貫通し、門に首ごと縫い付けた。

 棍棒で門を叩くタイミングに合わせて放ってみた。


 門で死ぬ小鬼に他がまだ気づかないうちに、更にボルトを放つ。

 遊んでいる奥の一匹の額に。


 カツンと音を立てながらゴロンと倒れる仲間に驚く二匹。

「「ヘギャッ!?」」

 まだ寝ている一匹。


 カシャッ、ギリリ……バヒュンッ――ズドッ。

 すぐさま私は弩二丁を放って弓に切り替え、額に何かを突然生やした仲間に驚いて横を向いている一匹の首を射抜く。


 もう一丁あるが、弓も使ってみたい。

 そしていけた。


 矢が飛んで来た方向を驚き振り向くもう一匹に迫りながら、私は短剣を投げつける。


 ヒュッ――ギインッ!

「ヒッ! ナンダァギャウッ!? ッグゥー……」

 運よく棍棒を振り回したそれに短剣がはじかれるも、肩に担いだ剣鉈で袈裟切りに切り捨てた。


 ドサアッ、ゴロン。


 倒れようとするそいつの手から離れて落ちようとする棍棒を掴む。

「ンバテキギャラ!?」

 さすがに飛び起きた最後の寝てた一匹に、思い切り放り投げた。


 ボグッ!

 見事に棍棒が顔面にぶつけられ悶絶する小鬼に、剣鉈を叩きこんだ。

 ビュオンッ――バキャリ!! 


 脳天をかち割られ、最後の小鬼が息絶えた。

 ガサアッ……。


 なんだか奴らの言うことが少しわかる気がする。


「ふぅ」

 ゴブリンを一掃した。


 これがこの村の日常なのだろうか?

 それとも……。


 ハッ! と気配を感じ振り向くと、ニコが走ってきていた。

「おーい! やったー! やっつけた! いえーーい!!」

 まだ出てきちゃダメなのに。

 しょうがないな。


 武器を回収し、耳を切り、戦利品を回収する。

 

 ニコは門を叩きながら「あけてー! かえってきたよー!!」

 と叫んでいる。


「ニコ? ニコか? なんで……お、おい! ゴブリン共はどうしたんだ!? 今さっき戦ってる音がしてたっけど、ま、まさか、街のもんが来たのけ!?」


「ちがうよ! ねえちゃんだよ! あけてよ!」


「姉ちゃんて誰のこっだ? み、ミリアけ?」

「あたいはここにいるでしょ! 早く開けたげてよグラハムさん!」


「い、いや待てって! まだ見てねえから、魔物が“化かして”っかも知れねんだぞ?」


 なんだか開けてくれなさそうだな。


 ガタ、カタ……。

 すると門の右の、柵の向こう側から梯子のはしっこがのぞいた。


 少し退がると見える。

 小鬼は邪魔だから脇に引きずって集めてある。


 かと思うと昇って来たのか、ヒョコっと若者の顔が頭を出した。


「あ! サムにいちゃん! ただいま! ねえー! はやくあけてよー!」

 サムと呼ばれた村人はニコを見たが無視し、私を見たまま固まって、目と口をあんぐり開けたまま停止した。

「な! ……なななんかすんげぇべっぴんの女がいるぞ!? あ、あとニコもいるぞ! おい!」


「「なにぃ~!?」」

「おお!! 生きてたんかぁ!?」

「お~い誰か、あ、ミハイル! 寝たばっかで悪ぃがよお、マルコのとっつぁん叩き起こして来てけれ! ニコがけえって来たんだとよ!」


 中から何人もの者達の声が聞こえ始めた。


 サム「ちげえよグラハムさん! なんかすげえのがいんだってば!」

「何言ってんだサムおめぇ」

 

「ちがわないよ! はやくあけてよ!」

 ニコはさっきから両手で門を叩き続けていた。


 ギギィーーッ。


「あけてあけてあけてっうおっぷ!」

 と、同時に、意外と勢いよく突如中に向けて門が開かれ、小さな拳を空振りしたニコが倒れる――のをキャッチした。


 外をのぞき込もうと首を出してきた村人達がギョッとして後ずさった。


 丁度その時だった。


「……」

 ――背後から気配がする。


 さっきからかすかに響いていた地面の振動はこれだろうか。


 小鬼の死骸らから落ち流れ集まった血だまりが、暗闇の中で僅かな波紋を作っていた。


 ベイリ村の者「あ、あんた、一体――」

「ちょっと待ってくれ」


 振り向き確認し、すぐ様、担いでいた剣鉈を思い切り振り投げた。


 中型小鬼くらいの大きな狼、のような、猪、の合いの子のような大きな獣がこっちに突進して迫っていた。


「ブモォクイモオオオ!!」


「うわあああ“魔狼”だぁ! 閉めろ閉めろ閉めろ――!?」

 まろう?

 魔物じゃなくてか?


 ガコォゥッ!


 ドオオオンズザアアアアアアーーッ。

 そしてそのまま吹っ飛ぶ剣鉈に頭から突っ込み、息絶えたまま滑り込んでくる。


 驚く村人たち「「うおおおおああ!?」」

 ニコ「うわあ! おおかみ!?」

 驚いて尻もちをついた。


 そっと足を添えるようにして停める。

(この時、彼女は実際は、まだ余力で思いっきり突っ込んで来ているのを蹴り止めている)


 この獣は魔狼と言うのか。

 ゴブリンの臭いもするな。

 仲間か。


「なっ! なんっ! なんだ! おめぇは!? おめぇ“妖かし”かなんかか!?」

「おい、耳ぃ尖ってるぞ! ゴブリンか!?」

「あんな人間そっくりでべっぴんなゴブリンなんぞおるかばかたれ!」


「バカかおめぇありゃあエルフだよ!」

「えるふぅ!?」

「なに言ってだおめぇ? そんなもんいるか!」

「なんだあのおっかねえ“目”ぇ?」


 ? あ、いかん、警戒された。

 武器を構えてる。


「ちょちょちょっとまって、まって! ねえちゃんはみかた! ぼくをたすけてくれたの! ほら! これ!」

 ニコが両手で立ちふさがり、そして小鬼の死骸を指した。


 おっかなびっくりしながら、村人たちが門から外に出てくる。


「どっひゃーなんじゃこりゃあ! 嬢ちゃ、いや、姉さん、おめえが全部やったんか!? えらいこっちゃあ!」


 村人全員というわけではないようだ。


 夜警? か何かか? 数人の男たちと、ミリア姉ちゃんらしき娘が鍋を持ったまま呆けていた。

 

 外に出た男達は、小鬼と魔狼の死骸に驚き大騒ぎになった。

 パッと見た所、彼らの武器は棍棒や木の槍で、男たちは誰もが生傷だらけだ。

 小鬼たちに襲撃されている状況だったのか。


 村人たち「早く門を閉めれ!」

「そだ閉めれ! よくわかんねぇけど入れ入れ!」

「待て! でっかい魔狼が邪魔してる! 中に引き込め! 休んでる奴を叩き起こして来いべさ!」

「あんりゃー外のゴブ共、全滅してるでねえかよお! こりゃあおったまげたわぃ」


 ズグッ。

「なんだか大変そうだな」

 魔狼の顔面を踏み抑えながら剣鉈を引っこ抜く。


「だいこんらんしてるね。はぁ~かえってこれたぁ~、おなかへったー」


 ニコは眠そうに、だが幸せそうに疲れた感じで笑った。

 茫然とする村の一同であった。


 戦利品 棍棒三本、短剣一本、サイコロ、小さい袋に蛇の死骸、蟹三匹、魔狼。


読んでくださりありがとうございます。

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