足癖の問題か?
短編です
彼氏に浮気をされた。5年も付き合ってて、喧嘩だって、そんなにたくさんはしていないはず。そろそろ結婚を申し込まれるかなぁなんて思っていたけど、まさかそんなタイミングで浮気をされるなんて思ってもみなかった。
「・・・」
「ごめん、本当に」
「カズくんはぁ~悪くないのぉ~。あたしがぁ~悪いんですぅ~」
しかもこんな頭の悪そうな女に引っかかったの?私とは似ても似つかないじゃない。
「・・・・大丈夫です、それ、私のじゃないんで」
それだけ言って、珈琲代として五百円を置いて出てきた。三百八十円のコーヒーだけど、もういい。百二十円分のおまけをつけて、お前にくれてやる!
店を出ると、少し清々しい気持ちと、もやもやとした黒い感情が、まだ私の中に同席している。あぁ、この黒い感情、邪魔だなぁ。
心の中で両手でこの黒いもじゃもじゃとした感情をかき混ぜて一塊にした。野球ボールくらいのサイズにはなったかな?それを心の中でおもいっきりぶん投げた。
「ナイスピー」
私の後ろから声がした。短く髪の毛を切りそろえた爽やかイケメンが私にニコニコと微笑んでいた。気が付くと私はピッチャーのような姿勢をとっている。頭の中でやってたことを無意識にやってたみたい。
「おねぇさん野球かソフトやってた?素人っぽくないねぇ」
「あ、いや・・・ははは」
ただの野球好きなだけなんだけど、そんな褒められ方は初めてだ。
「お姉さん今お暇?」
お、これはナンパというやつか?私そう言うの慣れてないんだけど・・・。でも今さっき彼氏捨ててきたところだし、フリーだし、暇ではある。
「・・・・そうね、暇」
「じゃぁ一緒に遊ぼう!」
たまにはこういうノリに付き合うのも悪くないかも。
彼はまず、バッティングセンターに連れて行ってくれた。彼氏に対してさほど不満はないと思っていたけど、バットを振ると、あれやこれやが次々と浮かんでくる。
「くそっ!あのっ、ぼけなすがぁ!」
つい口が悪くなったけど、彼は笑って付き合ってくれた。なかなか良いやつじゃん。
次はおしゃれなカフェ、とはいかず、ファミレスへ。まぁ私、ファミレス好きだからいいんだけど。
「俺ここのナポリタン好きなんだよねぇ」
彼は急に子供の様な顔になって、口の周りをケチャップ色に染めながらナポリタンを頬張った。私はたらこパスタにしたけど、本当は肉が食べたい。齧り付きたい。でもなんだかがっついている様にみられるのは嫌だった。
そのあとはカラオケ。初対面の男女がカラオケって、ちょっと怪しいよね。
とりあえずデンモクに曲を入れる。存外懐メロを知っているようで、私の聞きなじんだ曲をチョイスする彼。こいつ、なかなかやるじゃないの。少し気持ちが傾いてきた気がする。いかんいかん。流されてはダメだ。
ん?なぜ隣に座る。ん?なんだその手は?おいおいちょっと距離近くないか!?
気がついたら私はソファに寝かされていた。
「期待、してたんでしょ?」
にやりと笑ったその顔で、私は耐えられなかった。
私の足癖は、正直悪い。
右足が彼の脚の間にクリティカルヒット!ゲームだったらかなりの高得点もらえそう勢いだったと思う。
「いっ・・・・てぇっ!!!なにすんだよぉ・・・」
「はぁ、面白そうだからついてきたけど、そういうことするつもりは全くないの。ごめんなさいね」
私は千円を置いて、部屋を出た。
受付のお兄さんが、私の顔を見て「あの、お連れ様は?」と聞いてきた。
「あぁ、彼?私のじゃないので」
お会計も彼がします~。と言って、店を出た。心のモヤモヤは全くなくなっていた。
あぁ~、今日はなんて清々しい日なのかしら!
——足癖が悪くてごめんなさいねぇ——
ストライィク!バッターアウトォ!




