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第六話 The Runner

第六話


 ヴィクトリアとアレクは任務出発前に自身の思考を予め部下にインストールした。これで彼らの部下は全員、ヴィクトリア達と同じ考えを持つことになった。

 ヴィクトリアは兵器庫から持てる限りの弾丸を持ち出した。といっても、レールガン用のオリハルコン弾は数が少ない。量産することが難しいからだ。ドラゴリアの使用回数は可能な限り控えようとヴィクトリアは思った。

 さらに念を入れて、ヴィクトリアとアレクの分、オリハルコンコートを持ち出した。各リーダー用に作られたオリハルコン製のコートは、強靭な防御力を発揮する。

 そして彼らは出発する。もちろんのことながら、“マザー”の言いつけなど守るハズもない。可能な限り速く北へと向かう。ただし移動は足のみだ。かなりの時間がかかることが予想された。

 最初の目的は人間の部隊と合流することだった。できることなら、この前戦闘を共にしたサトル達の部隊と出会えればいいと彼女は思っていた。

 彼らの走る速度は時速三十キロほどである。アフリカを縦断するには数日かかる計算だった。

 まともな食糧も持ってきてはいない。とはいっても、水素さえあれば動く体だ。その程度、どうとでもなるだろう。

「姉さま、僕達の作戦、バレてませんよね?」

「わからないわ。私が“お母さま”にBタイプチームを連れていきたいと言ったときにもうバレてるかもしれない。けれど、それでもやるしかないのよ」

 夜まで問題なく部隊は進んでいた。一同は一度休憩を取ってキャンプを開く。

 といっても、火を焚いて地面に座るだけの簡単なものだ。テントもなければ寝袋もない。土の上に寝転んで寝るだけのものである。

 Aタイプ、Bタイプのメンバー半分ずつが起きて番をする。途中で何度か交代を挟み、必ずヴィクトリアかアレクのどちらかが起きているというものだ。

「姉さま、交代の時間です」

「ん、わかった」

 ヴィクトリアはアレクと交代し、辺りの様子を探る。戻ってこないのを不審に思って、今夜辺り偵察部隊が組まれるのは間違いないだろう。だが、今のロベミライアには“目”がいない。偵察が手間取ることは必須だ。

 彼女は自問する。本当にこれで正しかったのだろうか、と。捕まれば確実に現在のプログラムはアンインストールされ、また新しい人格をインストールされ直すだろう。それはすなわち、彼女にとっては死を意味する。

 各隊二十人ずつほどの部下を巻き込んで、独断決行した作戦。捕まれば彼らも同じ処置が施されるに違いない。

 それを考えると、今回の作戦は失敗が許されなかった。

 もうここまで来てしまったら後戻りはできない。

 余計な雑念は追い出そう。

 そう彼女は決めると周囲への気配りへと意識を移していった。



 やがて、東の空を太陽が染める。

 あれから幾度と交代を繰り返して、やがて朝が来た。

 時刻は未だ六時前、だがそれでも彼らは活動の準備を始める。

 そろそろロベミライアの追撃部隊が現れてもおかしくなかった。

 ヴィクトリアの内載レーダーには未だ航空機の類は映っていない。彼女のレーダーは肉眼とは別に数十キロの範囲内を索敵できる。そのレーダーに映っていないということは、まだ出撃していないのだろう。

 このまま出撃される前に人間と合流できればいいのだが。

 そう思いながら、彼女は水の入ったボトルを傾ける。

 胸の中にある核融合水素電池へとエネルギーが供給されいった。これで今日一日は動ける。

「さあ、皆行きましょう」

 キャンプの跡を完全に無くすと、彼らは再び走り始めた。

「そろそろ追撃部隊が来てもおかしくないんだけど……」

 出発してから丸一日が経っている。そろそろ追撃部隊が追ってきてもおかしくはない。

「もしかして、僕達を見逃すつもりなんでしょうか」

「まさか。ロベミライアの主力部隊の半分を持ってかれたのよ? みすみす見逃すわけがないわ」

 だが、彼女のレーダーは相変わらず敵影をキャッチすることができない。明らかに不自然過ぎた。

「ともかく先を急ぎましょう」

 一行は荒野を走り続ける。途中山や谷もあったが、難なく進んでいく。

 そうして何日が過ぎただろうか。彼らはアフリカの最北端まで辿り着いた。

 エジプトからアラビア半島を迂回してヨーロッパに入る予定だった。

 ロベミライアはみすみすアンドロイド兵半分を見逃すつもりなのだろうか。ヴィクトリアには“マザー”の考えていることがわからなかった。

 何も問題なく彼らはエジプトを後にした。ここからはアラビア半島、ロベミライアの外だ。

「おいでなすったわね」

 アラビア半島へと足を踏み入れた途端、周囲の空間が歪む。

 空間が裂け、そこから巨大な機械兵が一体現れた。

「各自戦闘配備! オートマータを殲滅しなさい!」

 オートマータ一機でアンドロイド二十人を相手しようなどと、“マザー”は本当に思っていたのだろうか。たとえXL級を出してきたところで問題にならない。

『まあまあ、少しお話でもして頭を冷やしましょう』

 ヴィクトリアはその声の冷たさに足がすくむのを感じた。

 オートマータがモニターを持っている。そこには柔和な女性の顔があった。

『国外へ出てはいけません、と言いましたよね?』

「“お母さま”のやっていることは間違っています。だから私はそれを正すまでです」

 モニターの女性は微笑んでいたが、その表情を崩さないままに言った。

『……わかりました。あなたがそう思ったのなら仕方のないことなのかもしれません。ですが、私としても人間達に可愛い子供達を預けたりはしません』

 オートマータが赤く発光する。そこでヴィクトリアは気付いた。“マザー”は最初から戦って止める気などないということに。

『さようなら、私の愛しい息子、娘達』

「逃げ……ッ!」

 瞬間、オートマータが大爆発を起こす。こいつはオートマータじゃない。オートマータの形をした爆弾だ。それもこれだけの大きさならば、その火力は半端ないものとなる。

 ヴィクトリアはなんとかアレクの体に覆い被さる。せめて彼だけでも、と思っての行動だった。

 周囲を数千度の炎が包み込む。アンドロイドといえど、これだけの高温には耐えることはできない。オートマータを中心に放射状に熱線と爆炎が広がっていく。

「ヴィクトリア様……」

 そのとき、ヴィクトリアの前に数人のアンドロイドが立ち塞がった。

「あなた達……!」

「せめてヴィクトリア様だけでも生き残ってください」

 炎で身を焦がしながら、彼らは微笑む。

「さようなら、ヴィクトリア様……」

 炎の勢いが弱まったとき、無事だったのはヴィクトリアとアレクの二人だけだった。

 ヴィクトリアとアレクもオリハルコン製のコートを着ていたのと、数人のアンドロイドが盾になってくれたおかげで助かったのである。

 まだ空気に熱が残る中、仲間の残骸を見渡しながらヴィクトリアは立ち上がった。

 そこにはもう、弱気な愚痴を聞いてくれた仲間も、無茶な命令を聞いてくれた仲間も、ヴィクトリアを憧れていた仲間もいなかった。

 ヴィクトリアは強く拳を握りしめ、奥歯が砕けそうなほど強く噛みしめる。

「なんで……私のせいで……」

「姉さま……」

 二人はわずかに焼け残った仲間の残骸を集め、大きな穴を掘り、そこに全て埋葬した。

「もう、戻れはしない。この道を突き進むしか……ないのね」

「僕は……僕は姉さまに付いていきます。」

 熱い風が吹き抜ける中、二人はいつまでもそこに立って、死んでいった仲間達に黙祷を捧げていた。

こ、こんにちは・・・ほーらいです・・・。

なんというか、読者の皆様、本当にすみませんごめんなさいお願いだから石を投げたりウィルス仕込んだメールとか送らないでー!


いやはや、ほとんど二ヶ月ぶりの更新ですね、ハイ。

まあ、その辺りの事情云々は活動報告でするとして・・・。


ここでは内容に関する解説ちっくなものをば。


はい、出ました、部品シリーズ名物オリハルコン。

ヤバイですよー、最強の金属ですよー。

構成物質が何なのかとか、そんな物体がこの世に存在するわけないだろ、だとかの苦情は受け付けないです。

ガンダニウム合金だって存在するんだから、いいじゃない。

なんかよくわからないけどすごい超合金はSFの浪漫ですよね。


さて、それはさておき今回のお話はヴィクトリア&アレク離反のお話です。

なんだかお話の運びが強引な気がするんですが、そこんとこはあまり気にしないでやってください。

っていうか、コレ以外書いた当時は思いつかなかったんです。


さて、いつまで経ってもマザーが追ってこなかったのは、決して文章の量を稼いで一話稼ごうとしたからとかじゃありません。

マザーは完全なコンピュータであり、プログラムであるが故に、言葉を言葉通りにしか受け取ることができません。

すなわち、期限をしっかりと名言しなかった彼女は、ヴィクトリアが外回りから戻ってくるのに何日かかっても不審には思わないのです。

ただし、国外(アフリカ大陸の外)へ出てはいけないとは名言していたため、アラビア半島に入った瞬間に攻撃をしかけてきた、というわけです。

・・・あれ、アラビア半島とアフリカ大陸って繋がってた・・・っけ?


(・・・地図確認中)


よかった、エジプトのトコで繋がってた・・・。

まあ、そんなわけでナパーム弾で粛清されたというわけです。


アンドロイドといえど、身体を構成する物質はタンパク質、熱には弱いんです。

・・・元々は何しても死なないくらい頑丈な設定だったんですが、それだとこの辺の話とかで困るのでやめました。


さて、仲間を喪った彼女らはどうするのか・・・。

次回更新は・・・一応、来週の予定ですが・・・どうなることやら。


さて、次回予告です。


仲間を喪ったことに心を痛めつつも、二人は北上し続けた。

ヨーロッパまで進むと、彼女らは人間の部隊を探し出す。

「私達、オキシデリボ密属部隊の者なの。仲間とはぐれちゃって……。なんとか連絡取れない?」

彼女は口にした。かつて共に戦い、そして別れた人間の部隊の名を……。


次話、第七話 The Thinker

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