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第十七話 The Last Armer

第十七話


「撃て撃て撃て! 弾が切れた者は後方に下がって弾込め! ヤツらに隙を与えるな!」

 サトル達はオートマータとアンドロイドの軍勢と決死の戦闘を繰り広げていた。

 人間の人海戦術に対し、ロベミライア軍は各個撃破を狙う単独戦闘で対抗している。ロベミライア軍のアンドロイドは明らかに人間よりもスペックが高い。そのため、一人のアンドロイドが二人、三人の人間を相手にすることもあった。

 だが、人間軍は無尽蔵にも近い勢いで増えている。徐々にアンドロイドは押されていた。オートマータもほとんど破壊され、残るはアンドロイドのみとなっていた。

「アンドロイド軍は集結っす! お前達は人間に負けるほど弱いんすか!? 本気を出すっす!」

 ボデージュも慌てふためきながら命令を下す。だが、アンドロイドにも限界はある。弾の数にも限りがある。何人かのアンドロイドは既に弾切れを起こし、背負っていたブレードで戦う者もいた。

「甘いな」

 サトルは広い模擬戦闘室を駆け抜けると、一気にボデージュまで近付く。

「ちぃッ! 人間ごときに負けるほど俺は弱くないっす!」

 サトルの放つ弾丸を脅威的速度で回避する。だが、それでもサトルは弾を撃ち続ける。

「お前達は部下を仲間と思っていない。だから、仲間の力を信じていない」

「それがどうしたっすか!」

 サトルはちょいと首を傾げる。その瞬間、彼の頭の真後ろから戦帝が伸びる。

「ッ!?」

 見えない位置からの超高速の攻撃。これにはアンドロイド最高峰の反応速度を持つボデージュも回避することはままならない。なんとか腕を交差させて攻撃をガードする。

「いくら反応よくっても、死角から攻めればいいだけじゃん」

その瞬間、ボデージュの後方からリンの銀狼が迫る。振動するナイフを紙一重でかわす。しかし、微妙にかすって顔の表面から血が噴き出した。

「お前達の攻撃には連携というものが見られんな」

 清羽がボデージュの側頭部を狙う。彼はなんとかコートの裾で防いだ。

 だが、その瞬間大きな隙ができる。再びサトルの後方から伸びる刃がボデージュへと襲いかかった。

「人間が……人間ごときがぁッ!」

 ボデージュはなんとか首を傾けると、戦帝をかわす。攻撃を交わす度にボデージュの生傷は増えていく。

「ああ! もう本気でキレたっす! Cタイプアンドロイド! 脳波強制接続っす!」

「ボデージュ様、本気ですか! 異なるタイプ間の強制接続はプログラムにバグが発生しやすくなりますが……」

「もうそんなこと構っていられないっす! Cタイプアンドロイドは後退! 俺を全力でサポートするっす!」

「了解……しました」

 今まで戦闘を行っていたCタイプアンドロイドが一気に後ろへ下がる。

「何か来るぞ! 気を付けろ!」

『SPsystem set up...system all green.

Super responce mode.Are you ready?

System start.Prepare impct!』

 ボデージュの奥の手、SPシステムが起動する。そして、それと同時に自分の脳を無理やりCタイプアンドロイドと接続する。

「Cタイプアンドロイドは攻撃の予測をテレパスで俺に送るっす。俺一人で全員を相手するっす」

「全員で連携攻撃だ! 相手の予知を超える弾幕量、そして相手の反応をもってしても防げない攻撃を繰り出すぞ!」

「「了解です!」」

 サトルは遠く離れた位置から巨獣と清羽で牽制する。近付かれれば人間に勝ち目はない。オリハルコンに阻まれ、攻撃はほとんど通らないが、ヴィクトリアの話によればSPシステムは莫大なエネルギー消費をもつハズだ。長時間の持久戦に持ち込めば勝機を見出すことも不可能ではない。

「甘いっす」

 一体どこに目がついているのか。ありとあらゆる攻撃を予知し、ボデージュは攻撃を回避する。数十人からの止まることのない攻撃すらも回避し、裾を盾代わりにして無力化する。

 そして、少しずつ接近してくる。

「散開散開! 多方向から同時に攻撃しろ!」

 そうすればオリハルコンの盾もいくらか無力化することができる。裾は二つしかない。三方向から同時に攻撃をすれば避けられるハズがなかった。

「だから甘いって言ってるんすよ」

 だが、ボデージュは人間の散開を許さぬ速度で一気に接近する。そしてサトルのみぞおちに強烈な掌底を叩き込む。

「ぐふっ!」

 そのまま遥か後方へと吹き飛ばされる。

「人間は甘すぎっす。頭さえ潰せばそれで人間には動揺が走り、不安定になる。そんな不様な生物の集まりっす!」

「げほっげほっ……。それは……どうか……な?」

「な……!」

 淀みない陣形。サトルが攻撃されても、彼らはそれに動揺することなく陣形を組み上げた。

「予知が……外れたっすか……?」

「そういうことだ。残念だったな」

 一斉射撃がボデージュを襲う。多方向からの同時攻撃にはさすがのボデージュも対応しきれず、致命傷を負った。

「そ……んな……馬鹿……な……?」

 ボデージュはそのままばたりと倒れる。

「油断するな! まだアンドロイドは残っているぞ! 全員で集結し、相手に攻撃する暇を与えるな!」

「「了解です!」」



 ヴィクトリアは暗室へと足を踏み入れる。真っ暗な部屋に正面の巨大なモニターに明るく女性の顔が浮かび上がっていた。

『おかえりなさい、ヴィクトリア』

「ただいま戻りました、“お母さま”」

 “マザー”の言葉は刺々しいほどに冷たい。機械の合成音声だからそう聞こえるのか、それとも本当に冷たい口調で答えているのか。

「“お母さま”の考えは間違っています。人間は輝く未来の象徴であり、この地球にはびこる害悪ではありません」

 モニターの女性の顔の眉間に深い皺が刻まれる。

『――あなたには失望しました。地球にとってバイ菌と変わらない人間と手を組み、このロベミライアに攻め入るとは……。あなたは地球を汚染してきた人間の歴史を見たことがないのですか?』

「見てきたからこそ言えるんです。人間の歴史は栄光の歴史です。確かに幾度となく道を踏み違えたことはありましたが……けれども、その度に人間は自らの間違いを認め、正しい道に戻ろうとしてきました」

『その結果が地球温暖化、オゾンホール、酸性雨、希少生物種の絶滅……例をあげればキリがありません。人間は幾度となく地球環境を破壊し、生態系を破壊し、今もなお人間は地球を破壊しようとしています。彼らが築いてきた歴史は破壊の歴史です。地球に取り憑いた死神とさえ言えます。あんなにも間違えた行動を幾度となく冒してきた生物は他に存在しません』

「いいえ、“お母さま”。間違えたからこそ今の彼らがあるのです。今では地球環境保全に取り組み、NBC兵器の撤廃、希少生物種の保護、その他数多くの契りを人間の間で結び、守ってきました。それは彼らがこの星を思ってやっていることです」

 “マザー”は深いため息をつく。

『どうやら、あなたを正気に戻すのは不可能なようですね。やはり人間に似せてアンドロイド、なんてものを創った私が愚かでした。それならば、創造主が責任を持って破壊しなければなりません』

 突如、“マザー”の周囲がライトアップされる。

 巨大なスーパーコンピュータ。それが“マザー”の正体だったはずだ。

 だが、“マザー”は人間の組み上げた“箱”から出ることを望んだ。

 だから彼女は作った。自分がコンピュータ、などという小さな箱から飛び出すための装置を。

 轟音を立てて“それ”が動き出す。

 XL級オートマータなどと比べることは間違っている。

 彼女には最高の自立思考AIが搭載されているのだから。

 彼女は――巨大な一機の戦略兵器と姿を変えていた。

『人間を滅ぼす前に、まずあなたを滅ぼしましょう。そして、人間を破壊しつくした後に私自身も眠りましょう。そしてこの地球は小さな生き物達だけが細々と生き残る、宇宙のオアシスと化するのです。そして、人間のような生物が再び生まれたとき、私は彼らを滅ぼすでしょう。永遠にこの輪廻が繰り返されるのです』

 巨大な人型ロボット、それが“マザー”の姿だった。

 ヴィクトリアは素早くレヴァンティンを抜くと、間接部めがけて連射した。

『無駄です』

 オリハルコン装甲の前にはそんな弾など敵ではない。表面を焦がすことすらできず、爆ぜるだけだった。

 ドラゴリアを抜くと、劣化ウラン弾モードに切り替え、引き金を引く。だが、それでもオリハルコンの装甲は貫くことをかなわない。

『あなたの持つ全ての可能性を試しなさい。それでもなお、私にはかないません』

 ドラゴリアのモードをレールガンへと切り替える。

『射撃誘導システム起動』

 彼女の持つ最大の攻撃力を誇るレールガン。

『データ収集……充電開始』

 オリハルコンの耐えられる限界まで電力を供給し、威力を最大限まで引き上げる。

『手ブレ修正、ターゲットの移動先を想定』

 幾度となく人間を殲滅し、そしてオートマータやアンドロイドを殲滅した無敵の槍。

『射撃準備完了、命中率99.8パーセント』

 だから彼女は信じた。

 この一撃でドラゴリアが壊れてもいい。そうとまで彼女は思っていた。

「シュートッ!」

 引き金を絞る。普段の秒速22キロを遥かに上回る速度の弾丸が撃ち放たれる。打ち出された瞬間、オリハルコン製の銃身が爆ぜる。

 だが、槍は放たれた。あとはこの弾が貫けばいいだけだった。

 弾丸がオリハルコン装甲に突き刺さる。それは少しずつ装甲を削りながら内部へと食い込んでいく。

 だが、その勢いが衰えていく。レールガンをもってしてもあの装甲を貫くことはかなわないのか。

『これで終わりですか……?』

 弾丸はオリハルコン装甲の表面に食らいついたまま止まった。

「そんな……!」

『全ての希望は撃ち砕かれました。あなたは絶望に打ちひしがれて、消えていきなさい』

 背中のホルダーが開き、そこから一振りの巨大な大刀が抜き出される。その刃渡りの長さ、およそ15メートルほどだろうか。

 それが高速振動する。ヴィブロブレード、それがあの刀の正体だろう。

 だが、いくらなんでも大きすぎる。

 それが横薙ぎに振るわれる。大振りだが、一撃もらえば一瞬でバラバラにされる。そんな威力を秘めた一撃だった。

 ヴィクトリアは高く飛ぶとその攻撃を回避する。

 次に縦に振り下される。それをローリングで回避すると、ヴィクトリアは走った。

 そう、彼女にはまだ奥の手が残っている。

『SPsystem set up...system all green.

Electron control mode.Are you ready?

System start.Prepare impact!』

 彼女には触れるだけでオリハルコンすらも破壊するその手があった。そう、触れるだけでいい。それだけで全ては決するのだから。

「な……!」

『SPsystem set up...system all green.

Absolute field mode.Are you ready?

System start.Prepare impact!』

 彼女が近付こうとした瞬間、何かに阻まれて足が止まる。

『SPシステムを利用した絶対領域です。あなたが近付くことは許しませんよ?』

 空間隔絶。ここと向こう側はわずかな空間のズレによって近いようで無限にも近い距離で隔てられていた。

 物理的な手段による突破は不可能だ。まさにここにはオリハルコンよりも堅い壁があるの同義とさえ言える。

 それでいて向こうからの攻撃は通ってくる。おそらく、刀の通る道筋だけ空間隔絶を解いて攻撃してきているのだろう。

「どうすれば……ッ!?」

 大刀の速度が一段階上がる。攻撃は相変わらず大振りだったが、回避するのが若干困難になった。

「無敵モードで自在に攻撃ってわけ!? ちょっとあんまりじゃない?」

 空間隔絶の前では電子操作など役には立たない。

「アレクを連れてこればよかったわ……」

 アレクの空間に干渉する能力があれば、この壁をも破ることができるかもしれない。

 だが、今更そんなことを言っても遅い。相手の攻撃はますます速度を上げて回避するのをより難しくしていた。

「なんとかならないの!?」

『姉さま!』

 そのとき、耳にはめてあったイヤホンマイクから声が聞こえてくる。

「アレク!? あなた今どこにいるの!?」

『模擬戦闘室を出たところです! アンドロイド部隊及び、オートマータ部隊の殲滅が完了しました! 今全速力でそちらへ向かっています!』

「可能な限り早く来られない?」

『もうすぐ到着します!』

 それとほぼ同時に扉を吹き飛ばしてアレクが突っ込んできた。狭い通路内をフランシスカにまたがって飛んできたのだろう。ところどころぶつかったのか、顔にはいくつかのあざができていた。

「話は全部イヤホンマイクから聞きました!」

「どうにかできる?」

「やってみないとわかりませんが、絶対にやってみせます!」

 アレクは空間の隔絶に手を当てる。

『SPsystem set up...system all green.

Space perforate mode.Are you ready?

System start.Prepare impact!』

 アレクは額に汗を浮かべて空間を侵食していく。

 だが、そこを狙って大刀が振り下される。

「アレク!」

 ヴィクトリアは自分の身もかえりみずに飛び込んだ。そして左手を高く上に上げる。

 瞬間、重い衝撃が彼女の体を襲った。電子操作により、大刀上半分を吹き飛ばしたが、同時に彼女の左腕も切り落とされる。

「姉さま!?」

「いいからあなたは空間の穴開けをしなさい! 腕なんか一本あれば十分なんだから!」

 そう、“マザー”を破壊するには腕一本あれば十分だ。

 下半分だけになった大刀だったが、ヴィブロ機能は相変わらず作用しているようで、刀を振り上げた。

「できました!」

「サンキュ!」

 ヴィクトリアはわずかに開けられた穴へと飛び込んでいく。

 だが、それと同時に刀も振り下される。

「あうッ!?」

 それはヴィクトリアの下半身を叩き潰した。

「姉さま!」

 あと“マザー”まで数センチの距離だった。だが、手が届かない。

「こんなところで……負けてたまるかぁッ!」

 ヴィクトリアはほふく前進で無理やり前に進む。血がどくどくと下半身から流れ出しているが、水素電池やSPシステムには問題ない。

 そして、ついにヴィクトリアの手が“マザー”へと届く。

「これで……終わりだぁッ」

 ヴィクトリアの手が“マザー”に触れる。

 その瞬間、“マザー”の巨体が塵となって崩れていく。

『馬鹿……な……。こんな……こ……とが……』

 ヴィクトリアはなんと顔を上げて“マザー”のモニターを見上げる。

「やってやったぞ……ついに……これで終わる……」

 ヴィクトリアは体から力が抜けていくのを感じた。下半身が全部吹き飛んだのだ。出血量もおびただしい。

 アレクのヴィクトリアを呼ぶ声がぼんやりと聞こえた。だが、それも徐々に小さくなっていく。

 そして、ヴィクトリアの意識は完全に落ちた。




こんにちは、ほーらいです。

The Last Armerって綴り間違ってるって? いいんです、コレで。

日本語訳すると最終兵器らしいです。僕英語苦手だから今までのタイトル全部適当ですもの。

もう最後だから暴露するけど、友達に見せたらコレおかしくね? って言われてしまったタイトルが存在したり。

英語苦手なのに英語サブタイトルなんかつけるからいけないんだけどね。

今書いてる大賞出品の作品もやたら英語を使ってるなぁ・・・。なんか間違ってないといいけど。


それはさておき、ラストバトルですよ。

ホントの最終決戦です。別にミュウツーとかガノン様とかギガクッパとかは出てきません(

SPシステムは“マザー”様も搭載してたっていうオチ。

結局SPシステムってなんだろ、っていう感じですけど、まあ機械版ESPとでも思ってくだされば大丈夫だと思います。

それにしても、アレク君の能力で空間隔絶解除されるって甘すぎですよね。まあ、どちらも空間操作系の能力ですから。


さて、次回で最終話となります。

例のごとく最終話はこのお話と一緒に連載となりますので、安心して進んでください。

もう部品シリーズとお別れが近いのは寂しいですね。

なかなかに僕のお気に入りの作品ですから・・・。

それでは、最後の次回予告、参りましょうか!


 鳥の歌う声が聞こえる。

  風のざわめく声が聞こえる。

   友の――仲間の呼ぶ声が聞こえる。


次話、最終話 The Peace Maker

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