第十五話 The Battler
第十五話
監視室制圧に向かったヒメは七人の部下とともに通路を移動していた。
「次の通路を右に」
「「了解です!」」
ヒメはパソコンの画面を見ながら、同時に自分の未来を常に予測する。何か危険なことがあっても、この
まま倒れるわけにはいかない。この作戦のファーストステップが監視室の制圧なのだ。
「あ……」
次の通路を曲がろうとしたとき、ヒメが短く声を漏らす。
「どうしました、隊長?」
「あいつが……いる!」
通路を曲がると、そこには今か今かと待ち構えていたボデージュと二人の部下のアンドロイドがいた。
「おんぶしてもらって移動とはまた随分贅沢な隊長さんっすね」
「……こいつ、弱そう」
彼の喋りを聞いて、思わずヒメはヒロキを思い出した。ヒロキがこの場にいれば、酷いと嘆いてたこと間
違いないだろう。
「人を見て第一声が弱そうとは酷いっすね」
「あなた、私の知り合いに口調が似てる」
あえてヒメは友人と言わない。やっぱりこれを聞けばヒロキは文句を言っただろう。
「口調が似てるからって、戦闘能力まで似てるとは限らないっすよ!」
ボデージュは両手にセイラムを装備して長い廊下を駆けていく。その後にアンドロイドの部下が連れ従っ
てついてくる。
「逃げて! サトル達のところへ向かう! ここでは曲がらず、次の通路で左へ!」
「了解です!」
ヒメ達は逃げに転じる。ヴィクトリアから彼女が聞かされたボデージュの能力だと、たとえ部下が二人し
かいなくても、この七人では勝てるはずがなかった。
だが、逃げに回っても逃げ切れるか……。サトル達の位置を示す光点がパソコンの地図上に表示されてい
る。ここから遠い距離ではないが、それまでに確実に追いつかれるだろう。
となれば戦うべきか。いや、それも無駄だろう。
「手榴弾を撒いて少しでも追撃を遅くして!」
「了解です!」
一行はポケットに入れてあった手榴弾のピンを抜いて通路に転がす。
「のわ!?」
後方で爆音と共に悲鳴が上がる。これで少しは距離を取れればいいとヒメは思った。
「人間のくせにやるっすね!」
だが、後方からの声の距離はむしろ近付いているくらいである。
「まさか……オリハルコンコート?」
「正解っすよ!」
七人のすぐ真後ろにボデージュが張り付く。
「まず一人っす!」
ボデージュのセイラムが爆ぜる。轟音と共にルドルフの体が吹き飛んだ。
「ルドルフっ!」
「お先に……失礼します……!」
「振り返らないで走って! なんとしてでもサトルと合流する!」
「はい!」
ボデージュは更にクラウスの足を払って転ばせる。
「ぐあぁっ!」
「クラウス!」
「行ってください! なんとしてでもサトル隊長の元へ……!」
後ろを走っていた二人のアンドロイド兵がクラウスにトドメを刺す。クラウスは声にならない悲鳴を上げ
ながら殉職した。
「次は誰っすかね~」
ボデージュはセイラムでバトラの足を穿った。
「タダでは死んでやるか!」
バトラは転びながらもポケットから手榴弾を抜き出すと、ピンを抜く。
「っ!?」
そして、二人のアンドロイド兵を巻き込んで自爆した。
「バトラ! あの野郎……いいとこ見せやがって!」
ジョージが涙を拭く。ヒメも一人ずつ部下が死んでいく悲しみをこらえながら、残った兵達に命令を下し
ていく。
「走って走って走って! なんとしてでもたどり着くの!」
ヒメは珍しく感情的になりながら叫ぶ。今までの中で最も大きな死への恐怖がヒメを押し潰しそうになっ
ていた。
「ウチの部下を巻き込んでくれた仕返しっす!」
「うわぁッ!」
今度はジョージの頭にセイラムをぶつけられる。頭を砕かれてジョージはごろごろと廊下を転がっていっ
た。
「たまには女の子も殺らないと不公平っすよね~」
ヒメは息を飲む。次の標的は自分だ、と。彼女は迫り来る死への恐怖に心臓を掴まれながら、目を堅く瞑
る。
「隊長! 行ってください!」
次の瞬間、スミスがボデージュに飛びついた。ボデージュとスミスはごろごろと床を転がっていく。
「この! 離れろっす!」
「隊長! 絶対に逃げ切ってください!」
「スミス!」
スミスはボデージュの体を後ろから組み固めると、少しでも時間を稼ごうとする。
「人間いい加減しぶといっす!」
セイラムが打ち出される音がヒメには聞こえた。これでまた一人部下を失ったことになる。
残るはヒメと、ヒメを背負うカノンのみだった。
「さあさあ最後っすよ!」
再びボデージュが追いついてくる。一度距離を取ったハズなのに、なんという足の早さだろうか。
「これでトドメ……がっ!」
次の瞬間、爆音が響いてボデージュの体が吹き飛ぶ。
「え……」
ヒメはパソコンの画面を見た。さっきはいなかった位置にサトルの位置を示す光点があった。
「待たせたな」
通路の向こう側には未だ白煙を上げる巨獣を構えたサトルの姿があった。
「サトルッ!」
ヒメはカノンから降りると、サトルの元へと走った。
「ヒロキは合流してないのか?」
「攻撃に遭って途中で別れた。けれどもボデージュと遭遇して……」
「大体のことはこいつで把握している。だが――」
そう言ってサトルは耳にはめられたイヤホンマイクを指さす。
「ヒロキはどうなったかわかるか?」
「ヴィクトリアの……ヴィクトリアのレールガンでカメラが破壊された」
「ヴィクトリアのレールガン……だと?」
サトルは後ろに控えるヴィクトリアへ振り返る。
「私はずっとサトルさんと一緒に……」
「じゃああいつは……偽物……?」
「あいたたた……。そうっすよ。姐さんのコピーで人間の部隊を攻撃させてもらったっす」
ボデージュは腹を押さえながらフラフラと立ち上がる。
「ボデージュ、私のコピーってどういうこと?」
ヴィクトリアはボデージュに尋ねる。ボデージュは相変わらずヘラヘラとした笑みを浮かべながら――
「言葉の通りの意味っすよ。姐さんのデータを元にもう一体アンドロイドを作ったんすよ。といっても、姐さ
んみたいに離反されたら困るから、感情はデリートしてあるっすけどね。で、今は俺が命令を出してるっす」
「ふーん……なるほど、そういうことね。だから私の部下が私を攻撃してきたのね」
ヴィクトリアはふるふると握りしめた拳を振るわせる。
「許さない……。あの子達を二度も殺すことになったロベミライアを許さない!」
「“ママ”の決定は絶対っすよ」
「うるさい! そんなの関係ない!」
ヴィクトリアは二丁のレヴァンティンを抜いた。
「お前らのせいで私の部下はぁッ!」
レヴァンティンを思い切り叩きつける。それをボデージュはセイラムで受け止めた。
「あの頃のカッコいい姐さんはどこにいってしまったんすか? あの頃は一番に人間が害悪と言って、自ら進
んで人間を殺していたのに……。なのに今は消耗品のアンドロイドを憐れんだり、人間の味方についたり…
…。どこかバグってるんすよ」
「うるさいうるさいうるさい! バグっているのはお前の方だぁッ!」
ヴィクトリアは一度距離を離すと、レヴァンティンをガンモードに切り替え、乱射した。それを恐るべき
勢いでボデージュは回避する。
「なんで……なんで当たらない……!」
「少しは頭を冷やすっすよ」
ぴたり、とヴィクトリアの胸部にセイラムを当てる。ボデージュの動きは明らかに以前よりも向上してい
た。
「ぐはっ!」
セイラムが打ち出され、ヴィクトリアは遠くまで吹き飛ばされる。
「げほっげほっ!」
「ふう……さすがオリハルコンコートっすね。セイラムを受けても無事とは……」
「そこまでだ」
サトルが静かに言った。
サトル達の部隊員の銃の照準が全てボデージュへと合わせられていた。
「これだけの数の銃弾、避けきれるか?」
「これはちいとキツいっすねぇ……」
「撃て!」
一斉に銃が火を吹く。圧倒的な弾幕はボデージュの体を穴だらけにする――ハズだった。
「おっ待たせぇ~」
しかし、まるで全ての弾丸がねじ曲がるかのようにボデージュから逸れていく。
「危機一髪っすよ……」
「ごーめんごめんー。人間殺すのに手間取っちゃってさぁー」
「レンシア! 生きていたの!?」
ヴィクトリアは仕留めたハズの相手が生きていたことに驚く。
「えへへぇー、助かっちゃったぁー」
通路の角から現れたのはレンシアだった。レンシアが手を動かすと、その方向へ弾丸が逸れていく。
「サイコキネシスか……!」
「だ~いせ~いか~い! 当たった景品はぁー……」
レンシアの指先からミッドナイトが飛び出す。
「皆殺しぃ!」
それはヒュンヒュンと風を斬る音を立てて飛んでくる。
「アレク、ユリ、あいつのミッドナイトは生身の人間じゃ耐えられないわ! オリハルコンコートのある私達
で仕留めましょう!」
「わかりました!」
「了解です!」
ユイは糸の射程距離外から戦帝を振る。ミッドナイトよりも素早く通路内を跳ね回り、レンシアへと迫る
。
「アレク、糸を薙ぎ払って! その隙に私は飛び込む!」
「はい!」
アレクはフランシスカで糸を払い、レンシアへの道を作り出す。
「おっと、そうはさせないっすよ!」
「ボデージュ……! 今はあんたの相手をしている場合じゃないのよ!」
銃器がメインの武器である人間兵が戦うためにはサイコキネシス使いのレンシアを潰すのが先決だ。ボデ
ージュは殺したいほど憎かったが、ヴィクトリアはその感情を抑え込んでレンシアへと向かう。
だが、その通路をボデージュが閉ざす。
「だからあんたの相手をしている場合じゃないって言ってるでしょ!」
ヴィクトリアは体の中に電流を流し、身体能力を向上させる。一撃でボデージュを戦闘不能にして、レン
シアへ特攻をかけるつもりだった。
避けられない、と悟った覚悟からヴィクトリアはレヴァンティンを叩き込む。
「いよっと!」
しかし、間一髪のところでセイラムによって阻まれる。
「あなた……以前より機能が上がってる……?」
「俺達もいろいろバージョンアップしたっすよ! それにアレも搭載したっすからね」
「まさか……SPシステム!?」
ヴィクトリアは一旦距離を取る。そしてドラゴリアを構えた。
「アレク、“アレ”をやるわよ!」
「わかりました!」
ヴィクトリアはドラゴリアを構え、深く息を吸う。
その背中にアレクは手を添える。
『SPsystem set up...system all green.
Speed up mode.Are you ready?
System start.Prepare impact!』
瞬間、ヴィクトリアの時間が高速化する。
『射撃誘導システム起動』
『データ収集……充電開始』
『手ブレ修正、ターゲットの移動先を想定』
『射撃準備完了、命中率99.8パーセント』
ヴィクトリアとアレクのコンボプレイ……高速ドラゴリア射撃術。それが二人が考え出した合わせ技だっ
た。
通常の数倍の速度で演算が行われ、充電が進む。わずか一秒にも満たない時間でヴィクトリアの射撃準備
が整った。
これだけ早ければ避けられないハズ。ヴィクトリアはそう思って引き金を――
『SPsystem set up...system all green.
Illusion mode.Are you ready?
System start.Prepare impact!』
その時、レンシアの目が赤く光った。瞬間、ヴィクトリアの視界がぐにゃりと歪む。
『射撃誘導失敗。移動先予測失敗。命中率低下――』
「な!?」
ヴィクトリアは正常に目が働くなるのを感じた。目だけではない。体中から力が抜けていくのを感じた。
「にゃははー。魔眼、とでも言えばいいのかにゃー? あたしのSPシステムは目を合わせた相手を幻惑に落
としこむ能力ぅー! どう、すっごいでしょぉー!」
「チッ!」
ヴィクトリアはそのまま引き金を引く。充電は完了している。当たらずとも、相手をダウンさせるくらい
のことはできるだろう。
とてつもなく重い衝撃にヴィクトリアは吹き飛ばされた。体に力が入っていない状態で撃ったのだから、
反動で吹き飛ばされるのは当然とも言えた。
「きゃあー!」
「おっと!」
レンシアとボデージュの体が弾丸が通り抜けた衝撃で吹き飛ぶ。その瞬間視線がズレたのか、ヴィクトリ
アの体の感覚は元に戻った。
「っ! 当たった!?」
「当たってないよぉー」
壁に強く打ちつけられながらもレンシアは答える。
「姐さん無茶しすぎっす……」
ボデージュも壁に強く叩きつけられていた。だが、意識を失うこともなく、もちろん戦闘不能にすること
なく、ゆっくりと起き上がった。
「外した……ッ!」
「姉さま、もう一回です! 目を瞑ってレーダーを頼りに撃つんです!」
「でも、再射撃には銃身の冷却が必要よ!」
「ならその時間を僕が作ります!」
「一人でリーダー格を二人相手するなんて無理よ!」
「私も援護します!」
アレクはフランシスカを持ち、そしてユリは戦帝で遠距離から同時攻撃を仕掛ける。
「おっと、アレクっちには負けないっすよ?」
ヴィクトリアは舌打ちすると、まだ熱を持っているドラゴリアを背に背負い、レヴァンティンを両手に持
って突撃する。
二対二ならばSPシステムがある分不利だが、三対二かつ二人はSPシステム持ちならば勝機があった。
「さすがに三人同時に相手するのはキツいっす……」
「私にお任せぇー」
ユリの戦帝にミッドナイトが絡み付く。圧倒的な速度で空間的に優位な立場に立っていたはずのユリが押
されつつあった。
ミッドナイトはユリの戦帝の先端に絡まると、これ以上伸びないようにがんじ絡めにする。
「そんな……!」
「これで一人はお片付けぇー。さ、次行くよー!」
ユリはなんとか戦帝を引き戻そうとするが、強固に絡まったオリハルコン糸がそうさせない。ユリの戦帝
は完全に身動きを取れなくなっていた。
だが、それでいてミッドナイトはまだ何本も伸びていく。実質二対二にされたようなものだ。
「アレク、二人でボデージュをやるわよ」
「レンシアさんは……?」
「レンシアへ近付くためにはそれを阻むボデージュを倒さなければ話が進まないわ!」
レンシアの前にはボデージュが立ちはだかっている。彼女に近付くためにはまずボデージュを倒さなけれ
ばいけない。
「レンシアっち、援護頼むっすよ!」
「了解ぃー!」
ミッドナイトがボデージュと二人の間を飛び交う。体は問題ないが、顔を狙われればこちらもひとたまり
ない。
だが、それは相手も同じだ。頭さえ吹き飛ばせばOKだ。
レヴァンティンをガンモードにして連射する。しかし、やはりサイコキネシスによって銃弾が逸れていく
。
ヴィクトリアは舌打ちを打ってレヴァンティンをソードモードに切り替えた。
「アレク、まずはミッドナイトの防御を崩すわよ。やり方は以前と同じでいいわね!」
「はい!」
束になっているミッドナイトの壁を薙ぎ払うようにフランシスカで刈り取る。その隙にボデージュへと一
気に接近し、レヴァンティンを直接叩き込む。
だが、ボデージュもタダでは攻撃を受けてくれない。セイラムでガードし、こちらの攻撃を捌く。
「なら私も……!」
『SPsystem set up...system all green.
Electron control mode.Are you ready?
System start.Prepare impact!』
セイラムに攻撃を防がれるのならば、セイラムを破壊すればいい。左手のセイラムへ手を当てると、セイ
ラムを構成する物質から電子を奪い取る。
「をを!?」
左手に装着されたセイラムが塵へと姿を変える。それに驚き、ボデージュは一度距離を取った。
「電子操作っすか!? “ママ”からもらったデータにあったっす!」
「そうよ。でも、あなたにはそれを防ぐ術がない!」
ボデージュは右手のセイラムに火薬を装填する。右手のセイラムには既にもう弾が残ってないのだろう。
その隙を狙ってヴィクトリアはもう一度間合いに飛び込む。セイラムさえ破壊すればもうレヴァンティン
を防ぐものはない。
「とっ――ッ!?」
『SPsystem set up...system all green.
Super responce mode.Are you ready?
System start.Prepare impact!』
確実に破壊した、そう思った瞬間、ボデージュの体の重心が少しだけズレる。その結果、ヴィクトリアの
手はほんの少しだけ狙いが外れ、セイラムに触れることができなかった。
「な……!?」
「俺のSPシステムは超反応っすよ。もう、姐さんの手は俺には届かないっす」
そう彼は冷酷に言うと、ヴィクトリアの腹部にセイラムを叩き込む。
「がっ!?」
速い。ロベミライアの目と言われたヴィクトリアがその動きを見切れなかったことに驚く。
ヴィクトリアは一気に吹き飛ばされ、遥か後方まで転がっていく。
「ゲホッゲホッ! な、なんで避けれ――」
「姉さま!」
ミッドナイトがすぐ傍まで迫っていた。体も起き上がらせずにレヴァンティンを抜くと、それを交差させ
てミッドナイトをガードする。
「ドラゴリアはどうですか!?」
「そろそろいけるわ!」
アレクは一度後退すると、ヴィクトリアの背中に手を乗せる。
今度は魔眼に惑わされないよう、ヴィクトリアは目を瞑ってレーダー類を起動する。
『射撃誘導システム起動』
『データ収集……充電開始』
『手ブレ修正、ターゲットの移動先を想定』
『射撃準備完了、命中率99.8パーセント』
目に頼らない狙撃は今まで幾度となくこなしてきた。遮蔽物に目標が遮られた場合や、天候が酷いときの
狙撃だ。だが、彼女の銃はあらゆるものを貫通し、そしてレーダーは何一つとして漏らさずに情報をキャッ
チする。
だから、今回も間違いなく成功する。彼女はそう確信して引き金を引く。
手の中に重い衝撃が残った。それと同時に音速を遥かに超える弾丸が飛び出していく。
「ちッ!」
ボデージュは避けた。だが、今回狙ったのはボデージュではない。
あくまでも、今回の狙いはレンシアだ。超反応能力を持つボデージュに彼女の弾は当たりはしないだろう
。
「ッ!?」
当たった。レーダーの反応も彼女の体が吹き飛んでいるのを感じる。
そこでヴィクトリアはようやく目を開く。レンシアは遥か向こうの壁に体を半分埋めて突き刺さっていた
。
「倒した……!」
「今だ! 一斉射撃、撃て!」
サトル達は各々の銃器の引き金を引く。だが、弾丸の軌道がまたしても逸れていく。
「ふ、ひ、ひひ……させないよぉー……」
レンシアが壁の向こうでほくそ笑んでいた。ヴィクトリアは舌打ちを打ってもう一度ドラゴリアを構える
。
「そ、そろそろやばいっすね……レンシアっち、ごめんっす!」
ボデージュは間もなくレンシアがもう間もなく事切れるとわかると、急いで通路の奥に退散する。
「逃がすな! 追え!」
サトル達は瀕死のレンシアには目もくれず、通路を曲がってボデージュを追う。
ヴィクトリアはその後を追わず、壁に突き刺さったままのレンシアの元へと向かった。
「ひひひ……ヴィク姉、後追わないのぉー?」
「ボデージュは彼らがなんとかしてくれるわ。それに後から追いかけて合流するつもり」
レンシアが苦しそうに咳込む。
「ごめんなさい、レンシア。できればあなたを殺したくはないわ」
「ひひ……もうダメだよぉー……水素電池がモロに攻撃食らったもんー。予備電源もイカれたみたいでぇー、
電力供給が不安定だよぉー」
「そう……。もう、これ以上傷付いたあなたを見たくないわ」
「ふひひ、ヴィク姉……そろそろ楽にしてもらえないかなぁー? 胸の辺りが痛くてしょうがないんだよぉー
。もうサイコキネシスで意地悪な真似しないからさぁー?」
ヴィクトリアは黙ってレヴァンティンを抜く。
「そうそう、それでいいんだよぉー。もし、また会えるときがあったら……今度こそずっとあたしの味方でい
てねぇー?」
「わかったわ。私の改革には……あなたが必要だから、きっとまた会えるわよ」
レヴァンティンの銃口をレンシアの頭へと向ける。
「さようなら、レンシア。また会いましょう」
「ふひひひひ、ばいびぃ~」
ヴィクトリアは静かにレヴァンティンの引き金を引いた。
さ、さようなら・・・レンシア・・・。
うわぁあああぁぁぁぁんレンシア死んじゃったよぉおおぉぉぉ!!!!
はい、ごめんなさい、ほーらいです。
今回はさようならレンシアの回です。
SPシステムフル活用しての戦闘、いかがだったでしょうか?
え、地味? 思ったよりも地味?
ってか、衝撃に備えてくださいって警告してるのに大して衝撃ないって?
ごめんなさい、僕なんかあんまり戦闘表現得意じゃないんです・・・。
さて、今回新たに登場したサイコキネシスによる弾丸回避。
レンシアの特殊能力うわああぁぁぁぁぁレンシア死んじゃったよぉぉぉおおおおお!!!!
いい加減しつこいですね、ごめんなさい。
前回の戦闘では使わなかったのには理由があります。
正確には、前回の戦闘では使えなかったんです。
まあ、早い話がUPグレードによって使えるようになったわけです。
今までのサイコキネシスはそこまで精密にどうにかできなかったわけですよ。
まあ、アップグレードした後も予知能力はそこまででないようで、1秒で準備されたレールガンは回避できなかったようです。
まあ、予知専門のヒメでも3秒先しか予知できないわけだし。
マルチスキルなだけでもレンシアさん凄いよレンシアさん死んじゃったあああぁぁぁ(しつこい
次回予告です。
「ついに始まったみたいね」
イヤホンマイクの向こう側でサトルが戦線布告をしているのが聞こえてきた。
そう、これが最終決戦。長かった大戦に終止符を打つための戦い。
すべてが間もなく終わろうとしている。
勝つのは人間か、それとも機械か。
それぞれが靴音を鳴らして戦いへと向かっていく。
そう、間もなく終わるのだ。
次話、第十六話 The Braver