ほんっとわかってない
付き合い始めて少し経った頃のことだった。大学の廊下やカフェで、どうも僕のことが噂になっているらしいというのを耳にした。
「ねえ、なんであの人なの?」
「もっとイケメンとか、かっこいい人いっぱいいるのにさ」、、、らしい。
僕自身も心のどこかでそう思っていたから、噂の言葉はまったく不思議じゃなかった。
むしろ「だよなぁ」と納得してしまうくらい。
でも問題は、当の彼女がその問いにどう答えているかだ。
ある日、僕は彼女にその噂のことを切り出した。
「なあ……最近、友達に聞かれない? なんで俺なの、って」
「聞かれるよ。めっちゃ」
「やっぱり……」
「『もっとイケメンいるのに』とか『スポーツマンとかさ』って言われる」
「……そうだよな。俺だって思うもん」
「ちょっと! なんで自分で自分を下げるの?」
「いや、だって本当だし。俺なんか、彼女ができるなんて今でも信じられないんだよ」
自虐気味に笑った僕を、彼女はじーっと見つめてきた。
「……たかくんはさ、ほんっとわかってない」
「え?」
「わたしがどうしてたかくんを選んだのか、全然気づいてない」
「いや、だって……他にもっと……」
「しつこい!」
彼女は頬をふくらませ、腕を組んでそっぽを向いた。
でもその数秒後、ふっと笑って、柔らかい声で続けた。
「……だって、私はたかくんがいいんだもん」
続きは28日21時です。
よろしくお願い致します。