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第41話 善意の狭間で

その数日後のことでした。




「宅急便でーす」


「はーい」




啓子の声と同時に、ポン子も「キューッ」と小さな声で応えました。荷物を受け取り、リビングへ運んで来ました。表示された中身は「ドッグフード」と書かれていました。差出人は伊方みどりさんという名前でしたが、心当たりはございません。ただ、私共は保護団体ですので、これまでも飼っていた犬や猫が亡くなり、未開封のキャットフードやドッグフードが残っているので送ります、ということはよくございました。通常は事前に、必要かどうかのメールや電話で連絡が来ますが、今回は何もありませんでした。




ドッグフードの寄付と思い、可愛い花柄の包装紙を外して箱を開けてみますと、ひどい悪臭が漂ってきました。明らかに腐っていると思われる、大きな赤黒い肉片が、透明のジップロックの袋に入っておりました。ジッパーが付いているにもかかわらず腐臭がするのは、よほどの状態です。白い便箋のメッセージを読み進めるうちに、おぞましさと恐怖を抱きました。




「狸の肉届けたよ。犬・猫・狸の保護活動という美名の下に農家を苦しめているのはお前達の様なえせ活動家だ! 畑を食い荒らす狸をどうして食べてはいけないのか? お前達はベジタリアンか?」




汚い言葉の羅列に、顔が引きつっておりました。記載されていた電話番号へ掛けてみましたが、「現在使われていない番号です」とのこと。もちろん、住所に書かれていた町も存在せず、まったくの出鱈目でございました。




今後のこともありますので、すぐに東警察署へ届けました。当然のことながら事情を聞かれ、肉の写真や便箋の写真も証拠として撮られました。「今後、さらに同じような脅迫めいた物が送られて来たら、すぐ連絡してください」と言われて終わりでございました。




その後も電話が掛かってくるたびに、啓子は身構えて応対しておりましたので、途中からは極力、私が出るように致しました。二人とも気力が萎え、食欲も落ちて参りました。




「やっぱりポンちゃんは自然に帰すのが一番かもね」


「そうだねぇ。世間はそれを望んでいるのだなぁ」


「今ならまだポンちゃんを自然に帰せるのでは?」




そんな合意が、いつの間にか夫婦間にできあがっておりました。さあ、今後どうなることでございましょうか。暗闇が家の中に勝手に忍び込んでくるような、嫌な気持ちでいっぱいでした。気力が萎えております。この続きは、また明日にでも。おやすみなさい。


-続-

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