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第35話 先人たちの知恵

ワンヘルスの会合が近づくにつれ、動物と人とが仲良く暮らすにはどうしたら良いか、悩むようになりました。県知事や議員の皆様に、どのようなことを話したら良いのか思案に暮れておりました。啓子も同じ気持ちです。




そんな折、ある新聞の記事が目に留まりました。




「歴史遺産 再生へ住民奮闘」


「全長2キロ シカ侵入防いだ志賀島の『鹿垣』」




我が家から車で20分ほど走ると、志賀島に着きます。江戸時代に金印が発見された、大変有名な場所です。現在はシカは一頭もいませんが、江戸時代には繁殖しており、最盛期には周囲12キロの範囲に600頭を超えるシカが生息していたそうです。




半島内にある志賀海神社には、その名残として一万本の鹿の角が奉納されております。当時は農作物の被害に悩まされていたため、防止策として周囲2キロにわたり「鹿垣しかがき」が築かれました。




鹿垣は、高さ2メートルの土手の側面に石を積み上げたものです。時代を経て鹿もいなくなり、石垣は壊れ、現在は風化を防ぐために保存整備が行われています。




『昔の人の知恵と行動力には驚かされるなぁ』




心からそう思いました。人と動物との関わりには、まさに工夫が必要なのです。鹿垣という、先人が残した壮大な歴史の遺産から、私たちは何かを学び取れないものでしょうか。




今は電気も使える時代です。鹿垣でなくとも、鉄条網で柵をつくり、動物が近づいたら警告音を発するなど、何か妙案はないものでしょうか。




啓子と私は、自宅から15分ほどの香椎宮にお参りに行きました。氏神様として、年に一度は必ずお参りいたします。




香椎宮は、紀元3世紀に仲哀天皇がこの地に宮を建てたと案内板に記されています。朱塗りの門をくぐり、拝殿に向かって柏手を打ちました。




「神様、動物と人間が幸せに暮らせます様に、どうかどうかお力をお貸し下さい」




大楠に囲まれた境内は、ピンと張りつめた冷気に包まれておりました。




おみくじを引くと、啓子が大吉、私は吉でした。願い事の欄には、啓子には「人を敬えば早く願いが叶います」、私は「再度行えば願い事が叶います」とありました。




どちらも的を射ていない文章に感じましたが、不思議と神様がきっと力を貸してくださる、そんな気持ちが致しました。


-続-

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