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第34話 ケージの中の小さな声

瓢箪から駒とは、このことを指すのかもしれません。後日、課長が再びやって参りました。




「先日はお忙しいところ、お邪魔させて頂きました。実は、知事と県会議員にポン子ちゃんのビデオを見せましたところ、大層感動されまして、ぜひ次回のワンヘルスの会合に沢井様ご夫妻にご出席いただけないかとのことです」




「ワンヘルス」が謎解きのキーワードのようで、返事に詰まりました。しかし、せっかくの申し入れであり、ポン子のためになることであればと思い直したのです。もともと体育教師として定年まで勤めあげ、生徒たちに教えておりましたので、人前で話すことはまんざらでもありません。




「わかりました。お受けさせていただきます」




「ありがとうございます。しかもその時に、先日の新聞に掲載されていた直方市の農業従事者の方にもお越しいただく予定です」




心の中で「えっ」と思いましたが、時すでに遅し、後の祭りかもしれません。




「そうですか……となると、農家の方からすればタヌキは害獣ですよね」




私も啓子も、おそらく当惑した表情をしていたことでしょう。




「そのような見方もございますが、知事としては両方のご意見を賜りたいとの考えです。定例記者会見でワンヘルスについてお話しても、報道関係者にはなかなか取り上げてもらえません。ましてや、県民の皆様にはまだまだワンヘルスの概念が浸透していないのが現状です。そこで、具体的な映像をお見せしながら、お二方のお話を通じて、ワンヘルスをより身近に感じていただけるのではないかと考えております」




「保護活動を行う私たちと、直方市の農業従事者の方は、立場としては対極にあると思いますが……大丈夫でしょうか?」




「それぞれにお立場があり、それぞれにお伝えになりたいことがおありだと思います。ワンヘルスを推進する知事は、自治体として双方に対して何かできることがないか模索しております。どうかご理解いただけませんか? それと、当日はぜひご夫妻でご出席をお願いいたします」




課長は、私と啓子が承諾するまで、拝み倒すような仕草を見せました。帰られた後、課長が先方にはどのように話を通したのか気になりました。片や動物保護、片や動物駆除――さてさて、どうなりますことやら。引き受けたものの、次第に神経が高ぶってまいりました。疲れを癒すためにも、今日はこの辺にしておきましょう。


-続-

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