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第24話 野に備える

数日後、乾燥コオロギが届きました。薄茶色をした小さな姿がそのまま袋に入っておりました。啓子がカリカリのドッグフードやロースハム・野菜、そして乾燥コオロギを入れてやってみました。




「ポンちゃんしっかり食べなさいよ。自然界には生きた昆虫がいっぱいいるからね。沢山食べて味を覚えてね」




ポン子はさっそく見慣れない乾燥コオロギに興味を示しました。クンクン匂うと器から出して遊び始めました。初めての食べ物は手で器から出して慎重に品定めをしながら食べる習性がございます。そのうちに食べるだろうと思って離れておりました。




しばらく経ってケージを覗きますと、ドッグフードやロースハム、それから野菜はきれいに無くなっておりました。ところが、器のまわりにコオロギの残骸が散らかっておりました。結局一匹も食べなかったのです。




「乾燥コオロギがそのままの姿だったから、ポンちゃんには食べにくかったのかもね」




啓子がフォローしました。私もこのまま味を覚えてくれなければ、自然界では生きていけないと案じたのです。




「そしたら、今度はハンドブレンダーで粉々にして、ドッグフードに混ぜてやったらどうかな」




翌朝、ロースハムと野菜はやらずに、ドッグフードに乾燥コオロギの粉と粉ミルクを混ぜてやってみました。ポン子はしばらく匂いを嗅いでおりましたが、素直に食べ始めました。そして完食いたしました。これで味を覚えてくれると確信致しました。




「良かった。ポンちゃんが味をしめたら、野に放っても生きていけるからね」




それからも、朝晩乾燥コオロギの粉を徐々に荒くして慣らしていきました。半月も経ちますと、もとの姿のままでも食べてくれる様になりました。味の学習効果が実りました。




ポン子の体重も3キロと順調に増えて参りました。毛並みもふさふさになり、タヌキ本来の白、薄茶、濃茶、黒色が鮮やかに混じっております。顔もふっくらと丸くなりました。歯が痒いのか、抱っこするとやたらと服のボタンを噛みだします。「ダメ」と手で払おうとしますと、怒りだします。段々性格も激しくなってまいりました。




さてさて、これからどうなる事やら。先が全く見通せません。とりあえず、今晩はこの辺で終わりといたしましょう。


-続-

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