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第23話 過保護な親子

綿菓子のような入道雲がモクモクと勢いを増し、地面からの熱気を身体に感じる頃となりました。久永さん夫妻は元を、稗原ひえばらの里山に連れていきました。




傍に大田川が流れ、川鵜が一羽、せわしなく餌をついばんでおります。時々、川上から風も吹いて来るそうです。周りは笹竹が群生しており、タヌキのような小動物が入り込んでも、すっぽりと包まれてしまう所です。そこにケージを置いて元を放してやると、スーッと茂みの中へ入って戻って来なかったそうです。元も、自分の未来が分かっていたのだと思います。お二人とも、手元から離れた心寂しさを感じられたようです。




翌日、心配になって久永さん夫妻は里山へ行かれました。するとすぐに、元が近寄って来ました。見てびっくり、元の顔が異様に腫れ上がっていたそうです。すぐに連れ帰って、獣医さんのところで二日間、注射で処置してもらいました。マムシに噛まれたのではと啓子が聞いてみましたが、元の顔に外傷はなく、皮膚にも発疹などは無かったとのことでした。何かアレルギー反応が出る物を、うっかり食べたのではないかとの獣医さんの診立てだそうです。自然界の未知の怖さを感じました。




ところが、それから一週間もしないうちに、再び元を野に返しに行かれました。




余程強い信念を持っておられて、感服致しました。その後、久永さんは毎日、朝晩に食事を持って里山へ行かれました。ウーバーイーツをもじって、「乳母イーツ」なのだそうです。久永さんは、元の居場所に危険があれば、すぐに連れて帰る覚悟はしておられました。もうこのまま二度と姿を現してくれないのかもと、心配もしてありました。さらに、猪や他の動物たちの餌食になるのではと、最悪の事態も頭をよぎったそうです。ただ、「乳母イーツ」の置き餌は、その都度無くなっております。他の動物が食べた可能性もございますが、その点は楽観視しておられました。




そんな折、久永さんから連絡が入りました。


「あのう、元ちゃんに食べさせていた乾燥コオロギが大分残っているけど、お宅に送ってもかまわないですか? 元ちゃんは里山で昆虫を捕食できると思いますから」


「ありがとうございます。まだ食べさせた事が無いので是非お願いします。ポンちゃんもゆくゆくは経験する事になるでしょうから」




私は、ポン子も元ちゃんのように里山に放つ気持ちになっておりました。久永さんご夫妻と元ちゃんの影響が大きかったのです。野山にロースハムやドッグフードはありませんが、昆虫や木の実などは取って食べることができます。前途に少し明かりが射した気が致しました。




今日はこの辺で終わりに致します。


-続-

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