第22話 ボランティアの仮面
「儲かった利益で土地を買い、そこに賃貸マンションを建ててさらに利益を得ております。沢井様ご夫婦が行かれた徳田のお屋敷は、建ったばかりの猫御殿なのです」
「そうだったのですか。驚きました」
「それと、私が許せないと思いましたのは、大手通販会社が犬・猫の福祉を目的に保護団体へ無料でペットフードやペットグッズを送ってくれる制度があります。副社長は申請して送られてきた物を自分のところで使う分は良いのですが、中には販売もしております。先日テレビの取材が来ました時には、これまで救った可哀そうな猫は3,000匹と豪語していました。ありえない数字です」
段々、はらわたが煮えくりかえって参りました。啓子の眉間にも皺が寄っております。
「ただ、中には上手くいかないケースもありました。昨年、猫カフェに80過ぎのおばあさんがよく来られていました。自宅で4匹の猫を飼われていたのですが、しばらくしておばあさんが癌で入院することになりました。身寄りのないおばあさんは、副社長に猫のお世話を懇願されました。副社長の目的は、そのお年寄りの土地と建物でした。何度も病院へ足を運び、その4匹の猫の面倒を見る見返りに、その土地と建物を売ってもらう話を持ち掛けていたのです。
幸い、4匹の里親さんはすぐに見つかり、私も安心しました。ところが、おばあさんは弁護士に依頼して任意後見人を頼まれました。副社長はその土地建物を二束三文で買う手筈をしていたのです。あまりにも頻繁に副社長が訪ねて土地や建物の話をするので、段々と不信に思い始め、病院の方に相談されたのだと思います。
猫ちゃん達は事前に救われ、任意後見人の弁護士さんがおばあさんの将来を考えて、その土地を相場で売ってくださるので良かったと思います」
「本当にあくどい事をしますなぁ」
何とも後味の悪い話ではありますが、最後のお年寄りの話で少し救われた気が致しました。言い終えて、吉田さんはスッキリした顔になられたのです。
そう言えば、思い出したことがございます。徳田さんはご夫婦で動物を可愛がっておられるのですねと私が申し上げた時に、吉田さんの顔は無表情でした。余程耐えられなかったのでしょう。それで、同じ愛護団体である私共に訴えたかったのです。
帰られた後、保護活動とお金について考えさせられました。殆どの保護団体や猫カフェの経営者の方は、利益よりも何よりも猫を救いたいのです。それを、博多区のとある猫カフェでボランティアという名の商売をしているのは許せません。
嫌な話を断ち切るために、今晩はこの辺で終わりに致しましょう。
-続-




