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第十九話 ポン子の旅立ち

今朝も啓子がポン子のごはんを作り、私が「お座り」「お手」「お代わり」「良くできたねぇ。ハイ、それでは肩に乗って、おつむてんてん」と言いますと、ちゃんとやってくれました。

体重も着実に増えて、お腹もタヌキらしくふっくらとしてまいりました。黒い丸鼻の周りの白さと、そのまた周りの黒目を含んだ黒さと、そのまた周りの白と茶色のグラデーションが耳までつながった顔は、まさに愛くるしいのです。


食事の後、いつものブラッシングも終えましたので、ケージからキャリーケースに移しました。ポン子はキョトンとした目をしていましたが、スムーズに中に入ってくれました。

これから徳田氏の元へ向かいます。ポン子を連れて二人で参りますと、前と同じく社長の徳田氏が応対し、すぐに龍之介がいる別棟に通されました。


ところが龍之介は、前回と違ってすぐに鼻をピクピクと動かすと、ケージの中で狂ったように、不自由な足取りで歩き回りはじめました。


「龍之介はかなり興奮しておりますが、すぐに慣れますよ。3年もお嫁さんを探していたので、今回、本当にありがたいお話だと思っております。タヌキの大家族がここで実現すると想像しただけでも、ウキウキワクワクしてきますなぁ。フワッハッハ」


徳田社長の豪快な笑いを聞いているうちに、一抹の不安を覚えました。

自然には帰さず、これから先ずっと龍之介と一緒に住んで大丈夫だろうか。子どもができてもここで住み続けて、果たしてポン子にとって幸せなのだろうかと。


一応、一週間のトライアル期間をお願いして、相性が良ければそのまま龍之介と一緒に過ごすことを確約して、別れました。


家に帰りますと、ついついケージの方に目を向けてしまいます。啓子も同じような気持ちでした。寂しさが募ってまいりました。しかし、これは致し方ないと、諦めるより他ございません。

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