表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/35

第十六話 知恵と牙

そぼ降る雨が、庭のアジサイの花や周りの木々をしっとりと濡らしております。ポン子は日増しに体重が増え、4キロに達しました。知恵もついてきて、玄関のチャイムが「ピンポーン」と鳴ると、甲高い声で「キュー」と発します。ほぼ毎回、こうして反応しております。


さらに、驚くべき進化がありました。元々タヌキはイヌ科と判っておりますので、私は食事をやる前に、しつけを試みておりました。長年教師をしておりますと、つい生徒へ教える気持ちでポン子に接していたことに気づきました。どれだけ人間の言葉に呼応するのか、ポン子の反応や仕草を観察したくなったのです。


例の、典型的な犬の芸でございます。


「ポンちゃん、はいお座り」——できた時には

「おりこうさんやねぇ」


「次に、お手」

何回も何回もポン子の足を私の掌に乗せてやってみせると、しぶしぶではございますが、ちゃんと自分でする様になりました。

「お替り」も一緒です。


さらに、

「ハイ、肩に乗って」と何回も仕向けますと、ちゃんと乗る様になりました。私もついつい調子に乗りすぎたきらいはございます。


さらに肩に乗せた後でそのまま、

「ハイ、おつむ(頭)てんてん」と言いますと、ポン子の手が私の頭にポンと乗るようになりました。ただし、爪は切らせないので、私の頭に手の爪が当たって痛いのです。


知恵がつくのは良いことばかりではありません。この頃から、ポン子はムーや他の猫たちと一緒に仲良く遊ぼうとしなくなりました。


自我の目覚めと申しますか、タヌキ本来の性格が出たのか、はたまた野生への通過点なのか、見当もつきません。ポン子は猫たちに攻撃的になりました。すると、猫たちも黙ってはおりません。得意の猫パンチを食らわし、時間無制限の仁義なき戦いが始まるのです。


段々ひどくなってきましたので、私も啓子も怪我をしないために、一緒にケージから出さないことにいたしました。


啓子と食事をしながらテレビを見ておりますと、岐阜県の飛騨地域で80代の女性がツキノワグマに襲われ、顔などに重傷を負ったというニュースが流れておりました。県内では熊の目撃や被害が相次いでいるとのこと。


木の実の減少は、山を覆ってしまうほどのソーラーパネルの設置などで森が縮小しているせいかもしれません。あるいは、生態系が変わり、猪が増えて山の食べ物を食い荒らして、熊の食べ物が無くなったのが原因かもしれません。それに、山里の過疎化で人の暮らしが変わったのも一因との報でした。


人間と動物との関わり方の難しさを、つくづく感じます。

今夜はこの辺りで終わりと致します。おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ