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第十三話 芯だけ残して
ポン子は風呂が大好きです。バスタブは大きすぎますので、洗面台で洗っております。お湯を溜め、犬用のシャンプーで洗ってやると、じっとしております。剛毛な黒い毛の質も、まごうことなきタヌキなのです。
その日は、バスタオルで包んで乾かした後、啓子がご褒美として生のトウモロコシを用意しておりました。私が専用の器に入れてやると、黄色いコーンの部分だけを食べて、芯だけを残しました。しかし、後になってその芯をおもちゃにして遊んでいたのです。
一方 久永さんが、そろそろ元を野に返す決断をしたと、フェイスブックに投稿しておられました。以前から、一定の期間育てた後、自然に帰す方向へ舵を取っておられましたので、計画通りです。
したがって、ケージで飼うことはされず、洗面所や風呂場、さらには庭の一部が元の住み家になっておりました。久永さんご夫婦の潔い決断に比べますと、私も啓子も、ポン子の未来については先送りばかりしておりました。まだ手のひらに収まるポン子を抱えますと、ほのかなぬくもりを感じます。少しずつ、愛おしさが増してくるのです。悩んでも仕方がございません。




