今度は女騎士の様子がおかしくない?
「シャルさん、あとどれくらい歩けば宿に着くのですか?」
「後1時間もあるけばつきますよ」
シャルさんはこちらに振り向き僕に笑顔で答えてくれる。
ドキッ…少し年上の美人お姉さんが自分に向けて笑顔で答えてくれるなんて今までの人生でなかったから否応にもドキドキしてしまう。
お姉さんの後にモンスター達の死骸が積み重なり、時折断末魔が聞こえてくるのもドキッとするポイントの一つだ。違う意味で
しかし1時間も歩かないといけないのか。かれこれ休憩を挟みつつも3時間くらいは森を彷徨ってる。
僕一人ならモンスターに襲われてとっくの間にお陀仏になっていただろう。というよりモンスターの数多くない?シャルさんがもう何体倒したか数えるのも馬鹿らしい。
普通異世界転生後は弱いモンスターが出てくるところに転生させてレベルを積ませてから魔王討伐をしていくものでは?強そうなモンスターばっかりでてくるのだが?モンスターが弱いのか、シャルさんが強いのか。
この異世界に転生させられたってことは、魔王を討伐するなどの目標などがあるのだろうか?
そもそも魔王なんているのだろうか?
「あの聞きたいことがあるのですが」
「どうしました?」
「僕はその記憶喪失みたいで、この世界のことを覚えてないのですが、この世界には先ほどから出てくるモンスター、いや魔物?達の長、魔王と呼ばれるものはいるんですか?」
「・・・いますよ。魔王を倒せば魔物は生まれなくなり、この世界は平和になると私達は信じていました…そんなことなかったのですが」
シャルさんは魔王の話をした途端今まで笑顔だったのが苦苦しい過去を思い出す様に寂しそうな顔で呟く。
何だろう?すごく違和感がある。あたかも魔王を既に討伐したことがあるような言い回しだ。
「知っていますかケイ?魔王というのは単純なのです。魔物の中で一番に強かったらその個体が魔王になるのです。魔物の中では強さが一番のステータス。強いものが弱いものを従える。強ければなんでも命令できるのです」
「なるほど、しかしそれなら魔物の間で争いが勝手におこるのでは?強いなんて見てわかるものではないから、実際戦ってみないとわからないような…」
魔王という名の甘い蜜 実際僕も魔物側で生まれたら狙ってみたいような気はする。
ただ戦って死にたくはないから、魔物側でも陰キャらしくそもそも戦いに参加しないと思う。
「それがそうではないのです。魔物の目は魔物同士の強さを認識できるみたいなのです。なので明らかな強さの違いがある場合はまず戦いは起きない。
僅差の場合のみ起こることがあるみたいです。それを繰り返していくことで、魔王という個体が生まれます。魔物は強さが高いほど知識も上がります。
なので魔王を主軸とした組織も出来上がり幹部というものもいます。」
「うーん、では魔物は生まれたときの強さで魔王になれるかなどがきまるのですか?」
そんなん運ゲーじゃん。
生まれた時に既に強かったら魔王になれる可能性があるんでしょう?
ちなみに前世では家はあまり裕福ではなかったので
いつも学校に持っていくお弁当はおかずが少なくもやし炒めが多かった。
周りの人は色んな種類のおかずが入ってるのに、どうして自分だけと、やっぱり人生は生まれた所で決まる運ゲーだとおもいながらその日も食べていると
陽キャで金持ちの吉田が
「おや〜、松田くんのお弁当はもやしが多いな〜
僕なんて今日もステーキだよ(笑)どれどれ庶民の食べているものを体験してみたいから僕のと交換してくれたまえ。ふーん。美味しいじゃないか。
こんな美味しいもの作ってくれるお母さんを大事にしなよ」
・・・よしっ…吉田くん!(涙)
そうだ、お母さんは毎朝仕事に行く前にこの弁当を忙しいのに作ってくれているんだ。
生まれた所がなんだってんでぃと考えていると
「それがそれだけではないみたいなのです。
魔王や幹部等上位存在になる要素には2つあるみたいで、1つは先ほど言った生まれ持った強さ。もう1つは魔物を殺す同族殺しです。ただこれは先ほども言った通り強さが僅差でしか起こり得ません。僅差でもあまり起こらないです。どっちが勝ってもおかしくない。魔物も無駄死にはしたくないですからね。魔物は魔物を殺すことにより強さのステータスが上がります。これを繰り返すことで上位存在になるものもいます」
なるほどね。努力次第では最初は弱くても強くなっていくことができるのか。
「魔物は人間や他の動物を食料としてみています。なので人々は魔物を討伐します。
ただ魔物が何処から湧いてきているのかがずっと謎でした。魔王を倒せば魔物は生まれないという昔からの言い伝えがあったので、人々はその言い伝えに縋り魔王討伐を目標としていました。…ただ本当は違いました」
「えっ?」
「…魔物は魔物の卵から生まれる。魔物の卵は1つしかありません。その卵は一人の人間に寄生します。寄生された人間はそのことには気付きません。卵はその人間が死ぬまで寄生します。死んでしまったら違う人間に寄生します。ただ卵といってもその卵から直接魔物が生まれる訳ではありません。その卵がある限り各地で無から突然魔物が現れるのです。
村や町など人々が住む場所は聖職者が魔物が近寄ることすらできない結界を張っているので、魔物も生まれませんが、聖職者になれる人も少ないですし、この広大な世界に結界を全て張ることはできません。結界もずっとはもちませんから年に何回かは張り直さないといけませんし」
「魔物の卵というものがあるのか。じゃあその卵を殺す方法さえあれば平和になるんですね!」
「…卵を殺す方法は1つです。寄生されている人間ごと跡形もなく消滅させることです…。
わたくしはもう大切な人を失いたくありません…
大切な人がいなくなるくらいなら、ずっと魔物を倒し続けます。だからもうどこにもいかないでください…」
そう言うとシャルさんは泣きながら突然抱きついてきた。
こうなった原因はよくわからないけど、とりあえず落ち着くまではおとなしく抱きしめられとこう。
約得約得♪
と思ってると今まで静かに僕達の会話を聞いていたドラコちゃんに手を引っ張られた。
「私も抱きついていい?お兄さん」
「ばっちこーい」
へへへ 、かわいい女の子2人に抱きしめられるなんて最高だぜ!傍から見るとなんと平和な光景だ。・・・・・・近くに魔物の大量の亡骸がなければなぁ!