第20話 彼がここにいる理由
「…でも妹さんのその病気と貴方がここで不老不死の魔石?を作ろうとしていることに何の関係が…?」
「……。」
さっきまで話してくれていたのに心を閉ざしてしまったような気がする。
「…貴方はそれが妹さんのためになると思ってここにいるんですよね?私、知らない事多いし、不老不死の魔石が魔力散逸症にどう関係するのか分かりません。教えてくれませんか?」
「…はぁ。……人間、年老いて死期が近づくと魔力回復量が段々と減っていくが、不老不死の魔石は体内の魔力量を常に溢れさせる。それで、妹の魔力散逸症を治してやれる。」
妹さんの魔力散逸症を治すために不老不死の魔石を作ろうとしている。彼を見た瞬間から神化論を盲信しているような組織にそぐわない人だと感じていたけれど、その理由が妹さんの為だったなんて尚更協力してほしいなんて言いづらくなってしまった。でも、このまま行くとこの人が後戻りできないような気がしてしまった。ただの勘だけれど…
「…それって本当に妹さんのためになるんですかね…。」
「…偽善者はみんなよくそう言うよな。誰かを犠牲にして得た物で妹さんは幸せなんでしょうか?ってか。妹はそんな事を考えてる余裕すらないんだ。そう言う綺麗事を言えるのはお前らが健康で何不自由なく生きてるからだろ。」
「そうじゃないです。」
「何か間違ってるかよ。」
「だから、あのそう言う事じゃなくてその不老不死の魔石って本当に魔力散逸症を治せるんですか?」
「…あ?どう言う意味だ。」
「だって、自分の人生が上手く行かなからって魔石血の人達のせいにして神化論を盲信してるような人間達が作ろうとしている物ですよ?それを妹さんに使ったら逆に苦しめるような事になるかもしれないじゃないですか。魔力量を溢れさせるって安定させるって意味だと思います?私にはメリットよりも遥かに代償の方が大きいような気がしてならないんですよ。」
「…それは…。」
後少しで彼がこちらを見てくれるかもしれないと思った矢先、さっきの男が入ってくる。
「おい。何をやっている。…さっさと仕事をしろ。」
「…はい。」
部屋を出て、元いた牢屋に向かう。
「 ডাঙৰ ভনীয়েক! আপুনি ক'ত আছিল? মই চিন্তিত হৈ পৰিলোঁ। 」
言葉は分からなくてもあたふたした様子を見れば心配してくれていることは分かる。私はスケッチブックを開き絵を描き、他に子供が5人いること、一つの牢屋に集まって脱出の機会を狙うこと。この事をカリオくんの口から教えてあげて欲しいと言うことを伝えた。
「行こう。」
「 হয়! 」
リリスちゃんとカリオくんの手を引いて他の子供達の元へ訪れる。さっきすれ違った3つの牢屋に閉じ込められている子供達とまた顔を合わせる。カリオくんの肩を叩き、スケッチの通りお願いした。
「 সকলোৱে শুনিব বিচাৰো। এই ছোৱালীজনীয়ে আমাক সহায় কৰিবলৈ চেষ্টা কৰিছে। 」
「সহায় ? এই ব্যক্তিজন কোনো সংগঠনৰ নহয় নেকি ? 」
「 তাই মোক খেদি গ’ল আৰু শেষত আমি একেলগে ধৰা পৰিলোঁ। 」
「 অৱশ্যে তাই সেই সংগঠনৰ এজন মানুহৰ লগত আছিল মাত্ৰ এতিয়াই। 」
「 সম্ভৱতঃ আণ্ডাৰকা|ভাৰ অপাৰেচন। 」
「…আমি ইয়াৰ পৰা ওলাই যাব পাৰোনে ? 」
「 মই নিশ্চিত যে তুমি পলাব পাৰিবা। মোৰ এনে লাগে যেন তাই আমাক সহায় কৰিব পাৰে। 」
「 কিন্তু কেনেকৈ পলায়ন...? 」
「どうやって逃げるのかって聞かれてるぞ。」
「!アストリウスさん、どうして…。」
「…お前の考えも一理あると思ってな。こんな犯罪にまで手を染めて骨折り損でしたなんてことになったらたまったもんじゃない。お前に恩を売った方が妹のためになるかと思ってな。」
「え?」
「お前、救世主って奴じゃないか?」
「なんで、それを…。」
「 魔力散逸症を知らなかったしな。それに最近、この国にオリヴェンシア国の救世主が来てるって噂は聞いてた。もしかしたらって思ってたけどやっぱりそうか。救世主なら権力あるだろ。協力する代わりに妹の病気を治せるようにしてもらう。」
「絶対に治せるとは言えませんけど、私に出来ることなら何でもします。救世主の力でも何でも利用してもらって構いません。」
「交渉成立だな。言葉なら俺が通訳してやるよ。で?どうやって逃げるつもりだ。」
私は創造魔法の杖、タブレットを見せる。
「私は’’創造魔法’’が使えるんです。描いたもの具現化できます。多分、無機物だけですけど…」
「はぁ、便利なこった。それで?」
「子供達そっくりの人形を作って寝ているように偽装し時間稼ぎをして逃げられないかと思ってるんですけど…。」
「その時間稼ぎ方法はいいとしてもどうやって外に出るかだな。出入り口の警備は厳重だし、巡回もある。」
「そこまではまだ考えられてなくて…。そこからどうすればいいか…。」
「可能性があるとしたら…物資運搬用の出入り口だな。食材を運ぶための箱の中に隠れて脱出するのがいいかもしれない。」
「でもそこまで行くのも困難なんじゃ…。」
「それに関しては大丈夫だ。俺には耳がある。」
「え、耳?」
「俺の耳は他のやつよりもよく聞こえる。普通は聞こえない遠いところの音でもな。俺の耳があれば巡回の奴らも回避できるだろう。」
「絶対聴力…。凄い!」
「感心してる場合か。巡回まで時間がない。さっさと描け。」
「あ、はい!」
◆◇◆◇
人形を作り牢屋に寝かせた後、アストリウスさんの絶対聴力を頼りに物資運搬用の出入り口に向かう。
「いいか。俺が物資運搬用の出入り口にいる警備のやつに声をかけて気を引いているうちに箱の中に子供達を入れろ。そうしたら俺とお前で箱を外に運ぶぞ。」
「わかりました。」
物資運搬用の出入り口の近くまで辿り着き、アストリウスさんが警備に声をかける。
「お疲れさん、ほれ差し入れだ。」
「…珍しいな。お前が差し入れなんて。俺たちの事、嫌ってたんじゃなかったか?」
「不老不死の魔石開発の進捗状況について聞きたくてな。中々研究チームの奴らに会う機会がなくて、いつできるのか痺れ切らしちまって。お前、確か友人が居るって言ってたよな?」
「心配しなくても順調に進んでいるさ。俺たちが神になる日は近い。」
「だといいんだがな。何も知らされずにただ働かせられるってのは士気が下がるだろ。」
「機密事項だからな。お前もこの組織で出世して神候補に選ばれれば直接聞けるようになる。」
「…そうだな。」
無事に気付かれることなく、子供達を箱に入れることに成功した。私はアストリウスさんに声をかける。
「アストリウスさーん、手伝ってもらえますか?」
「…誰だアイツ、あんな女居たか?」
「知らないのか?今日入った奴だそうだ。」
「…へぇ。」
いくつか台車に箱を乗せて出入り口まで運ぶ。
「…今日は物資調達日じゃないだろ。何をしに行く?報告は何も受けていないが。」
「さっき、私が個人的に許可を取って来ました。子供達が健康体の方がもっと良い魔石が採集出来るんじゃないかと思いまして。」
「……そうか、熱心だな。通っていいぞ。」
「ありがとうございます。」
何とか誤魔化し、男の側を通り過ぎる。無事に脱出することが出来ると思った矢先…
「待て。」
「…!……何ですか?」
「一応、箱の中を見せろ。」
「え、」
「見せられないのか?」
「いえ、どうぞ」
私は子供達の入っていない一番上の箱を開ける。
「何も入ってないでしょ。」
「…全部見せろ。その、下の箱もだ。」
どうしよう。開けられたらバレてしまう。
「開けるぞ。」
「待っ!」
空の箱を退かし、男は箱を開ける。しかしそこには子供達の姿はなかった。
(えっ?何で…。)
「本当に何もないようだな。疑って悪かった。」
「いえ。…。」
「行こう、俺が運ぶよ。」
「…え、あ、ありがとうございます。」
アストリウスさんは台車を押して、足早に出口へ向かう。長い廊下を抜けるとエレベーターのような物があった。乗り込むと土の中を通り抜けていく。あの誘拐犯の魔法のような機能の魔石でも埋め込んであるのだろうか。やっと外に出ると私は息を吐く。
「ふーー!ば、バレなくてよかった!あの、さっきのアストリウスさんですよね?どうやったんですか?」
「説明は後だ。とりあえず先に進むぞ。」
「あ、はい!」
「 অলপ বেছি সময় ধৰি ৰাখিব পাৰিবনে ? 」
「 হয়! ঠিক হৈ যাব! 」
「よし、行くぞ。」
「はい!」
台車を押して私達は森の中を走り抜ける。真っ暗な夜道をこれ以上進むのは危険ということで1時間くらい進んだ所で森の中で朝を待つことにした。
「 あの、森の中で野宿なんて大丈夫なんですか?魔物とか出るんじゃ…。」
「それは大丈夫だ。俺は幻影魔法が使える。有効範囲外から見れば何もないように見える。」
「幻影魔法!てことはさっき箱の中に子供達が見えなかったのも?」
「あぁ。」
「ま、前もって言ってくれればよかったのに!」
「忘れてた。」
彼は鼻で笑いながら薪に火を付ける。
「 উষ্ণ! 」
「 মই মানি লওঁ 」
子供達が楽しそうに手をかざしている。
「みんな無事に連れ出せてよかった…。」
「牢屋に残して来たのが人形だってバレて追いかけてくるかもしれないからな、本当は出来れば早く街に出たいんだが。幻影魔法は動きながらだと使いづらいから泊まるしかねぇんだ。」
「へぇ。」
「俺が見張っててやるから子供達と寝てていいぞ。何かあったら起こすから。」
「…ありがとうございます。」
「持って来ればよかったな。何か敷く物とか。」
「大丈夫です。私にはこれがありますから。」
「そういえばそうだったな。」
私はタブレットを使い、レジャーシートと寝袋を描く。
『『クレアーレ!(創造せよ!)』』
「 আশ্চৰ্যজনক! আশ্চৰ্যজনক ! 」
「 আশ্চৰ্যজনক! আশ্চৰ্যজনক ! 」
「なんて言ってるんですか?」
「カッコいいだとよ。」
「そうですか。嬉しいです…。」
「よかったな。ほれ、さっさと寝ろ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
私は焚き火の音をぼーっと聞きながら目を閉じる。




