第13話 コンフェリス国王宮で一泊
オリヴェンシア国よりも小国と言えど、王宮ともなれば城は圧巻の大きさだった。雰囲気はオリヴェンシア国のものに似ている。城に入る前の門でさえ、豪勢な出立だ。門が開かれると道の横には沢山の花が咲いていて、七色のその景色につい見惚れてしまう。
王宮の入り口まで来たところで馬車を止めて降りる。
「咲夜様、お手を。」
「え、ありがとうございます。」
降りた先には大勢の使用人と先日のパーティーで話したコンフェリス国の救世主である藤宮 綾乃さんが出迎えてくれていた。
「藤宮さん。お久しぶりです。」
「はい!咲夜さん!来ていただけて嬉しいです!」
持ってきた荷物を使用人の方に預かって貰い、私達は国王達の待つ謁見の間へと足早に進む。
ずっしりとした圧迫感のある扉が開かれ、玉座に座る国王と側には第一王子が見える。私達3人が跪いて国王へ挨拶の姿勢を取ると、藤宮さんも遅れて同じ姿勢をとる。緊張しながらも軽く深呼吸をして私は挨拶を始める。
「コンフェリス国王陛下、再び御前に参上できる栄誉、恐悦至極に存じ奉ります。恐れ多くも、陛下の御前にて御挨拶申し上げますこと、この上ない光栄に存じます。」
「あぁ。私もまた君に会えて嬉しいよ。今回はソルヴェイラ国に行くための道中滞在で長くはいないそうだが、少しでも快適に過ごせるように食事は豪勢にさせていただくよ。」
「陛下の寛大なるおもてなしに深く感謝いたします。」
挨拶を終え、謁見の間を後にする。
「藤宮さんそういえば、パーティの時に見かけた第二王子がいらっしゃいませんでしたけど体調でも崩されてるんですか?」
「私もあんまりお会いした事ないんですよー。パーティーでお会いしてからなんか避けられてる気がして」
「人付き合いが苦手な方なんですかね。ヴァルさん何か知ってます?」
「王位継承権を放棄してらっしゃるそうで、第二王子なので国王も放任している様です。社交の場に出ないとあまり情報が集まらないので私もさほど存じ上げてないんですが、どうも女性が苦手らしいです。」
「えぇーだから私避けられてるんですかぁ。じゃあちなみにヴァルさんは、女性苦手ですか?」
「え、いえまぁでも気持ちはわかります…。」
上目遣いでラブラブ光線を飛ばす藤宮さん。ぶりっこはあんまり好きじゃないけれど藤宮さんを見ていると何だか思わずクスッと笑ってしまう。というより藤宮さんに迫られて嫌そうな顔で私に助けを求めているところが申し訳ないけれど面白くて可愛いと思ってしまう。そろそろ限界そうなので助け舟を出しますか。
「はいはい、藤宮さん。ラブコールはその辺にして、良かったらここでの生活について聞かせてくださいよ。」
「あのぉ、会った時から思ってたんですけど私の方が年下ですよ!敬語で話されるとなんか違和感あります…。」
「そうですか?」
「せっかく仲良くなりたいのに壁を感じます…。私のこと嫌いですか…?」
多分ぶりっ子なのに彼女の事を嫌いにならないのは実際、すごく可愛いのと誰にでもこんな感じだからだと思う。男の人の前だけでぶりっ子する人は三流、彼女は一流ってことかな。
「…嫌いじゃないよ。わかった敬語はやめる。」
「あと!藤原さんじゃなくて綾乃ちゃん、て呼んでください!」
「え、あ、あぁうんわかった、綾乃…ちゃん。」
「はーい!」
私とは本当に正反対。多分、自分が可愛いことをわかっていらっしゃるこの子は。でもそれがちっともウザく感じないのは本当に凄い。
「あ、そうだ!よかったら今夜、パジャマパーティーしませんか?」
「それは…同じ部屋で寝るって事?」
「えっ!あ、あの咲夜様!じゃあ私もご一緒していいですか!」
「わ、私は全然良いけど…。」
「えぇ…。まぁ咲夜さんが良いなら私もいいですけどぉ。」
2人が私の腕を掴みながらお互い睨み合っている。
「あ、あのよくわかんないんだけど私を挟んで睨み合わないで…。」
『睨んでないです!』
「あ、そ、そう。」
王宮についた時間がちょうどお昼頃だったので城に着いてすぐ皆で昼食を取ることになった。大きな部屋に大きな机でヴァルさん、オリファスさん、セレナ、綾乃ちゃんと食卓を囲む。ビシソワーズやビーフストロガノフ、いつも食べない料理や雰囲気に少し呑まれてしまいそう。今この空間には私達しかいないから落ち着かせるために話しかける。
「そう言えば、綾乃ちゃんはこのテーブルでいつも1人で食べてるの?ヴァルさんみたいな、救世主の担当?な、何て言えばいいんでしょうヴァルさん。」
「聖務官ですかね。」
「ありがとうございます。それで、綾乃ちゃんの聖務官さんは一緒に食べないの?パーティーの時は紺色の髪した前髪長めの人いたよね。」
「…うーん。なんていうか怖いんですよねー、あの人。魔法の腕前はあるらしいんですけど、あんまり喋らなくて。何考えてるのかわからないんですよ。」
「そうなんだ。…きっと、喋るのが苦手なんだよ。私も人見知りだし、嫌われないようにって考えたら疲れちゃうから。もしかしたらその人はそれが嫌で人と関わらないようにしてるのかも。」
「つか、れてるんですか?咲夜様。私達と話してる時。」
「いや、セレナと話してるからとかそういうことじゃなくてね!誰かと話すこと自体に疲れちゃうってだけだよ。どんな聖人君子だって人と関われば誰かを傷つける。だからせめて、なるべく、傷つかない様に喋る言葉を選んでるとどうしても疲れちゃうんだよね。」
「えーでも、それってみんな同じじゃないですか?私だって気ぃ使ってないわけじゃないですし。」
「うーん、確かにそうだけど、キャパシティって人によって違うじゃない?自分にとってこれはそこまで大変じゃないって事も他の人からしたら物凄く大変って場合もあるわけで。」
「でも、にしたってですよー、人と関わらずに生きるなんて無理じゃないですかぁ。だったらもっとコミュニケーション練習した方がいいと思います。あの人。言いたい事あるのにウジウジして言わないの見てるとイライラしちゃうんですよ私。」
「綾乃ちゃん、きゅるっとした感じかと思ってたけど結構強気だよね。」
「そうですか?私は別にただ思ったこと言ってるだけですけど。」
「ま、でもそう言わずにさ今度会う機会があったら食事誘ってみれば?案外、一緒に食べたいと思ってるかもよ。」
「誘ったことありますよ、一応!でもいっつもウジウジしてるくせにそん時だけはっきり嫌だって言われました。」
「あ、そ、そうなんだ。なんかごめん。」
「いっつもブツブツブツブツなんか言ってるし気持ち悪いんですよほんと。」
「ストップ!そこまでにしようこれ以上行くと悪口になっちゃうからね。」
「…ごめんなさい。なんか思い出したら思わずイラッとしちゃって…。」
「ま、感情って自分じゃ抑え効かないからね。しょうがないよ。分かればよろしい!」
綾乃ちゃんの頭をポンポンする。自分の思った事を正直に言っちゃって、でもそれは悪気があって言ってる訳じゃなくて。彼女はまだ、少し子供っぽい気がした。
ガタンッ
オリファスさんがおもむろに立ち上がり、ドア外をキョロキョロと見渡す。
「オリファスさん?どうしたんですか?」
「いや、誰かが覗いてた気がしたんだが…気のせいか。わり、」
お昼を食べ終わり、みんなでゲストルームへと移動する。
「私の部屋でもよかったのにー。」
「いえ、私共は入るわけにいかないので。」
「えー私別にヴァルさんだったらいいですよ?」
「そういう問題ではないです。」
ヴァルさんの本音がもう滲み出てる。もうこの場にいる全員わかってるけど綾乃ちゃんだけは微塵もわかっていない。
「でも、咲夜さんが明日に発っちゃうなんて嫌ですー。もっと長く泊まって欲しかった…。」
「今回は目的地がソルヴェイラ国だからねー。でも、帰りも一泊しますよね?オリファスさん。」
「あぁ。夜に森を抜けるのはあぶねぇからな。」
「そう言えばあの森ってクマでも出るんですか?」
「…出るのは魔物だよ。あいつらは夜行性だからな。なるべく日が出てるうちにあそこを抜けてぇから泊まるしかないんだよ。」
「オリファスさんの魔法で瞬殺じゃないんですか?」
「出てくる魔物が1体とは限らんからな。俺1人なら問題ないがお前らもいる。もし、群れで襲ってこられたら流石の俺でもお前らを守りながらってのは難しい。」
「私も強かったらよかったんですけど…。」
「お前も強かろうが、魔物に出くわさなくて済むんだったらわざわざ夜に通る必要ないだろ。」
「まぁそうですね。」
しばらく歓談した後、私はお手洗いに向かう。
「私ちょっとお手洗いに行ってくるね。」
「わかりました!場所わかります?」
「さっき確認したから大丈夫。ありがと。」
この世界に来て一番最初に驚いたのは魔法があることでも魔物がいることでもなくトイレがあることだった。世界観が中世ヨーロッパ感があったので魔法があるとはいえ、そこら辺大丈夫だろうかと危惧していたのだが、割とインフラは整っていてさほど不便さは感じず生活できている。
「何なら、魔法があるから前の世界よりも綺麗なんだよなぁ。」
その時、洗面所で手を洗っているとドアの外に気配を感じ、扉を開けてみる




