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第3話「予期せぬ発見」

田中はじめは、3回目のシフトに向かう途中、少しだけ慣れた気分でスーパー「グリーンマーケット」に向かっていた。レジの操作もだいぶスムーズにできるようになり、店内の雰囲気にも少しずつ馴染んできた。しかし、今日はどこかいつもと違う気がした。


昨日、仕事が終わった後に母親から言われた言葉が、はじめの心に残っていた。


「人は、少しずつでも変わっていけるんだよ」


それが意味するところを、はじめは完全には理解していなかった。しかし、今日もまた新しいことがあるかもしれないと思って、少しだけ前向きに考えることができた。


店に到着すると、店長の小林が先に立っている。


「お疲れ様、はじめ君。今日は、ちょっと別のことをやってみようか」と、店長が声をかけてきた。


「別のこと?」と、はじめが少し驚きながら尋ねる。


「そう。今日は、商品の補充をやってもらおうと思う。レジだけじゃなく、少しずついろんな仕事を覚えていこう」と、小林店長は優しく説明してくれる。


補充作業は、棚に空きがある商品を補充していく地味な作業だった。最初は、どこに何があるのか分からず、棚を行ったり来たりするのが大変だったが、店長が一緒に回りながら教えてくれた。


「ここには、お米、そして隣には調味料が並んでいる。こうやって、商品が足りていないところを見つけて、補充していくんだよ」


はじめはその作業を黙々とこなしていった。しかし、途中である商品の補充をしていた時、少し不思議なことに気づいた。


「この商品、なんか…違う?」


はじめが手に取ったのは、普段あまり見かけないブランドのスナック菓子だった。パッケージが少し古びていて、色あせた感じがした。何か引っかかるものがあったが、そのまま棚に戻そうとしたとき、突然背後から声がかかった。


「あ、それ、ちょっと待って。それ、賞味期限切れてるから、今すぐにでも引き下げないと」


振り向くと、そこには別のパートスタッフである中村が立っていた。彼女は素早く商品のパッケージを確認し、驚きの表情を浮かべた。


「これ、あったんだ。おかしいと思った」と、中村はため息をつきながら話す。


「え?賞味期限切れの商品、棚にあったんですか?」はじめは驚いた。


「うん、実はこの商品、長いこと売れ残ってたんだ。倉庫に戻しておこうと思ってたんだけど、いつも忙しくてつい忘れてた」と中村は言い、商品の裏面に貼られた賞味期限シールを見せてくれる。


「うわ、これ、かなり前のだ。すみません、気づかなかったです」と、はじめは少し焦る。


「大丈夫。君はまだ新しいから、これはしょうがない。でも、こういう細かいところに気づけるようになると、仕事がどんどん楽しくなるよ」と、中村は笑顔で言ってくれた。


その後、はじめと中村はその商品を回収し、棚にある他の商品の賞味期限をチェックした。店内を歩いていると、はじめはその日が自分にとって特別な気がした。


「意外と、こういう小さな気づきが大事なんだな」と、はじめは心の中で思った。最初は大きな仕事ができなくても、こういった些細なところに注意を払うことで、自分も成長していけるのだと感じ始めた。


夕方、仕事が終わる頃、店長が声をかけてきた。


「今日はよく頑張ったね。特に賞味期限のチェック、よく気づいたよ」


「ありがとうございます。なんとなく、気になって見たんですけど…」と、はじめは照れくさそうに答える。


「いいんだよ。それが大事。君が気づくことで、少しずつ店が良くなっていくから。君の成長を楽しみにしてるよ」


その言葉を聞いたはじめは、少し誇らしげに胸を張ることができた。まだまだ仕事は始まったばかりだが、自分にもできることがあるんだという自信が湧いてきた。


家に帰ると、母親が「どうだった?」と尋ねてきた。


「うん、今日も何とか。気づいたことがあったんだ。小さなことかもしれないけど、それが大事だって思った」と、はじめは少し誇らしげに答える。


「それはすごいね。少しずつでも、成長してるんだね」と、母親が微笑んだ。


その日、はじめは何か新しい発見をしたような気がした。仕事の中にある小さな気づきが、やがて大きな成長へと繋がっていくのだと感じる。



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これからも、日常の中でどんなことに気づいていけるのか。少しずつ進んでいくその先に、どんな未来が待っているのか。

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