第七話 一回目
とりあえず俺は、学校へ行くこととした。
今は高校2年生だということを忘れかけながらも、学校へ向かっていると
「晃平おっはー!」
と元気な声が聞こえてくる。
卒業の時と雰囲気が微妙に違う。それがちょっとおかしくて、思わず笑ってしまった。
「何笑ってるの、失礼だろーーー」
赤いほっぺたをふくらませてこっちを見てくる。
「わかったわかった、ごめんって」
とりあえずなあなあに謝っておく。
「絶対申し訳ないと思ってないでしょー!」
琴羽はじっと俺の顔を眺めてくる。妙に居心地が悪かった。
「どうしたんだ?」
「んー、なんかさ晃平いつもとなんか様子違くない?」
「そうか?」
「うん。なんか大人っぽくなった気がする。」
さすが長年一緒にいただけある。俺の変化には鋭いようだ。
「なんかあったの?」
「そうだな、色々あったよ。」
「ふーん。」
会話をしているうちに学校へ着く。
ついこの間、涙ながらの別れをした同級生たちと顔を合わせると、なんだかループも悪くないと思えてくる。
しかしそんな事も言ってられない。こんな気持でいられるのも今だけだろう。きっとあと2、3回高校二年からやり直すなんてことをしたら気が狂ってしまう。
チラリと赤井川さんの方を見た。一瞬でそのきれいな瞳に吸い寄せられる。やはり綺麗だ。そして俺はまだ彼女のことが好きなのだ。
「どうしたもんかな……」
俺はため息をこぼし、ひとり呟いた。
そもそもこのときの俺は赤井川さんとそこまで仲良くない。一番最初に告白したときは夏休み明けの席替えでたまたま隣になって、そしてたまたま何度か話す機会があって、少し仲良くなったのだ。
それで勝手に浮かれて告白したわけだが……まあ今はそんな事どうでもいい。今日は夏休み前日、今日仲良くなって夏休み遊びに誘うとかは無理だろう。でも少しは進展させたい。
そう思い勇気を出して赤井川さんに話しかける。
「あ、あの!赤井川さん。」
赤井川さんは少し不審そうな目でこちらを見る。
「えっと、確か三笠くんだったかしら。何か用?」
「え、えっとー」
………しまった。話しかけることに夢中で何を話すか考えていなかった。
「あー、今日はいい天気ですね、、、」
それを聞いた瞬間、周りの時間が一瞬止まったような空気になった。
やってしまったーーーーー!
これは完全に引かれたやつだ。
自分の言動を後悔していると、赤井川さんが口を開いた。
「ふふふ、なにそれ」
その声を皮切りに一斉に周りが笑い出した。思っていたより好評だったみたいだ。
「あははは、、、」
まあ、引かれていないようで良かった。