第六話 結局そういうことでしょ?
翌朝、いつものように目を覚ます。
今日は時間があるので、朝のニュースを見ようとテレビを付ける。
左上の日付を見ると「7月19日」と表示されている。
「嘘、だろ...」
なんでまた戻ってるんだよ…
学校で、授業そっちのけで俺はタイムリープについて考えた。
また時間が戻っている。しかも前回は夏休みの後だったのに今回は夏休み中に発生した。
これってもしかして一生ループから抜け出せないのでは?
急に怖くなってきた。そもそも何がきっかけで起こるんだ?
たしか、前回は赤井川さんに振られて…それで寝て起きたら時間が戻っていた。
そして今回は赤井川さんに告白して…寝て、起きたら……
そういうことか?そういうことなのか?
俺は放課後、赤井川さんを校舎裏に呼び出していた。
「それで、一体何の用?」
「実は俺、赤井川さんのことが好きなんだ。付き合ってくれ。」
「は、はあ!」
赤井川さんは顔を赤くして少し黙った後、はっきりと言った。
「ごめんなさい。あなたとは付き合えません。」
それだけ言い残すと赤井川さんはどこかへ走っていってしまった。辛さはあるが、思惑通りである。
これで今日寝て時間が戻っていたら…確定だ。
――――――――――――
ピピピ、ピピピ、ピピピ
アラームの音で目が覚める。起きてすぐ、俺はスマホで時間を確認した。やはりそこには7月19日と映し出されている。
たしか最初に夏休み前にタイムリープしたときは赤井川さんに告白した日に寝たんだよな...
今回も告白した日に寝たらタイムリープした。ということは...
「赤井川さんに告白したらタイムリープして夏休み前に戻される?!」
そうなると俺は赤井川さんを諦めるしかなくなるということになる。
「俺は赤井川さんを諦めるしかないのか...」
こればかりは赤井川さんよりも自分の人生を優先して考えるしかない。
もう諦めよう。
それから、いろいろなことがあった。
恋愛から離れた学校生活というのも案外いいものだった。そして今日、俺は卒業式を迎えていた。
「色々あったけど、楽しかったな、、」
今日で俺の高校生活は終わる。大学では彼女を作ってみたりしてもいいかもしれない。
期待に胸を膨らませた。それにしても、あのループは何だったのだろうか?
ずっとループの中に囚われていたと思うとゾッとする。ちらっと赤井川さんの方を見た。相変わらず今日もきれいだ。きっとこれからもっときれいになるのだろう。俺は一人ため息をついた。
卒業式も終わり、みんなで集まって遊んだ後、俺は帰路についていた。
琴羽も一緒だ。
「ほんと、いろいろあったよね…」
「ああ、そうだな、、」
「あーあ、これで高校生活も終わりかー」
琴羽はニコッと笑うと言った。
「あ、あと大学でもよろしくね、晃平」
「まさかお前の第一志望が俺と同じで、しかも受かるとはな、、、」
琴羽の学力じゃ考えられないことだった。
「私も、やるときはやるのだよ。」
「そうだな。」
そんな他愛もない話をしているうちに家についた。
琴羽とわかれて家に入る。俺は確かに告白に失敗した。でも、それでも良かったのかもしれない。
これから先の人生、意外と楽しいものになりそうだ。
、、、、、なんてことを思っていたんだ…
ピピピ、ピピピ、ピピピ、
俺は違和感とともに目覚めた。
おかしいな、タイマーの音が前使っていたタイマーの音になってる。
ベッドから降り、リビングへ行くと、母さんが朝食の準備をしていた。
「あら、今日は早いのね。自分で起きるなんていつぶりかしら、」
「はは、今日から休みなのにね…」
母さんはきょとんとした顔をする。
「何いってんの?夏休みは明日からじゃない。寝ぼけてないでさっさと支度してきなさい。」
「え?」
夏、休み?
このとき、俺の中で何かがつながった気がした。いそいでスマホを取り日付を確認する。
「7月、19日…」
どうやら、ループから抜け出せていたなんてものは俺の勘違いだったらしい。
またかよ…
何?これ。どうしたらいいの?え、これ俺抜け出せない感じ?そんなわけなくね?てかそもそもなんでループしてるんだよ。漫画の世界じゃないんだからさ。
でも、こんなよくある話ならさ、結末はきっと一つだけだよな。
「告白成功させればいいんでしょ?」