第四話 ショッピングモールII
トイレの方を見てみると、案の定、琴羽がいかにもチャラそうな男に絡まれていた。
キラキラとしたファッションをしていて。自信に満ち溢れた顔をしている。まあ確かに顔はかっこいいが…
しかし、琴羽も困っているような感じがした。仕方ない、助けに行くか
「あ、ごめんごめん待たせちゃった?」
不安そうな顔をしていた琴羽は俺の顔を見るやいなや安心したように顔をほころばせた。
「え?」
「いやー道に迷っちゃってさ。少し遅れちゃった。」
「え?」
こいつ何言ってんだという顔をする琴羽
いやちょっとは話合わせろよ...
そういえばこいつあんま頭良くなかったんだ。成績はいつも下の方で赤点ギリギリになってたっけ。
流石に不自然な流れになってきたので琴羽を連れってさっさと逃げようとすると
「おいお前、その娘俺と遊ぶんだけどやめてくんね。ていうかお前その娘の何なの?」
くそ!逃げられなかったか。さてと、どう説明すれば良いものか。
「ただの友達」いやいや「幼馴染です!」のほうが良いか。悩みどころだ。
そうこう悩んでいると
「わ、私達付き合ってるんです!!!!」
と琴羽がショッピングモールに響き渡るような大声で言った。
「それじゃ」
そう言い琴羽は晃平の腕を引っ張り歩いていった。
「まじか、」
こいつ、やりやがった。このショッピングモールに凛がいたらどう責任を取ってくれるのだろうか。
「今日は遅くなるって言ってないから外食はできないぞ。」
「りょーかい。じゃあ帰ろうか。」
ショッピングモールの外は自分たちが思っていたより暗くなっていた。遊びすぎたことを実感する。
憂鬱な気持ちになっていると琴羽が話しかけてくる。
「ねえ、明日も遊べる―?」
「えー、無理。」
「え?なんでさ」
琴羽は頬を膨らませている。今まで予定もないのに断るなんてことはなかった。
そのせいで悪いことをしたわけでもないのに妙な後ろめたさがあった。
「どうせ彼女もいないんだし、やることないでしょ?」
琴羽はニヤニヤしながらからかってくる。
それにしても、痛いところをつかれた。先日、といっても未来のことだが、振られたばかりの俺からするとその言葉は刺さるのだ。
「いいだろ、別に。彼女くらいすぐ作ってやるさ。」
「なに?告白でもするわけ?無理無理。あんたにそんな勇気ないでしょ。」
…あったんだなーそれが。
「ああするとも!してやるさ。」
「誰に?」
「赤井川、凛」
その名前を聞いた途端、琴羽は拍子抜けしたような顔をした。
「あ、赤井川凛ー⁉️」
「う、うん。」
いきなり琴羽が笑い出した。
「無謀ってこのことを言うんだね!」
どこまでも失礼なやつだな。
「今に見てろよ?お前に赤井川凛を彼女として紹介してやるからな。」
「はいはい。頑張れ頑張れ。」
そんなことを話しているうちに自分の家に着いた。
「じゃあな」
「うん!また明日!」
「だから明日は無理だって!」
琴羽は「ぶー」と頬を膨らませつつもこちらに手を振った。
晃平が家に帰った後、琴羽は一人小さな声で呟いた。
「…………私にしておきなさいよ…。」