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第56話 商談の行方

「俺の──負けだ」

「楽しかったわ」


 チェス対決は(ルーク)を使った戦法で私の勝利に終わった。決め手を(ルーク)にしたのは、ちょっとした意趣返(いしゅがえ)しのつもりだった。これで少しは私に利用価値があると分かればいい。


 今回チェスで勝てたのも彼の戦法について、()()()()()()()()()()()()()。魔法学院時代、チェス大会に参戦していた彼の戦いを目にしたことがあった。

 実に機械仕掛けのように計算されつくした一手。美しいほど無駄のないチェスだった。処刑台で出会った時は、彼のことをぼんやりとしか思い出せなかったが、時間が巻き戻ってからは少しだけ思い出せた。


(魔法学院ではほとんど接点はなかった。けれど彼は──そう優秀で有名だった)

「アイシャ=キャベンディッシュ」


 そう名を呼ばれた瞬間、ドキリとした。

 処刑台で見つめた双眸(そうぼう)とは異なり、彼の瞳には感情めいた何かが芽生えたような──そんな感じを受けた。


「えっと、はい?」

「商談の詳しい話を詰めたい。特に錬金術に関しては詐欺師(さぎし)まがいの者が多いので──いや、お前の力を疑っている訳ではないのだが」

「錬金術は魔力がない人でも出来る知識の結晶のようなものです。覚えれば人狼の彼らでも作り出せます」

「な」


 その場にいた全員が驚きの声を上げた。まあ、無理もない反応だろう。この時代の誰もが錬金術師に対して偏見を持ってしまっているのが原因ともいえる。


「大人になった亜人族たちの殆どは肉体労働か護衛がほとんどですが、この知識によって錬金術師としての選択肢も得られると思います。私兵に人狼を雇っているルーク殿なら、ツテがあるのではないですか?」

「亜人とのパイプはあるが、それを行うことで人体の影響はあるのか? また魔力持ちでも習得は可能なものなのか?」


 商談の最中だからなのか、ルークは前のめりになって私に詰め寄る。その上、妙に熱の入った視線が痛い。急に積極的というか、乗り気だ。その辺は商人だからだろうか。


「ええっと……。錬金術に必要なのは理解です。知識や教養など今回はなくても問題ありません。まあ、感覚的に料理が上手な方なら上達は早いでしょう。用意してもらう薬草を順番に(せん)じてもらうのですが、これは作り続けることで練度が上がり回復薬(ポーション)の効能をあげます。……と、先ほどの質問の答えですが、魔力を持っていても持っていなくても習得は可能です。が、大量生産するまでは亜人の方々に習得してもらったほうがいいでしょう」


 使い方を誤ればそれは毒にも薬にもなる。また治癒魔法の価値を大きく変えるものになるだろう。教会にとっては痛手になるが、今後の展開を考えると今からでも動くべきだ。


(《世界記録盤(アカシック・レコード)の閲覧権限》で私が異世界の知識で引き出せるようになったのは、今のところ錬金術の一部だけ。まだまだ有益(ゆうえき)な情報があるけれど、使いどころはまだまだ見極めないと……)

「なぜ、そこまで亜人の肩をもつ?」


 そんなつもりはないのだが、彼らと関わりたいと思ったのには理由がある。それを語るかどうか私は少しばかり悩んでいた。数年後には魔物が大量発生する。そのための戦力として亜人族たちを引き入れたいというのが大きい。

 前回では亜人族は即戦力になる前に、土砂崩れと流行り病によって壊滅状態となった。それを防ぐ意味で集落場所の移動、そして亜人族の価値の底上げする必要があるのだ。

 傭兵や労働力以外の価値。


(聖下には相談できるけれど、ルーク様は……どこまで情報を公開すべきか、正直悩むわ。こちらの味方になってくれれば御の字なのだけれど、そんな都合よく私の価値または興味なんて芽生えないでしょうし……)


 彼に一を語ればおそらく十まで理解してしまうだろう。それが吉と出るか凶と出るか判断材料としては少なすぎた。


「私ノ使用人ガ亜人ナーノデス。差別サレルヨクナイー」

「…………」


楽しんでいただけたのなら幸いです。

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