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第46話 逃走経路と打開策

 

「拙者も付き合おう。なに、行き掛けの駄賃(だちん)だ」

「……ナナシ」


 私がジッと(にら)むと「死なない程度ならモンダイないだろう?」とナナシは棒読みで答えた。仇討(あだう)ちをしたい気持ちも分からなくはないが、彼に死なれては困るのだ。


(ここはキチンと、ナナシが居なくなったら困るって気持ちを伝えておかなきゃ!)

「なに、姫さんが心配しなくても拙者は──」

「私の味方なのでしょう」

「もちろん」とナナシは即答する。

「ナナシは、私にとって、大事な味方で……そう! もう家族のような存在なの。……だから、その、間違っても無茶は駄目ですからね!」

「……ッ」

「お嬢様、私は?」

「もちろん、家族のような大事で、大切な存在だと思っているわ」

「伴侶というこ──」

「違います」


 嬉々として喜ぶレオンハルトからは、怒った雰囲気が消えていた。彼の隣に佇んでいたナナシはなぜか滂沱(ぼうだ)の涙を流している。な、なんで?

 家族は言い過ぎただろうか。それとも家族を失ったナナシにとって、その言葉は琴線(きんせん)に触れたのかもしれない。


(血が繋がってない私に言われて泣くぐらい、ナナシにとって「家族」って言葉に弱いのかもしれないわね……)

「いい仲間に出会えたようだね。ここにローワンも加わってくれたら、さらに心強かったんだけれど……」

「あ」

「すまない。まだローワン率いる幻狼騎士団たちが死んだなんて、どうしても実感がわかなくてね」


 苦笑する聖下に私は言葉に詰まった。ローワンたちが生きている事をすっかり伝え忘れていたのだ。気まずいが、伝えなければならない事実に言葉を選んでいると、レオンハルトが先に口を出した。


「お話の途中に失礼します。ローワンを含む騎士団でしたら、中立国リーベにおりますよ」

「それは本当かい!? アイシャ、何か知っているのかい?」


 だん、と聖下はテーブルに両手をついて、前のめりに迫る。私は少し腰を引いてしまったが、首肯(しゅこう)して答えた。それにしても近い!

 レオンハルトもそうだが、聖下もなかなかに人との距離感が可笑しい。対人距離(パーソナルスペース)が近すぎるのだ。こうも距離を詰められると、私の心臓が持ちそうにない。


「は、はい……!」

「お嬢様が私たち魔人族と、騎士団を救ってくださったのです」

「そうか、彼らも生き残れたか……」

「ええっと、あの、そうなのです。それも含めて聖下と今後の話をしたいと思ってここに来ました」


 ようやく本題になった。イレギュラーな事はどうしたって起こるのだから、それは致し方ない。私は気持ちを切り替えて本来すべき話を聖下に話す。

 先ほど伝えた前任者と被る部分もあったが、話を端折らずに淡々(たんたん)と語る。

 ふと私は預言書に書かれた未来と、夢で見た記憶が脳裏に過った。


(夢の時は暗殺、預言書では聖下が毒殺される。……でも聖下が殺されるなんて想像が出来ないわ。毒耐性もかなり高いし、魔法による無効化出来るはずなのに……)


 不安要素がぬぐえないまま、計画を語った。

 三日後の祭りの日に聖下が暗殺されるのを防ぐために、ローワンのいる中立国リーベに亡命する。その逃走経路なども細かに説明した。

 その話を聞いたのち、聖下は「なるほど」と穏やかな笑みを浮かべた。


「実は僕も毒殺される()()()()()()()()。だから打開策として中立国リーベの宰相(さいしょう)に話を通していたんだ。まあ、イグレシアス家とは魔法学院の頃からの旧知でね」

(イグレシアス? その名前……どこかで)


 思考を巡らせるが、頭に(もや)のようなものがかかっているのか、ハッキリと思い出せない。けれど、その名は何故か胸がざわつく。

 血の気が引くような、嫌な予感にアイシャは落ち着こうとカップに手を伸ばす。


「そして、その使者がここに来ることになっている」

「……そうなのですか」

「だから君との提案も含めて、彼らと交渉があるのだが同席してくれないか?」

「はい。それは構いませんが……」

「ありがとう。君ならそう言ってくれると思って、実はさっき紅茶を()れる時に連絡をしておいてよかった」


 完全に事後承諾じゃないか。私は聖下の独断に頬を(ふく)らませた。


楽しんでいただけたのなら幸いです。

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