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第35話 悪役令嬢ルートの封じ手

「あ、でも、ちゃんと住む場所が、決まったら集めたいものがあるのです」

「姫さんが集めたいものとは?」

「ドレスでしょうか?」

「宝石やアクセサリーかもしれませんわ」


 ロロ、レオンハルトは嬉々として話に参加する。こう注目されると告白するのが少し照れ臭い。


「その……可愛いヌイグルミです。中立国リーベで独自展開をしているお店なのですが……肌触りがとても良いのです」

「愛らしい」

「お嬢様、可愛いですわ」

「天使か」


 モフモフのヌイグルミは、中立国リーベ産のものが特にいい。肌ざわりはもちろん、抱き着くフィット感が最高なのだ。大量生産はしておらず、一つ一つ手作りの作品はそれなりに値が張る。今回の騒動が終わったら自分へのご褒美(ほうび)に一つ買いたいと思っていた。

 思わずヌイグルミ趣味があると暴露(ばくろ)してしまったのだが、なぜか三人とも温かい眼差しを向けている。哀れみよりはだいぶマシだが。精神年齢的には二十一歳なので、子どもすぎる気がしなくもないが。


「ええっと……。話を戻すけれど、私個人と特定出来るものなんて、なんとでも言えばできるでしょう。でも、そうさせないように手は打っているわ」

「ああ。それで帝都中に噂を先に()いていたんですね」

「さすがお嬢様ですわ」

(二人とも褒めすぎ……)


 話が逸れてしまったが、リリーたちが私を「悪役令嬢」として名を広めようとするならば、その前に別の噂を流してしまえばいい。そしてそこに嘘を入れない。つまりキャベンディッシュ家が、今まで私にした仕打ちを(つまびら)かにしたのだ。

 実際、聖女の活動が忙しいという理由で、私がお茶会を開くことも、他の公爵家を訪ねることもなかった。けれど聖女をキャベンディッシュ家が(ないがし)ろにしていた噂と、家を出て皇帝陛下の保護を求めた事実は(くつがえ)らない。そして皇帝陛下から直々に帝都に通達が各貴族や帝国兵、教会にまで届けたのだ。これでキャベンディッシュ家の評判はガタ落ち、懇意(こんい)にしていた貴族たちも離れていくだろう。


「あと帝都で怪しい動きをしている建物は三つ。さすがに同じ手は使えないでしょうから──私が望む場所に敵を誘導する。実際に卓の上で計画を立てる方々なら踊ってくれるでしょう」

「この調子なら()()()()()()までには、もろもろと準備がそろいますわね」

「ええ、そうね。出来るだけ可及的速(かきゅうてきすみ)やかに、この件は終わらせるわよ」


 その後に魔物が大量に発生するのだ、国内の問題は早めに解決するに限る。本当は強引に終わらせる方法もあるのだが、そうなると無関係の人たちが巻き込まれてしまう。甘いかもしれないが、出来るなら被害は最小限にとどめたい。


「それにしても姫さんが、あの計画を考えたんだよな」

「ン? なにか問題点でもあったかしら?」


 神妙(しんみょう)な顔をしているナナシに私は小首を傾げた。


「いや、どこぞの天才軍師並みの奇策(きさく)正攻法(せいこうほう)を入り交えた戦略だと感心しただけだ」

「ふふっ。これでもチェスと将棋なら腕に自信があるのよ」


 ナナシの称賛(しょうさん)に私は照れくさくて、視線を逸らした。なぜだか彼に褒められると何ともこそばゆい。

 私は改めて部屋を見回した。

 このホテルは貴族、皇族専用でありサービスはもちろん、情報機密なども統制されている。皇帝陛下の提案により、資金面に関しては今のところ問題ない。むろん国庫ではなく陛下個人から支払われる。


「ところでお嬢様。本当に奥様の遺品(いひん)を諦めてよかったのですか?」

「いいの。商人に売られてもう数年経っているもの。陛下も探してくれるとは言ってくれたけれど、期待していないわ」


 母の遺品は大事だが、そのために私自身の未来が消えてしまうのであれば、本末転倒だろう。実際、前回はそれで失敗したようなものだ。何かを選択するときに、切り捨てなければならないのなら──私は天秤にかけて悩んで、悔いのない方に賭ける。


「それより今は、聖下を救出するための計画を立てましょう」


楽しんでいただけたのなら幸いです。

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