困惑と拍動に混ざった序章
その時、試験監督は訝しむ。
あれは…ツノ?ん?あれは…シッポ?
中央高校筆記試験当日。一科目目の試験監督”森下”は国語のテスト用紙を持って教室に入り、教卓に立ち部屋全体を見渡した。
「あと五分で試験開始です。鉛筆、消しゴムだけを机に置きリュックは廊下に出してください」
森下は決め台詞の後に気付いた。
ヤギより巻いた角、逞しい尻尾、総括して悪魔のような見た目、なのにブレザー着て古語用語の確認している。
「それでは受験票を机の右上に置いて下さい」
そうして受験票を廊下側の列から見ていき最後、受験番号670084、ワナシュ・ナナミ・ローリーウォーリー。
彼女は受験票を森下に見えやすいように斜めに傾けた。証明写真にも巻かれた厚い角が頭から生えているのが写っていた。森下が少しあっけらかんとしていた所を
他の試験監督から時計を見るようハンドサイン。小走りで教卓に戻り7秒後、受験開始の予鈴が鳴る。
「それでは試験を始めてください」
その日は何事も無く試験が終わった。大したハプニン
グなども無く無事に。
後日職員室にて、森下は面接を担当した教員との雑談で彼女の話題が出た。
「あぁ角の子ね、言ってることは特に他の受験生とは変わんなかったかなぁ。良く準備してるなって印象だね」
「そうだったんですね、僕、彼女の角とかビックリしちゃって…ちゃんと試験始められたからよかったですけど」
「森下クン教頭先生から聞いてない?彼女のこと」
「え?…聞いてないですけど」
「教頭先生言わなかったのかな」
「彼女の親御さん」
「魔王なんだよ」
森下はよくわからなかった。