5年前の自分
5年前の夜。私は言いようのない不安感に苛まれていた。世界は私を拒み、すべての事象が私を壊そうと必死になっているように感じた。空虚、孤独、絶えない疑問。かつて当たり前に感じていた希望や多幸感が霧散に消え去り、ただそこにあるのは胸の中心に残る不安をかたどったような空虚のみだった。
苦しい。現状を他人に吐露してもなにかが変わるわけでもない。ただ、泥のように浮かんでいれば時間は終わる。植物のように動かなければきっとこの苦しみが癒える日が来る。そう信じて止まず、私は思考を停止して総てから逃げ去った。
月日が経った。いまだ空虚は消えず、しかし、少しばかり変わっていた自分がいた。孤独に苛まれ、吐き気を噛み殺す私はまた5年後に思いを馳せた。月日は私を治療することができるのか、見えるはずのない未来を希望のフィルターをかけてただ望むことしかできなかった。
今の現状から逃げ出したいと私は願っているはずである。鉛のように重い体が羽毛のように動くのなら、なにか素晴らしいとかつての自分が願っていた存在になれるのであろうか。人を信じず、他人に信じられない私がまた塵芥のような人生を塗り替えることが、今の私の望みなのだろうか。
きっと、私はまた思考を捨て何もしないを選択する。その時、この書き捨てたような文章を思い出せば自分を少しばかり変えることができるのだろうか。