第212話「【番外編】天芳と冬里と、封印された危険な奥義」
今週は本編をお休みして、番外編をお届けします。
ちょっとした息抜きになるようなお話を書いてみました。
秋先生の家を訪ねた天芳は、冬里からとある提案をされます。
それは封印された奥義に関わるものだったのですが……。
気軽に楽しんでいただけたら、うれしいです。
「芳さま芳さま」
「どうしたの、冬里」
「点穴の技の実験にお付き合いいただきたいのです」
ある日の朝、秋先生のところを訪ねた俺に、冬里がそんなことを言い出した。
ちなみに、秋先生は不在だった。
燎原君のところに行っているらしい。
「実は……点穴の技には隠された奥義があるのです。ご興味はありませんか?」
「あるよ。すごく興味がある」
俺はうなずいた。
いいよね。隠された奥義って。
響きがかっこいいし、なにより強そうだ。
そんな技があるなら知っておきたいんだけど……。
「それって、秋先生の点穴の技『操律指』のひとつなの?」
「いいえ。これは、仰雲さまが編み出したものだそうです」
「仰雲師匠が?」
「そうです。身体のツボに『天元の気』を打ち込むことで、『気』と運動能力を高めるものだと聞いています。その名を『天衣相生』といいます」
『天衣相生』は、ふたり一組で行われる。
ひとりは技を受ける側だ。
その者は『気』の運用を行う。
もうひとりは、相手の身体のツボに『天元の気』を打ち込む。
そうすることで、ひとり目の身体能力が強化されるらしい。
「これはもともと、治療のために作られた技なのです」
冬里は説明を続ける。
「ですが、仰雲さまが研究したところ、武術に向いたものだということがわかったのです。それに気づいた仰雲さまは『天衣相生』を『使えない技』だと判断されました」
「仰雲師匠は武術を嫌ってたからだね」
「冬里も、そう思います」
「それに『天元の気』の持ち主が必要なら、なおさら使いにくいよね。『天元の気』の持ち主がいなければ、実験もできないわけだから」
「はい。ですから仰雲さまもお母さまも、これまで『天衣相生』を使うことがなかったのでしょう」
納得だった。
つまり『天衣相生』は武術を嫌う仰雲師匠が、『使えない』と判断した技。
秋先生にとっては『天元の気』の持ち主がいないせいで、使えなかった技ってことか。
「ですが、今は『天元の気』をお持ちの芳さまがいらっしゃいます」
冬里は俺を見つめながら、真面目な表情で、
「だから冬里は、『天衣相生』の実験をしてみたいのです」
「ぼくもやってみたいと思う。でも、いいのかな?」
「なにがでしょうか?」
「実験をするなら、秋先生が戻ってきてからの方が」
「実は……お母さまも『天衣相生』を『使えない技』と判断しているようなのです」
そう言って冬里は目を伏せた。
「はい。昨日、実験をしたいと申し出たのですが……止められました」
「秋先生も仰雲師匠と同じように、『天衣相生』には価値がないと思ってるのか……」
「お母さまは仰雲師匠の弟子ですから、同じようにお考えなのでしょう。でも、冬里は『天衣相生』は使える技だと思っています。これを使いこなせるようになれば、冬里も……戦えるようになるかもしれません」
「……冬里」
「冬里は強くなりたいのです。強くなって、芳さまのお役に立ちたいのです!」
「うん……わかった」
冬里が力を求める気持ちはわかる。
彼女は『裏五神』との戦いでも手伝ってくれた。
冬里が呂兄弟の技を受け流してくれたから、俺はあいつらに勝てたんだ。
ただ、冬里には実戦経験が足りない。
だから彼女は、強くなるための技を求めている。
そのために身体を強化することができる『天衣相生』を修得したいんだろうな。
「いいよ。ぼくでよければ手伝うよ」
「ありがとうございます。それでは、準備をいたしましょう」
「準備?」
「これから芳さまには、冬里の身体のツボに点穴をしていただくことになります」
「うん。そうだね」
「『天衣相生』は繊細な技です。指定の場所に、正確に『気』を打ち込んでいただかなければなりません。ですから、冬里の身体の状態がわかりやすい服に着替えることにします。少々お待ちください」
そう言って、冬里は奥へと駆けていった。
数分後、戻ってきた冬里が身につけていたのは、薄衣だった。
向こうが透けて見えそうなほど薄いものだ。
だから、彼女が身につけている衣服がそれだけだと、はっきりとわかった。
「冬里は立った状態で『気』の運用を行います」
薄衣をまとって立つ冬里は、真剣そのものだった。
これから奥義の実験を行うのだという覚悟に満ちている。
うん。俺も真剣にやろう。
今は、冬里の格好を気にしない。
窓から差し込む朝の光で薄衣が透けてるけど、それは見ない。
やわらかい衣は冬里の身体のかたちをはっきりと浮かび上がらせているけれど、今はどうでもいい。
とにかく、奥義に集中しよう。
「冬里はこれから身体に『気』を循環させます。芳さまは冬里が合図したら、指定の場所に『天元の気』を打ち込んでください」
「うん。どこに『気』を打ち込めばいいの?」
「胸の中央と、その背中側。あとはおへその下です」
「わかった。それじゃ、やってみよう」
「では、冬里は『気』の運用をはじめます……」
それからが大変だった。
『天衣相生』は、冬里が指定の場所に『気』を集中させると同時に、『天元の気』を打ち込まなければいけない。
それも、3カ所連続で。
少しでもタイミングがずれたら、最初からやり直しになる。
俺たちは、何度も失敗を繰り返した。
それでも、工夫しながら実験を続けた。
──実際に冬里の肌に触れて、彼女がそこに『気』を集中させているかをチェックしたり。
──冬里が俺の指を口にくわえて、『天元の気』が来ているか確かめたり。
──冬里の身体の、『気』を打ち込む場所に、墨と筆で印をつけたり。
──俺もその位置を体感するために、墨で印をつけてもらったり。
──でも、やっぱり落ち着かないから、墨を濡れた布で拭き取ったり。
時間の感覚なんか、とっくに消えていた。
おたがいがどんな格好でいるのかも、忘れていた。
俺たちはひたすら『天衣相生』の実験を繰り返して、そして──
「──『気』が活性化しています。おそらく……この状態が『天衣相生』です!」
不意に、冬里が胸を押さえて、声をあげた。
冬里の白い肌が上気して、桜色に染まっていく。
身体をめぐる『気』が、すさまじく活性化しているんだ。
「成功しました。芳さま! 今のうちに武術の訓練をいたしましょう」
「今すぐ?」
「『天衣相生』の効果は一時間くらいしか続かないと聞いています。次はいつ成功するかわかりません。今のうちに、効果を体感しておきたいのです!」
「わかった。それじゃ、修練場に行こう」
俺は冬里の手を引いて、修練場に行った。
まずは向かい合い、おたがいに一礼。
それから冬里は指二本だけを伸ばした、『操律指』の構えを取る。
俺は素手のまま冬里と対峙する。
『五神剣術』は素手でも戦える。
その場合は『五神拳術』『五神蹴術』になるんだけど。
「いくよ。冬里」
「はい。芳さま!」
俺は床を蹴り、一気に冬里に近づく。
腕を伸ばして、冬里の腕をつかもうとする。
けれど──
「──消えた!?」
一瞬、冬里の姿を見失った。
足音から、彼女が側面に回ったのはわかる。だけど、動きが速すぎた。
「『操律指』──『流水』!」
側面に回った冬里が、俺の腕に手を当てる。
『流水』は受け流しの技だ。
普段は敵の攻撃をさらりと受け流すものなんだけど──
ぐぉん!
「引っ張られる!? なんで!?」
まるで、激流に飲み込まれたようだった。
冬里が俺の腕に手を当てて、ふわりと引っ張っただけで、俺の身体のバランスが崩れた。
そのまま前のめりに倒れそうになる。
──俺の身体の重心、荷重移動、力の流れ。
そのすべてを冬里は受け流し、自分の望む方向に誘導している。
すごい。これが『天衣相生』の力なのか……。
「『猫丸毬如 (猫は毬の類似品)』から『五神蹴術』!」
俺は『獣身導引』の猫のかたちで床を転がる。
そのまま身体を低くして、足払いを放つ。
「さすがは芳さまです。こちらも……『猫丸鞠如』!!」
身体を丸めた冬里が、宙を舞う。
猫のように空中で回転した冬里は、俺の背後に音もなく着地。
俺の胸に向かって指を突き出す。『操律指』の点穴の技だ。
同時に、俺も拳を突き出す。
無刀で放つ突き技──『麒麟角影突』だ。
そして冬里に向かって繰り出された拳が……彼女に触れる前に止まる。
冬里の指も、俺の胸の前で止まっている。
拳と、点穴の指。
おたがいの急所に技を向けたまま、俺と冬里は動きを止めた。
そして──
「すごいな。冬里は」
「いいえ。芳さまには敵いません」
俺たちは立ち上がり、距離を取る。
それから姿勢を正して、礼を交わした。
「芳さまの拳の方が速かったです。これが実戦なら、冬里はあっさりと打ち倒されていたでしょう」
「それはきっと今だけだよ。冬里が『天衣相生』を使いこなせるようになったら、凄腕の武術家になれると思う」
「そうなったとしても、冬里は芳さまには勝てません」
「どうして?」
「『天衣相生』を使うには、芳さまのお力が必要ですから」
「……あ、そうか」
「ですから、この力は芳さまをお助けするためだけに使います」
そう言って冬里は、笑った。
汗で身体に貼り付いた薄衣の袖で、頬をぬぐいながら。
俺たちがそんな話をしていると──
「おや、ふたりとも、武術の修行をしていたのかい?」
帰宅した秋先生が、修練場に入ってきた。
「でも、冬里はすごい汗をかいているね。それに、薄衣一枚しか着ていないじゃないか。帯もほどけかかっているよ。ふたりきりとはいえ、服はちゃんと着た方がいいね」
「は、はい。お母さま」
「冬里の肌は……桜色になっているね。『気』がずいぶん活性化しているようだ。一体なにをしたんだい」
「『天衣相生』の実験をしていました」
冬里は目を輝かせて、そう言った。
「仰雲さまが編み出された奥義です。芳さまのお力を借りることで、冬里は『天衣相生』を発動することができたのです」
「すごい奥義ですよね。冬里さんの動きが達人みたいになっていましたよ。ぼくも、あと一歩で負けるところでした」
「…………待ちなさい。冬里」
秋先生は頭痛をこらえるような顔で、
「あの奥義は仰雲師匠が『使い物にならない』と言っていただろう? 私もそう説明したはずだ。忘れたのかい?」
「はい。覚えていますけれど……」
冬里は、きょとんとした顔で、
「仰雲さまとお母さまが『使い物にならない』とおっしゃったのは、『天衣相生』は『天元の気』の持ち主がいないと使えないからですよね? でも、今は芳さまがいらっしゃいます。だから『天衣相生』は使える技のはずで……」
「冬里はそう判断したのだね……」
「なにか間違っていましたか?」
「いや、きちんと説明しなかった私が悪かった。よく聞きなさい。冬里……それに天芳くん」
秋先生は、じっと俺たちを見て、
「『天衣相生』が使い物にならないのは、使用後に副作用が出るからなのだよ」
「副作用ですか?」
「え? じゃあ……冬里さんの身体に問題が?」
俺は思わず声をあげていた。
「もしかして古傷が悪化したり、熱が出たりするんですか? 教えてください。ぼくにできることなら協力しますから」
「そうだね。確かに、天芳くんの協力は必要だ」
「どんな副作用なんですか? ぼくはなにをすればいいんでしょうか?」
「『天衣相生』の副作用をおさえるには、『天元の気』の持ち主が24時間、冬里と繋がり続ける必要があるんだよ」
秋先生は言った。
「常に側にいて、身体のどこかを触れさせていなければいけない。実際は、手を繋いでいるのが一番いいだろう。短時間なら離れても大丈夫だが……その時間は、500を数えるくらいが限度だろうね」
「ぼくが、冬里さんと一日中、手を繋いでいればいいんですね?」
「できるかい? 天芳くん」
「……やります」
「……芳さま」
「ぼくも……夢中になって奥義の実験をしちゃいましたからね……」
これは俺のミスでもある。
やっぱり、秋先生の帰りを待つべきだった。
冬里が『強くなって、芳さまのお役に立ちたい』と言ってくれたから、その気持ちに応えたいって思ってしまったんだよな……。
俺は一日、冬里と手を繋いで過ごせばいい。
離れていられるのは500を数える間だから、8分前後。
その時間を利用すれば、服を着替えたりすることはできるだろう。
「あの……お母さま」
「なにかな、冬里」
「芳さまと離れてから500秒が過ぎると、副作用が出てしまうのですね?」
「そうだよ。一度副作用が出てしまうと、しばらくは止められなくなる」
「その副作用とは、どのようなものなのですか?」
「理性が吹き飛んでしまうんだよ」
秋先生の答えは、短かった。
「『気』が活性化しすぎるせいで、心がうわついてしまうようになる。その結果、理性が吹き飛んで、隠していた秘密や、心にしまっていた想いを口にしてしまったり、ずっと我慢していたことをやってしまったりする。つまり、お酒に酔っ払ったような状態になるんだ」
「…………え」
「しかも、全身の『気』が活性している、普段より運動能力が高く、行動力のある酔っ払いだ。その状態が数時間続くんだよ」
それが奥義『天衣相生』が封印された理由らしい。
うん。俺も……この技は封印した方がいいと思う。
そもそも、発動条件が難しすぎる。
俺と冬里が数時間試して、やっと一回発動できただけだ。
3箇所のツボに『気』を集中するのと、『天元の気』を打ち込むタイミングを完璧に合わせなきゃ行けないからな。
実戦で使うのは厳しいんだ。
発動時間が短いのも弱点だ。
『天衣相生』でブーストしていられるのは、30分前後。
技を発動するのに数時間かかるのに、メリットが得られるのは30分。
それじゃ割に合わなすぎる。
最後に、副作用の問題がある。
実戦で『天衣相生』を使って敵を倒したとしても、その後の24時間、『天元の気』の使い手は『天衣相生』を使った人間とくっついていないといけない。
つまり長時間、動きが制限されることになる。
敵が複数だった場合、致命的な隙をさらすことになるんだ。
だから『天衣相生』は仰雲師匠によって封印された。
その判断はきっと、正しかったんだろう。
俺たちも実戦で使わなくてよかったと思う。
でも……ただの実験であっても、副作用の問題は残るわけで……。
「り、理性が吹き飛ぶなんて……それは困ります!」
冬里は真っ赤になって、声をあげた。
「だ、だって、冬里は副作用をおさえるために、これから芳さまとずっと一緒にいることになるのです。そのときにうっかり、理性が吹き飛んでしまったら……」
「吹き飛んでしまったら?」
「い、言えません! どうなるかなんて……恥ずかしくて言えません……」
冬里は両手で、顔をおおってしまった。
それから彼女は、俺の手をにぎって、
「お願いします。芳さま」
じっと、俺の目をのぞきこんだ。
「冬里が理性を保てるように……明日のお昼くらいまで、ずっと手を握っていてください!」
「わかった。がんばろう。冬里」
「もちろん、私も協力しよう」
そうして、俺と冬里の戦いが始まった。
24時間は、長かった。
俺たちは食事のときも、眠るときも一緒だった。
お風呂は……さすがに入れないので、身体を拭くだけで済ませた。
どうしても1人にならなければいけないときは、8分間の猶予時間を利用した。
そうして、俺たちは24時間の試練を乗り切ったのだけど──
「うっきーっ! うききっ。うき────っ!!」
「冬里! しっかりして。人間に戻って!!」
「……すまない。時間を読み違えてしまったようだ」
『天衣相生』を使ったあとは24時間、俺と冬里が手を繋いでいる必要がある。
秋先生はそれを『天衣相生』が発動してから24時間だと考えていた。
けれど、違った。
正確には『天衣相生』の効果が切れてから24時間だったんだ。
『天衣相生』は仰雲師匠によって封印された技だ。
だから秋先生も、この技が使われたのを見たことがない。
そのせいで、微妙な勘違いが発生してしまったんだ。
俺と冬里が手を放したのは、少し早い時間だった。
具体的には、俺が冬里の身体に『天元の気』を打ち込んでから、24時間後だ。
『天衣相生』の効果時間は約30分。
本当なら俺たちは、武術の修練が終わってから24時間、手を繋いでいる必要があった。なのに、それより早く手を放してしまったから……冬里に『天衣相生』の副作用が発動してしまったんだ。
そして、理性を失いそうになった冬里は──
「も、もう……自分を抑えきれません。でも、芳さまに恥ずかしいことをいいたくないので……冬里は……猿になります!!」
そう言って『天衣一身導引』の猿のかたちをはじめた。
その結果、冬里は『理性を失った猿』になった。
そうすることで『恥ずかしい言葉』を口にするのを回避したんだ。
本当にすごいな……冬里は。
人間じゃなければ余計な言葉を口にすることはない……って。
これって、天才の発想だよな……。
「うき! うききー!」
そんな冬里は、今は完全に猿になりきって、俺の背中にくっついてる。
「秋先生。冬里がもとに戻るのは……」
「あと1時間というところだろう。あとは私に任せて、天芳くんは帰っても……」
「うきき! ききーっ! きしゃーっ!!」
「……すまない。やっぱりいてくれないか。天芳くん」
「あ、はい」
しょうがないな。
俺の背中におぶさっている間は、冬里も落ち着いてるみたいだからね。
効果が切れるまでは、このままでいよう。
俺は理性を失った猿になった冬里を抱えて、時間を過ごした。
そうしているうちに時はすぎて──
段々と冬里の動きがゆっくりになっていき、そして──
「…………すぅ」
俺の背中で、冬里は寝息をたてはじめた。
ずっと緊張してたからな。疲れが出たんだろう。
活性化しすぎた身体が、休息を求めてるのかもしれない。
「大変だったね。冬里」
「……ふみゅ」
「ゆっくり休んでいいよ」
「…………はい。芳さま」
俺の背中で、人間に戻った冬里が、つぶやいた。
「…………冬里は……」
「うん?」
「………………好きな人の赤ちゃんが欲しいです。たくさん、欲しいです。大家族になりたいです。ずっと、お母さまと冬里だけで旅をしてきましたから、大家族にあこがれてます。だから……好きな人の子どもが、たくさん欲しいのです……」
たぶん、冬里の理性は、まだ戻りきっていなかったんだろう。
そのせいで隠れていた本音が出てしまったんだ。
でも、その声は、俺にしか聞こえなかった。
秋先生は寝入ってしまった冬里を見ながら、首をかしげていたから。
そんなわけで、その言葉は俺だけの秘密になった。
冬里を寝かしつけた俺は、秋先生に別れを告げて、自宅に帰ったのだった。
そうして翌日、俺が秋先生の家を訪ねると──
「ほ、芳さま!? 昨日の冬里は……なにか恥ずかしいことを言っていませんでしたか!? 教えて欲しいです……い、いえ、やっぱり教えないでください! 冬里が芳さまに恥ずかしいことを言っていたとしたら……だ、だめです。冬里はもう、だめになってしまいます…………」
俺は、あわあわする冬里に出迎えられることになるのだった。




