表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

第2話〜秘めた心〜

 キイィ……

 アパートのドアが、きしみながら開いた。


 「はあ…」


 ものの見事になーにんもないこの部屋。

 畳三畳にひきっぱなしの布団がひとつ。

 これがこの部屋の全て。

 あまりの貧乏さに、悲しくなってくる。

 ……でも、悪いことばかりかと言われれば、そうではないのだ。


 「……寝ようか。暇だし」

 「そ、そうね。」


 起きててもおなかがすくだけ(食事は一日昼食のみ)なので、私たちの就寝は早い。

 帰ってすぐ、私たちは寝る。


 「……じ、じゃあ先に寝てて。私、準備あるから。」

 「なんの準備?」


 そんなの、ルウに言えるわけがない。


 「……すぐ済むわ。」

 

 ……いつ襲われてもいいように、体と服を水の魔法で洗っておこう、なんて。





 「……お、お邪魔しまー……す」


 私は体と服を洗い、火の魔法でさっと乾かすと、すぐに布団に入ろうとする。

 この瞬間がいつもドキドキする。

 なにしろ、外見だけは年頃の男の人と同じ布団で寝るのだから。

 たぶん、今鏡をみたら、自分の髪の毛とおんなじ赤色に染まった私が映るだろう。

 布団の端をゆっくりつまみ、そおっと、そーっと、めくる。

 そして、私が入れるぐらい布団を待ちあげて、私は完全に凍りついた。

 それに対して、心臓はバクバク言ってる。

 だって、目を閉じたルウの顔が、あまりにもきれいだったから。

 いつもは私と反対を向いているルウだったが、今日だけは、無防備になった前身を向けている。

 ……やばい、理性トびそう……

 さっきまで襲われる心配をしていたはずなのに、今は襲ってしまわないか心配している。

 ……完全に立場逆だけど。

 本来、私が今感じている感情はルウが感じるべきなのだ。

 ……でも、ルウは、朴念仁っていうか、ほんとに男としての感情を持ってるのかわからないからなあ……。だって、今までずっと二人で旅してきたのに、私とルウには浮いた話がひとつもない。

 普通、物語だと、危機を乗り越えた男女は、恋に落ちるけれど、私たちにはそれがない。

 いや、言い方が悪い。


 「……ルウ……」


 布団に入り、ルウと向かい合わせに寝転がる。狭い布団なので、ほとんど密着している。

 ルウを見つめながら、もう一度、考え始める。

 ルウには、そのような恋をするということがない。

 私?

 私はルウにいろいろと助けられてから、もうぞっこんですよ。

 ルウしか目に入らない。

 ……なのに、ルウは私に無関心。

 こうやって、同じ布団に入って、そばにいるのに……ルウは。

 もう、寝ちゃうんだ。ちょっとぐらいドキドキしてくれてもいいのに。

 ……はあ……

 ……寝よ。なんか疲れた。



 私は目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ