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第7話〜親睦会、そして〜

 ベッドの上に座りながら、私は何人ものお姉ちゃんを見る。

 私のベッドを中心に、人の波ができている。奥の、つまり入口の方を見ると、部屋に入りきれていないのがわかる。

 いろんな人がいる。全員が私のお姉ちゃんなんて、すぐには信じられない。

 たくさんのお姉ちゃんが見守る中、始まった質問会。

 私はまず、リリーお姉ちゃんの質問に答えることになった。

 そして、次に私が質問する。

 言いたくないことだったら答えないし、答えてもらえない。

 そんな、本当に親睦を深めるためだけの、質問会。


 「じゃ、私が一番ね。あんたはどんな能力を持ってるの? ちなみに私は瞬間移動ができます!」

 「えっと……『ユージュアクション』っていう武器を使いこなす能力……」

 「じゃなにか質問は?」

 「えっと……お姉ちゃんはどんな食べ物が好きですか?」


 私は肉が好きだ。あれを食べると体がよく動くようになるから。  


 「私は……白ご飯、だね! シンプルイズベスト! じゃあね!」

 そう言って、リリーお姉ちゃんはもう一度奥の方へと行き、並び始める。一問交代でやるらしい。

 次に来たのは、ララお姉ちゃん。


 「……………………あなたの嫌いな食べ物は?」


 無表情なのに、声だけ聞くと感情の感じれる、不思議な声。


 「とくにない。……好き嫌いしたら、……なんでもない。とにかく、嫌いな食べ物はないわ」


 そもそも私、嫌いになれるほどご飯の種類食べていない。肉、白ごはん、魚、あと野菜何種類か。その四つぐらいしか、食べたことない。


 「じゃ、じゃあ……ララお姉ちゃんは、どんな能力を持っているの?」


 これ、結構興味あったりする。私以外の特殊な能力って、どんなのがあるのか気になる。


 「……私の能力は、『心透視しんとうし』。………………人の心を、読むことができる」

 

 相変わらずの無表情だったけど、その声はあきらかに哀しみの表情があった。

 しまった。訊いてはいけないこと、だったかな……?


 「……………そんな顔しないで」


 私の心配を読み取ったかのように(実際読めているんだろう)言って、ララお姉ちゃんはまた並びなおした。

 次は、コトリお姉ちゃんだ。金色の瞳が、私を見つめる。


 「さて、じゃあ、何質問しようかな……。そうだ! クレアは何歳ですか?」


 ……また、えらく単純な質問……


 「7歳だよ。……お姉ちゃんは?」


 私は訊き返すと、お姉ちゃんは妖しく微笑んだ。


 「それ訊いちゃう? ……仕方ないなあ……みんなには、内緒だよ」


 そう言ってお姉ちゃんは、私の耳元に口を近づけ、ささやいた。


 「私は、15000歳よ」


 絶句。


 「……うそ?」


 つい訊いてしまった。だって、一万五千歳なんて、あり得るわけがない。人間の寿命はせいぜい百歳ぐらいだ。


 「ホントよ。……あれ? 知らなかった? じゃあ、あとでお父さんから教えてもらえると思うよ。じゃあね~」


 そう言って、コトリお姉ちゃんはまた列に並びに行った。

 

               













 それから私は、三十人近いお姉ちゃんからの質問に答え、質問をし、答えてもらう、を繰り返し、それが終了したのは、日が暮れてからだった。


 「ふう……疲れた……」


 私はベッドに寝転がる。白のワンピースなので、腕に布団のふかふかさが伝わってくる。牢屋の石布団とは全く違う。心地が良すぎて、今にも寝てしまいそうだ。

 ただ質問に答えるのが、こんなにも疲れることだとは思わなかった。まあ、私はもともとこんなに大人数と会ったことがない。だから、質問攻めの疲労など、知らなかったのだが。


 「……ミリアお姉ちゃんは帰らないの……?」


 一人残ったミリアお姉ちゃんに私は訊いた。

 彼女は私のベッドの隣で、壁に背を預けて立っていた。

 別に、疎ましいからこんなことを訊いたのではない。

 ただ、みんながここからいなくなった理由を考えると、彼女も帰るのでは、と考えたのだ。


 「あなたは帰ってほしい?」


 私は首を振る。


 「……お姉ちゃん、みんな帰っちゃったよ?」


 みんな、名残惜しそうだったけど、帰った。なんでも、私に限らず、たいていの人間は、異なる環境に押し込まれると必要以上に緊張して、疲れるらしい。だから、大人数でいるのは短く、ということらしい。


 「……いくらなんでも、一人にしちゃいけないでしょう? 心細くなって泣かれでもしたらたまらないわ」


 ミリアお姉ちゃんのあまりに子供扱いした言い方に、私はむっとなって、語気を強めて言う。


 「私子供じゃないもん。一人でいても、泣かないわよ! 一人なんか、慣れっこよ!」 


むしろ、一人のほうがいい。怯えなくてすむから。誰かに怖がる必要がないから。


 「……それがだめなのよ」


 ミリアお姉ちゃんは、私のベッドに入ってきた。 このベッドは一人用なのだが、私には大きすぎるぐらいで、ミリアお姉ちゃんが入ってきて寝転がっても、まだ少し余裕がある。 

 ……な、なんだろう?

 私は微かに怯えながら、でも、心のどこかで安心していた。どうして? 私、まだこの人が危害を加えないって確証を得ていないのに、どうして。でも、私はすぐに確証を得る。

 ……あ、お姉ちゃんだからなんだ。

 って。

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