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第6話〜引き取った理由〜

 私は、集まった人たちを遠目に見る。

 あまりにもみんなガン無視なので、クレアの部屋から出てきたのだ。居心地悪いったらない。

 ……まあ、私を無視する理由は分からなくもない。

 忙しい人もいるだろうし、自分の妹に一分一秒でも、という人もいるだろう。

 そのことに私は大して怒りを感じない。

 ……ただ、唯一腹立たしいのは、隣で笑顔を来た女性にむけている、ルウ。


 「……あんた、いつの間にこんなに子供を?」


 いったいどこから、というかいつ、こんな数の子供(外見年齢は私たちと変わらないが、みんなルウを『お父さん』と呼ぶので、子供と言っている)ができたんだろう?


 「さあ、いつだろうね?」


 この状況でなお、ルウはそんなことを言ってる。


 「はあ!? しらばっくれるつもり!?」


 私はルウに詰め寄る。納得できない。なんで今まで黙ってたのか、とか、相手は誰だ、とか、いろんな疑問が渦巻く。


 「……みんな、君やクレアみたいな子だよ」


 でも、その一言で、納得する。


 「……みんな、君や、クレアみたいな理由で元いた世界にいられなくなって、それを僕が引き取ったんだ。家族として」


 優しげに、慈しむように言うルウ。


 「僕は、いつもこうやって引き取ったら、一人旅ができるまで育てる。……できない子は、その子に合った世界を探して、置いていく。……一人暮らしができるようになるまではちゃんと育てるよ、もちろんね。お金とかもある程度は置いていくし。

 それで、一人立ちができると判断したら、僕が不老の魔法をかけて、いったんお別れするんだ。それで、新しい子が増える度にこうやって呼んで……」

 「ちょ、ちょっと待って」


 一気に言われても、すぐに理解できない。


 「……えっと、まず、質問。あんた、なんで引き取ってるの?」


 それに、なんで家族? 別に仲間でいいではないか。私みたいに。


 「……『なんで』? あはは、そんなことを訊かれるとは思わなかった。……放っておけなかったんだよ。まだ小さいのに、もう未来が閉ざされてしまうなんて……許せなかった。だから、僕がその未来を開いてあげよう、って思ったんだ」

 「……じゃあ、なんで『家族』? 仲間でいいじゃない」


 それが、ずっと疑問だった。仲間、でも何も変わらないのに、どうして家族?


 「……サラ。君なら、分かるはずだよ? 家族のいない寂しさが。家族からも嫌われる恐ろしさが」


 言葉が、出なくなった。

 ルウはそんな私に微笑を崩さず、言った。でもその微笑みは、どこか、悲しそうだった。


 「……あの子たちに必要だったのは、家族だったんだ。様々な事情で家やその世界で迫害を受けて、心身ともにボロボロだったあの子たちを救うには、『仲間』じゃあ絆というか、『親密感』が薄いんだよ 

 ……『仲間』っていうのを否定するつもりはないけどね。仲間だって十分に仲良くなれるし、親密感もある。

 ……それでも、足りないんだ」


 ルウは、悲しそうだった。

 小さい子供が、生まれつき持っていた能力のせいで殺される……。

 そんなこと、世界では日常茶飯事なのかもしれない。

 だから余計に、悲しいのだろう。……私だって、悲しい。私はその殺される側なのだ。そして、私みたいな人生を送るしかない人間がたくさんいる、と思うだけで……私の胸は、締め付けられる。


 「家族のぬくもりがどうしても必要な子が、たくさんいた。だから、僕は『仲間』じゃなくて『家族』にすることにしたんだ。そうしないと、壊れてしまいそうな子も、いっぱいいた。今でもいっぱいいる。クレアもそうだし、ララもそうだったんだ。君ぐらいまで大きくなっていたら『仲間』でも十分だけど、クレアみたいに小さい子には、やっぱり家族がるよ。

 ……名前が同じだと、分かりやすいし。だから、あえてめったにない『五芒星ペンタグラム』を名乗るようにしたんだけどね」


 そんな理由があったんだ。知らなかった……。

 あ、そうだ。


 「……ところで、どうやって呼ぶの?」


 異世界間の通信方法はまだないはず。それなのに、どうやって呼ぶのだろう?


 「ミリアがそういうのが得意なんだ」

 「……あの女の人?」


 あのやたらと綺麗な人か。たしか『未来視』とかなんとか言ってたような……


 「そうだよ。詳しい方法は僕も知らないけど、結果的には呼んでくれる。彼女はね、予知能力を持っているんだ。だから、子供が増えたら、わざわざ僕のいる世界まで来て、家族を呼んでくれるんだ。……先を見据え、いい未来になるよう行動するいい子だよ」


 微笑みながら、ルウはミリアを見る。

 部屋の外からでも、彼女は飛び抜けてよく見える。

 彼女が長女、ということは一番の長生きなのだろう。だから、オーラみたいなのがあふれているのがここからでも分かる。彼女は保護者のように、ほほえましそうにクレアと、クレアに質問する姉たちを見ている。


 「……ところで、なんで女の子ばっかなの? あんたの趣味?」

 「失敬な。ちゃんと、男の子もいるよ。クレアが男性恐怖症だから連れてきていないだけだよ」


 ……驚くほどまともな理由だ。


 「あの子に今必要なのは、家族だ。それも、僕たちだけじゃない、たくさんの家族が。……きっと、あの子は苦労する。僕だって補えなくなるかもしれない。その時に助けてくれる家族が、あの子には必要なんだ」

 「……そうね。たしかにあの子は、苦労するわね」


 あの子は、人を殺し過ぎて、常識、価値観共に狂わされている。でも、それでもあの子はまともな価値観も持っている。本を読んでいたせいもあるだろうが、とにかく不思議な状態だ。将来は自分や心のこと、その他いろんなことで、きっと悩む。そういう時には、親だけじゃなく、たくさんの家族がいたら相談もしやすいだろう。


 「能力的にみたら、今すぐにでも一人旅はできる。……でも、精神面が弱すぎる。……だから、変えてあげないと。……サラ、これは親の義務だよ?」


 義務。その言葉の重さに、私は息をのむ。正しく、導くのが、親の義務……。


 「……分かってるわよ。言われなくてもね」


 そんなことは、分かっている。私の両親はしてくれなかったが、理解はできる。

 クレアを育てると、私は決めたのだ。今まではルウだけがしていたことだが、今回は違う。ルウと私が、娘にしたのだ。その責任はとる。


 「……クレア、今は……休んで」


 私は呟く。

 今は、休むといい。この先に待つ苦難を乗り越えるためにも、今は休みなさい。


 「……そうだね。今は、ゆっくりとしてもらわないと。……サラ、少し出ようか。話がある」

 「……?」


 私の返事を待たず、ルウは玄関まで行き、出てしまった。

 ……どうしたんだろう?

 私は小走りで、玄関まで行った。



 ……ルウ、話って、なんだろう?  

 疑問を持ちながら、私はルウに続いた。

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