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第2話〜発見〜

 僕がその女の子を見つけたのは、本当に偶然だった。

 僕達がこの世界に来たのは、ほんの数日前。

 この世界の僕たちの住まいは、基本的な賃貸マンション。

 サラに隠れてこっそりやってた『守護者ガーディアン』の仕事がうまくいって、金銭的に余裕ができたから借りられた。

 3LDKのマンションなので、僕とサラは別々に寝泊まりしている。

 僕がその女の子を見つけたのは、夕食の材料を買いに行った帰りだった。

 カレーの材料の詰まったスーパーの袋を下げ、暗くなりかけた道を歩いていると、小さな、銃声に似た爆発音が聞こえた。

 もしかしたらヤクザの抗争でもあったかな?とか思った僕は、路地を外れ、裏道に入った。止めれるなら止めるためだった。

 音は何回か続いたから、元をたどるのはそう難しいことではなかった。

 路地裏の、袋小路にさし当ったところで、僕は信じられないものを見る。

 小さな、7歳ぐらいの女の子に拳銃を向けている、3人の男たち。

 「君たち、何してるんだ!?」

 僕は反射的に叫んだ。

 男たちが、こちらを向く。

 と、同時。

 三発の銃声が、路地裏に響いた。

 男たちが、倒れ伏せる。後頭部を撃ち抜かれたのだ。生きているはずがない。

 ……あの子が、撃ったのか?

 最後の力を出し切ったのか、男たちと同じように倒れている女の子に近づいて、彼女を見る。

 ……傷だらけだ。

 僕は血の海と化した路地に、血がつかないように下げている袋を下ろす。

 ……久しぶりだな。サラ以来だ。

 僕は女の子の頭に手を置くと、口ずさむ。

 「『願えよ願え、神の子よ。想えよ想え、人の子よ。狂えよ狂え、物の化よ。神には全てを、人には奇跡を、物の化には死を。それぞれ、与えたまえ。我、物の化のルウ。罪深き存在ながら、人の幸せを願う。この者、人なり。我の願いに応え、世界よ、この者に奇跡を与えたまえ』――――!」

 女の子の体が光り、傷が癒えていく。幸いなことに、銃弾は全て貫通していたようだ。

 ……どうするかな……この子……

 まさか、放っておくわけにはいかないだろう。

 ……いつものことだな。

 そう思うと、僕は女の子を抱えあげた。  

 さて、なんてサラには説明するかな……?

 僕は人目につかないよう、運び始めた。
















 「……と、いうことなんだ」

 

私は自室で、ルウから、ことのあらましを聞いていた。

 ……つまり、私の部屋のベッドに寝かせられた、推定7歳ぐらいの女の子を持って帰ってきた理由を。

 この部屋は全体的に物がない。あるのは、ベッドと本棚のみ。他は、入居した時と変わらない。あまり持ち物が多いと、引っ越しが面倒になるから、物を持たないのだ。


 「……ふうん。まあ、それはいいわ。で?私たちの晩御飯は?どこにあるの?」


 今日は引っ越しが終わった、ということで記念にカレーを作る約束だったのだが……


 「……………あ」


 しまった、という顔をしたルウ。どうせ、女の子を助けるのに夢中で、食事のことなんてすっかり忘れていたんだろう。


 「……いいわよ、別に。私のお金じゃないし、空腹にも馴れたしね」

 「ごめん……」


 ああ……私、馴れるところが違う気がする……

 普段なら、約束を反故にされたことに怒るところだが、今回はさすがに事情が違う。

 この女の子、聞けば武器を持った5人の男を殺したらしい。

 普通、ありえないことだ。しかもこの子は拳銃ひとつで確実に額を撃ち抜いたらしい。

 なおさら、疑問が増える。

 いったいどういう訓練をしたら、7歳の子供が絶体絶命の状況で確実に狙いが付けられるようになるというのだろう。特殊な能力を持った私でさえ、ちょっと拳銃突きつけられたぐらいでおかしくなってしまったのに……

 この子、本当に何者?

 疑問ばかりが膨れる。


 「……ところで、この子どうする?」

 「どうするって……ルウ、なにか考えがあったんじゃないの?」

 「……ないことはないけど、それはこの子に話を聞いてからだね。目が覚めるまでは、なんとも。……そうだ、サラ。この子の服着替えさせてあげて」


 女の子の服は、血にまみれている。傷は治っているみたいだけど、見てて痛々しい。


 「ええ。わかったわ。……ちょっと出ていってね」

 「うん。終わったら呼んで」


 ルウはそう言って部屋を出た。


 「……さて、と……服あったかな?」


 子供服なんて、必要ないからなあ……


 「あ、そうだ。これ、使って」


 そう思っていると、部屋の扉が開いて、ルウが手だけを部屋に入れた。

 その手には、子供服。白のワンピース。

 ……こういうのをなんでルウが持ってるのかな?


 「……あんた、変態?」

 「どうして?」

 「こんな服、普通持ってないわよ」


 ……今、真剣に思う。ルウってロリコン!? 私にまったくなびかないのも、ロリコンだから!?


 「サラ、僕はこういうのには慣れてるんだ。だからだよ」


 ルウは平然とそう言うが、本当かどうかは分からない。


 「……ま、とりあえずは助かったわ」

 「うん。お役に立てて嬉しいよ」


 聞くだけで天に昇りそうなセリフと共に、ルウは再び扉を閉じた。

 ……さて、と。

 女の子の服を、起こさないよう注意しながら脱がせていく。

 すると。

 ………………!!


 「何よ……これ…………!」


 ぼろぼろの服を脱がせると、裸体がそのまま出てきた。

そして、その身体には、無数の傷痕が。

 しかも、十や二十とかではない。百、二百。それ以上。古いものから真新しいものまで、様々だ。

 引っかき傷、火傷の痕、切り傷、擦り傷、蚯蚓腫みみずばれ、銃痕、それこそなにかの拷問を受けてきたような惨状だった。

 ………ひどい……

 傷痕のないところなど、見つけるほうが難しい。それほどまで、この子は傷つけられてきたというのがわかる。

 ……なんなの、この子は!?

 どう見ても、7歳前後の歳にしか見えない。なのに、こんな傷………


 「……もしかして」


 この子は、虐待を受けているのか?


 「……なおさら、起きてくれないと……」


 私は傷が痛まないように気をつけながら、服を着せた。

 もっと、よく女の子を観察する。

 長い綺麗な黒髪に、長くてかわいいまつげ。

 何の配慮か知らないが、傷の少ない顔は、血にまみれてはいるが、整っている。

 将来は美人になるのではないだろうか。


 「……ん……」


 女の子が、小さく声を上げる。


 「ルウ! 目が覚めるわよ!」


 私はルウを呼ぶ。


 「ほんと!?」


 ルウは、すぐに入ってきた。すぐそばで待機していたのだろう。


 「………ん………」


 女の子が薄く、目を開けた。


 


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