表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/34

第6話〜別れの場所〜

 「はあ……はあ……」


 燃えている。みんなみんな燃えている。

 私のことが嫌いだった母さんも、使ったことのない数々の家具も、嫌な思い出しかないこの家も。

 火の粉や、炎が私の肌をなめる。でも、炎が私を傷つけることはない。あらゆる炎は私の物。だから、熱くないし、焼けることもない。


 「あ……あ……」


 お母さんが、まだ呻いている。炎に全身を包まれ、皮膚を焼かれ、ところどころが炭になっているのに、まだ死んでいない。


 「……ごめん、お母さん。私、大変なこと、しちゃったね。……すぐ、楽にしてあげる」


 炎よ。お母さんを焼いてあげて。痛くないように、苦しまないように。


 「あ……サ……ラ……」


 ボッ。

 一際大きな炎が母さんを包み、母さんを殺した。

 母さんは最後に、私の名前を呼んでくれた。それは確実に怨みの声だったけど、それでもいい。


 「……お母さん、私もすぐに逝くよ。待っててね」


 踵を返し、燃え盛る家を出る。

 ある場所を目指して。









 私は、人間の屑だ。

 ちょっと、ほんのちょっと気を抜いただけで、たくさんの人を殺してしまった。

 フェニックスのささやきに耳を貸してしまった。

 子供のころ能力を練習した河原で、草地に座り、膝を抱え顔をうずめる。


 「……母さん……父さん……」


 殺してしまった。私を産んでくれた母親を、育ててくれた父親を、殺してしまった―――!


 「……」


 いよいよ私はバケモノになってしまった。人を殺して、おめおめと生きていていいわけがない。


 『……我ノセイダ。……スマナイ』

 (そうよ……あなたが私にあんなこと言わなきゃ、こんなことにはならなかったのよ。……消えて。お願いだから、もう誘惑しないで)


 こうやって、責任転嫁しなければ……私は耐えられそうにない。ごめん、フェニックス……


 『……分カッタ。シカシ、汝ガ望メバ、我ハ現レル。……イツデモ、望メ』


 それきり、声は聞こえなくなった。

 ……もう、完全に一人きり。

 死ぬ準備はできた。

 立ち上がり、目の前を流れる川を見る。

 流れこそ緩やかだが、泳げない私が死ぬのには十分だろう。

 一歩、川に入る。足首まで浸かる。夏真っ盛りだというのに、水は冷たい。一気に飛び込めば、心臓麻痺でも起こってくれるだろうか。 

 ……それもいいかな。苦しい死に方だったら、なんでもいいや。

 誰か、私に罰をちょうだい。目いっぱいの苦痛と、死を。

 チャプ……

 腰が浸かるまで、川の中を進んでいく。この川はかなりは深い。私が死ぬには十分の深さがある。

 ……ごめんね、お母さん。お父さん。

 今まで、辛い思いばかりさせてきてしまった。私が生まれたばっかりに。

 あと一歩、踏み出せばもう足はつかない。抵抗できずに、私は溺れ死ぬだろう。


 「……さよなら、この町のみんな。もう、怯える必要はないよ」


 私が死ねば、みんなの笑顔が増えるはずだ。幸せが増えるはずだ。喜ばしいことだ。


 「……あれ?」


 水面に波紋が二粒。


 「……あれ? お、おかしいな」


 それはいくつもいくつも断続して、水面に落ちる。


 「……なんで? わ、私は死ななきゃいけないのに……」


 それなのに、なんで……




 なんで、涙が止まらないの?




 私は死ぬべきで、死ねば誰もが喜ぶ存在なのに。……なんで、涙が……


 「わ、私……ま、まだ……死にたく……ない……のかな?」


 死にたく、ない? どの口が言うのだろう。

 両親を殺し、家を焼き、存在自体が罪な私が、それを言うの?


 「……だ、だめだ、早く死なないと。決心が鈍る……」


 早く死のう。あと一歩踏み出せば、きっと死ねる。

 さあ、早く。


 「……あ、あれ?」


 体が動かない。いや、動くには動く。でも、前に踏み出そうとすると、途端に金縛りに遭ったみたいに動けなくなる。

 こ、恐いから……かな?


 「早く。早く死ななきゃ……」


 一歩。たった一歩が踏み出せない。なんで?恐くなんかない。恐くないはずだ……

 でも、それがわかっていても、進めない。

 怖気づいたの!? 私は生きていてはいけない生物だって、もう十分わかったでしょ!?

 無理やり、水の中を進もうとする。でも、体は言うことを聞いてくれない。


 「…………………!!」


 それでも凍ろうとする体を動かし、前に進んだ。

 すると。 

 一気に、全身を水が包んだ。

 水質は悪く、ここがどこなのか分からなくなる。

 口を開けても、空気が入ってくることはなく、代わりに水が入ってきた。

 (く、苦しい……!い、息が……)

 圧迫されるような息苦しさ。胸に針をさすような痛み。

 助かろうと、必死にもがく。けれど、気泡を生むだけに終わった。

 いくらもがこうが、体は浮かないし、息はできない。

 死ぬしか、ない。

 だんだん、視界がかすんでくる。苦痛がなくなって、思考があいまいになってくる。

 ……ああ……死ぬんだな、私。

 それを最後に、私は意識を失った。

 


















 ――誰か助けて



これより、ご要望のあったキャラのプロフィールを。

 

 

ルウ

 この物語の主人公。人間ではないと自覚しているが、自分はなんなのか、まではわかっていない。

 得意武器は二つの細剣レイピア。得意技は特になし。地道に攻めて、地道に勝つ。一対一では強いが物量戦は苦手。

 サラの前では優しい人間であろうと努力するが、サラの目がなければとたんに冷徹に。怒ると怖い。

 髪の色は白銀。目の色は青。

 顔付きは、美少年に入る。

 好きな言葉は『優しさ』 

 好きな色は『白』

 嫌いな言葉は特になし。

 嫌いな色も特になし。

 常に微笑みをたたえている主人公なのにミステリアスな人物。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ