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第5話〜確たる拒絶〜

 「あは、あははは……あはははははははははははははは!」


 可笑しい、本当に可笑しい! こんなに気分がいいのは生まれてはじめて! ずっと、なんでみんな自分の感情晒していたのか不思議だった。でも、今その謎が解けた! 感情を表に吐きだすって、こんなに気持ちのいいことだったんだ!


 「ひぃっ! バ、バケモノ!」


 バケモノ? そう、私はバケモノ! さあ、早く逃げなさい? 死んじゃうわよ?


 「あはははははははははははははははははははははは!」

 「ひいっ! わ、俺が悪かったから! 許して! 許して!」


 許して? 何を言ってるの? 私、何も怒ってないよ? あはは、可笑しいな。なんでこんなに顔をゆがませて命乞いできるんだろう? きっと、人間だからだ! 人間は弱い! 私は強い! あはははははは!

 「だ〜〜め! 許してあ〜げない! 死んじゃえ!」


 私が軽く手を振るとそれだけで男の人は燃え尽きちゃった。

 あ〜あ、つまんない。

 私は、さっきの遊び(・・)を隅っこで茫然と見ていたいっぱいの人間たちを見る。

 みんな、怯えた表情を見せているの。なんだかつまんない。


 「あれ? なんでみんな笑わないの? こ〜んなに楽しいショーを見たあとなんだよ? もっと笑顔があってもいいんんじゃない?」


 みんな、ぶるぶると震えるだけで、なんの反応もしてくれない。


 「ねえ〜フェニックス〜? こいつらなんにもこたえてくれない〜! つまんない〜! な〜んかいい懲らしめる方法ないかな? 教えて?」


 こういう時はフェニックスに頼るのが一番。きっといいお仕置きの方法を思いついてくれる。


 『……スマナイ。マサカ幼児退行スルトハ思ワナカッタンダ。ココマデ残虐ニナルトハ思ワナカッタンダ。本当ニスマナイ。……正気ニ戻ルンダ』 

 「あれ〜? いいのが思いつかないの? 仕方ないなあ……じゃあ、一人ずつじっくり焼いていこう! これでお仕置きになるかな?」

 『……ソレダト死ンデシマウ』

 「ん〜別に、死んじゃってもいいよ! どうせ弱い人間なんだから! 弱いくせに、今まで私を無視して、いじめて、私をめちゃくちゃにしたからこんなことになるんだ!」


 そうだ! 人間なんて外に行けばいくらでもいるんだから、遊び相手がいなくなることはないんだ!


 「ご、ごめん、沙羅ちゃん……ゆ、許して……」


 女の子の一人が、泣きながら私に謝った。


 「……? 私、怒ってないよ? 別に謝らなくてもいいよ」

 「で、でも、私も焼くんでしょ? ば、化け物なんて呼んでごめん! だから、許して……」

 「ん〜。なんで伝わらないのかな〜? 私は、正真正銘のバケモノなの。だから、それについて謝られても……。そうだっ! あなたから焼こう! 許してほしんでしょ? じゃあ、お仕置きだけで許してあげる!」

 「そ、そんな! や、やめて……」


 女の子は、急に怯えた表情になる。あれ? なんでだろ? 許してあげるって言ってるのに、なんで笑わないのかな?

 ……ま、焼いちゃえ!  


 『ヨセッ!』


 あんまり痛くしすぎると死んじゃうから、一瞬だけ、一気に焼こう! 


 「ぎああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ……あれ? ……動かなくなっちゃった。……ま、いっか。まだまだ人間はいっぱいいるんだし。


 「次は〜誰にしようかな〜?」


 指をさしながら、選ぶ。そうすると指が向けられるごとにビクッてなるのがとっても面白い!


 「……そうだな、先生にしよう! 大人だから、強そうだし、きっとお仕置きにも耐えれるよね!」


 大人は子供より強い。なんでそんな簡単なこと気付かなかっただろう?


 「ご、ごめん……本当にごめん……ど、どうか、許して……」

 「うん、いいよ! お仕置きに耐えれたね!」

 『ヤ、ヤメロ! ハ、早ク家ニ帰ラナイト、……両親ガ心配スルゾ!』


 あ……

 そ、そうだ! もう夕方だ! 早く帰らないと、お父さんとお母さんが心配する! 


 「ごめんね、みんな〜! また、遊ぼうね!」


 私はみんなにお別れをすると、家に向かって走った。

 はやく、二人に会わないと!















 「ただいま! お父さん、お母さん! 心配したでしょ? 帰ってきたよ!」


 私は家に帰ると、大声で言った。家のどこにいても二人に届くように。

 きっと、ここまで来て、『どこ行ってたの!? こんな時間まで!』とか言いながら、お説教するんだ。それで、お説教が終わったら。目いっぱい抱きしめてくれるんだ!

 ……ほら! お母さんが来た! ちょっと怒ってるけど、大丈夫!

 お母さん、なんて私を叱るのかな?


 「……あなた、まだ生きていたの」


 ……え?


 「お、おかあ……さん?」

 「なんで死んでないの? 今日国の人があなたを殺してくれるんじゃなかったの?」


 な、なに言ってるの? 意味わかんないよ。


 「お母さん、叱るんなら、もっと分かりやすく言ってよ。そ、その、私バカだから、お母さんの言ってる意味が分かんない」


 きっと、言い換えてくれる、『どこ行ってたの』って……


 「……わかったわ、言い換えてあげましょう。あなたはもういらないから、死んできて」 


 ……え? し、死んで?


 「な、なに言ってるの、お母さん?私、何か怒らせるようなこと、しちゃった? ご、ごめんね、ごめんなさい!」

 「……謝るぐらいなら、死んで。もういやなのよ。バケモノの母親なんて言われるのは。そこのビルから飛び降りて。死んで。死になさい」


 ……わ、私、なにかしちゃったのかな? 気付かないうちに、ひどいこと……


 「あなたの存在自体が、目障りなの。とっとと死んできて」


 アナタノ存在自体ガ、メザワリ。 


 私は、いらない子? 生きていてはいけないの?


 「ひ、ひどい……」

 「酷い? あなたが存在している方がひどいわよ。生きているだけでどれだけの人間に迷惑かかってるか、あなたわかってる?」


 ……やめて、おかあさん。それ以上言わないで。


 「あなたが能力持ちだと分かった時、どれほど殺してやろうかと思ったか。あのバカ亭主が生きているんだからやめてやれとか言わなかったら、絶対殺してたわよ」


 言わないで。


 「しかも、せっかく金がもらえる国の研究所まで逃げだしてきて。ちょっと脳みそ開かれるだけでしょ? それぐらい我慢しなさいよ。せめて金ぐらい取ってきなさいよ。ほんと役立たず何だから」


 それ以上、私を否定しないで。


 「……なにぼーっと突っ立ってるのよ。死んできなさいよ。そうしたら国がお金くれるんだから」


 言わないで。私を否定しないで。壊さないで。


 「わかる? あなた、お金よりも価値ないのよ? ……わかったら死んできなさい」


 ヒテイシナイデ。


 「ゃ」

 「? ……なんて?」


 コレイジョウ、ワタシノ夢ヲ、ワタシヲコワサナイデ……!


 「いゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 もう、イヤ! 燃えろ! 燃えろ! 全て、燃えてしまえ! 全部、全部、炎の中に消えてしまえ!


  



 

 豪炎が、私の家と、家のどこかにいた父親と、母親を焼き尽くした。

 母の最後の断末魔が、いつまでも頭の中で響いた。

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