57、ワイルドピッチ
いま私は、カーボンゴーレム(鋼鉄の骨入り)ソフィア二号に石を投げさせて、的に当てる練習をしている。
ふと思い立って、野球の投手のフォームで投げさせてみたら、ものすごい剛速球が投げられたから。
球速は、軽く二百キロを越えているのではないかしら?
脳のリミッターが外れているのは伊達ではない(注、ゴーレムに脳はない)
ただ、コントロールがいまいちねぇ。というわけで、練習、練習。
投げた拳大の石が、円を描いた石壁にめり込むか、投げた石の方が砕けるかは、速度も関係ないとは言わないけれど、大方は石の強度によるようだ。
「バーランド嬢は、どこへ向かっているのか…」
ドートン先生がつぶやいていたけど、どこって。
「今度、ダンジョンに潜るのですよね?」
遠近どちらに私を分類するべきか、先生は非常に悩んでらした。
だいたい前衛二、後衛一、索敵もしくは回復用員一で一班というのが一般的らしい。
私はどう考えても、遠距離攻撃をしているのだけど、ソフィア二号にだけ注目すれば、彼女、どちらもできるから(剣と打撃と投擲)
などと考えている間に、ツーストライク!
だんだん命中率も上がってきたし、即座に唐辛子爆弾を作る練習もしておこう。おおぅ、楽しくなってきた!
ダンジョン、楽しみだなぁ。
倒した魔物は粒子になって消えてしまうし、こちらの世界に育った人たちは、狩ることと食べることが直結しているから、命を奪う忌避感はあまりないと聞く。
それでも、令嬢というカテゴリーでは、私の敬愛するテミス姉様のような方は少数派だ。
前世で、はじめて鶏を捌いた時は、非常にショックだったけれど、経験させておいてくれてありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん!
いまさらながら、先立ってしまったのだろうことを申し訳なく思う。
正直、よく覚えてないし、あまり考えないようにしてきたけど。
もし本当に、記憶の途切れた時点が死に際だったのだとしたら、とてもとても悲しませてしまったろうし、私が即座に転生したにしても、おじいちゃんもおばあちゃんも、年齢的にもう生きてないのかもと考えると、胸に迫るものがある。
はぁ~。でも、どうにもできないことだからなぁ。
一方で、だんだん覚えのある年齢に近付いていると思うと、感慨深いものがあって。もし、神様のようなものが存在するのだとしたら、もう一度チャンスをくださってありがとう!
私、それなりに生きてます!
そして、魔物も生きています! 楽しみになんかしててすみません。正直、舐めてました! ガーッとか奇声を上げて迫ってくるのが、めちゃくちゃ怖い。
前衛が頑張ってくれているから、まさか私だけトーチカに入っているわけにもいかないし。我慢できなくなったら、遠慮なくそうさせてもらいますけど。
ちなみに、森や辺境(つまり外)をうろついているのが魔獣で、ダンジョン産が魔物。とっても大雑把に言うと、そういうことらしい。
ガインッ!
いままさに、その魔物が突進してきて、前衛の盾に弾かれ、腹を見せて痙攣している。
「ささっ、バーランド嬢、止めを」
そう。これは、プロの探索者たちに周りを固められた、接待ゴルフならぬ接待探索なのでした。




