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4、王子様


 私が婚約した王子様は、ハイマン・トロス・ディーバイとおっしゃる。

 銀髪に紫の瞳をした、大変見目麗しいお子様だ。

 私は当初、この婚約を喜んでいいのか、悲しんでいいのかわからなかった。

 前世でも、今世でも色気より食い気だったからなぁ。

 ただ、時折お会いする第三王子殿下は、やさしく声を掛けてくださったから、いじわるなゴリ男と婚約させられるより、ずっと幸せだろうと思うようになった。

 王城に招かれるたびに、聞きたくもない陰口が耳に入ってもやもやしたけど、それ以上に私の気持ちをふわふわさせる、色とりどりのお菓子と簡単な話題を用意してくれているハイマン殿下は、とってもいい子だ。

 ええ。私、エリスは餌付けされてます。

「ようこそ、エリス嬢。しばらく訪ねることもできなくて申し訳ない。いかがお過ごしか?」

「お招きくださりありがとうございます、ハイマン殿下。おかげさまでつつがなく過ごしております。近頃、母に刺繍を習いはじめました。殿下がお忙しいのは重々承知しておりますが、おかわりありませんか?」

「私は、やっと馬に乗ることを許されたところだ。刺繍か、すばらしいことだね。いつか、エリス嬢の作品を見せてもらっても?」

 ちんまい男女がいっちょ前の口調でやりとりするのは、傍から見れば微笑ましくも、滑稽かもしれない。でも、曲がりなりにも王族と貴族だからなぁ。

「あの。不出来でお恥ずかしいのですが、よろしかったらお使いください」

 侍女から薄い箱を受け取って、殿下に差し出す。もちろん、中身も箱も殿下の近習がチェック済み。

「ありがとう! 素敵だ。大事に使わせてもらうよ」

 とてもお世辞には聞こえない誠実な言葉と、真心のこもった笑顔。

 ハイマン殿下はさっそく、めちゃくちゃ高価そうなポケットチーフと、私のさし上げた(辛うじて血の付かなかった一枚、一応は絹)のハンカチを差し替える。

 おおぅ。たれっと角の折れたところに、獅子というのもおこがましい、前衛的な猫のような四本足の黄色い何か。

 なんと、お恥ずかしゅう。

 俯く私に、殿下は音もなく立ち上がり、今日も過剰なスキンシップをば。

 手を握るにとどまらず、傍らに立って私を抱き寄せ、頭をよしよししてくれる。

 なんのサービス!? 誰の役得?

 護衛やメイドは、この場にいるけどいない扱いをされる人たち。

 少し離れたところに座っているお目付け役は、確か殿下の大叔母様に当たる方。

「んんっ」

 わざとらしい咳払いに、殿下が渋々離れて自分の席に座る。

 最初から三回目くらいまでは、がちがちに固まってた私だけど、だんだんわかってきたよ。

 ハイマン殿下は、とっても寂しがり屋。

 よく考えれば当たり前だよね。まだ六歳で、王族だから、普通の貴族以上に家族ともおいそれとは会えないだろう。

 たぶん、私のふくよかな体に、安心感を求めてるのじゃないかしら?



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