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31、紫の少年②


 それがきっかけで、彼もちょくちょく顔を出すようになって。

 相変わらず、憎まれ口をきいてばかりいたけれど、時々すごく思いつめた顔をすることがあった。

「ほんとに飛べるんだろうな?」

 はじめは左目の眼帯のことも含めて心配していた私だけど、この少年が妙に人目を意識して、「…左目が疼く」とか、「封印された力が…」とか言い出すと、周りの大人たちが微妙な表情をすることに気付いた。特に男の人たちね。

 怪我や病気なら治療が必要だし、そういう事例は聞いたことがないけれど、魔力関連の異常も疑った。

 まず、身近な大人で、少年のことも見ている子爵様にご相談すると、「あれは成長期の子供に稀に発症する特有の病で、大人になれば自然と治るものだから、決して触れてやるでない」と言い聞かせられた。

 ふーん? よくわからないけど一安心。

 そうなれば、だんだん遠慮もなくなってくる。

「やっぱり飛べないじゃないか!」

「手伝いもせずに文句ばかりつけるなんて、格好悪いわよ?」

 私もまた手伝いもせず、知恵も出さず、人との交流と自身が遊ぶことを優先させてきたのだが。少なくとも文句はつけてない。

 しかし、子爵をはじめ、主だった大人たちが行う飛行実験が失敗するだろうことがわかっているのに、それを黙っている自分に、少々ばつの悪い思いをする。

 数々の完成品を知っている私は(もちろん詳しい仕組みや内部構造は不明)子爵たちに、それとなくヒントを与えることもできるわけだけど、それをしないのは、試行錯誤する過程を大事にしていて、失敗することすらも楽しんでいる彼らには、無粋なことだと思うから。

 でも、それはそれ。この少年を「何もしないくせに」と責めるのは、私こそ格好悪い。

「な、なんだと!」

「だから、私たちも作ってみましょうよ」

「は?」

 そんなことは考えもしなかったのか、呆気にとられる彼。

 また「できるわけない」とか、「ほんとに」云々言い出すのだろうなと身構えていると、この時、なぜか彼は素直に頷いたのだ。

「やる」

「え?」

「つくるって言ってんだよ!」

 子供らしく、大人たちの手による複雑な構造を真似したがる彼を何とか説得。

「私たちは子供なんだから、いきなりあんなの作れないわよ。まずは…」

 ただただ、大きいだけの凧を作ることにする。

 はじめはぶつぶつ言っていた少年も、その大きさが扉十枚分(私としては畳に換算したいところ)にも及ぶものだと理解すると、水色の目を輝かせはじめた。

 うん。大きいことは、いいことだ!



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