20、縦ロールとの再会③
なんにしろ、私の行動は変わらなかった!
「あり、がと、ございま」
「ユア、ウェルカム。どういたしまして」
おずおずと扉の向こうから顔をのぞかせたサンガ嬢は、うん。やっぱり小動物みたいで、可愛い!
「そういえばまだ、ご挨拶もしていませんでしたね。ハロー、ハワユ?」
「アイム、ファイン…」
うん、体は治っても元気じゃないよね。それでも、気を取り直したように微笑んでくれる彼女。
「センキュ。アンド、ユー」
「アイム、ファイン、トューユー。マイネーム、イズ、エリス・ティナ・バーランド。プリーズ、コール、ミー、エリス。エリスと呼んでください」
「マイネームイズ、サンガ・シビユレ・モートレール。プリーズコールミー、サンガ。くだ、さい」
「イェス、レディ・サンガ! ウェルカム。ようこそ、ディーバイ王国へ」
目一杯明るい声で、歓迎の意を伝えると、サンガ姫は感極まってしまった。おおぅ、こっちももらい泣きしそうだよ。
ずびずび音を立てているのは、さっきの侍女とメイドかな?
サンガが落ち着くまでに、それなりに時間が掛かったけど、彼女が苦しんでいた時間の長さに比べればなんてことはない。
彼女は微かに「マム」って、何度もお母さんを呼んで、私に抱きついてた。おお、よしよし。
この豊満な体が、女の子にも有効だなんて。いや、役に立ったんだから、よろこばしいことだよ!
あらためて、お世話になりっぱなしの治療師を、顔を巡らせて、探す。
爽やかな緑の風とでも表現したいような、緑色がかった銀髪(もう、どんな髪色の人間に会っても驚かないわ)を緩く束ね、琥珀色の目がやさしい。まあ、こんなお顔をしてたのね。
私も、相当に慌てていたようだ。あらためて彼にお願いをする。
「レディ・サンガの目を診ていただけませんか」
彼は美しい顔に不似合いな、きょとんとした表情で私を見る。
「特にお顔に傷は見当たりませんでしたが、大抵の怪我も病気も、さきほどの治療で治ったはずですよ?」
「ええと、近視は病気ですか?」
はっとする治療師。
「失礼! なんと、これでは医療従事者として失格だ。あらためてお礼を言わせてください。ありがとう、バーランド嬢」
彼はバタバタと走って行って、必要な器具を引き出してくる。そう、片目を隠して、「上」とか「下」とか「右」とか言うあれ。
「レディ・サンガ。リラックース」
親指と人差し指でCの字をつくって、「アップ、ダウン、ライト、レフト」と身振り手振りを交えて説明。いや、上とか下とか英語でなんて言ったっけ?
とりあえず私がやって見せると、興味津々な様子で、真似をする。可愛い。
結果、彼女は視力が両目合わせても、〇・一もないことがわかった。
そりゃ、ティーカップもひっくり返すし、火傷をしていない状態でも、歩みもその他の行動も、おずおずとしたものになって当然。
彼女は、調整用の眼鏡(レンズをカチャカチャ入れ替えられるあれ)に感動した様子で、後日、もっといいものが出来上がってくると説明しても、首を横に振って、絶対にそれを離そうとしなかった。
うん。よそから見た感じがどうかより、本人が見える方が大事だよね。
家に帰って、ことの顛末を報告すると、嫌悪の情など見せたことのないお父様が顔を顰めて、「好きなようにやってやれ!」と私を嗾けた。
お、おぅ。そういうことなら、遠慮なく。




