二人目の女
「まー君…」
隣で美由紀が、独り言のように呟く。俺は、彼女を優しく抱きしめる。
そして…俺は、これでよかったんだと、頭の中で何度も繰り返した。
美由紀というのは、二人目の女だ。一人目の女は、遠くにいる一華。
付き合った途端に性格が豹変し、命からがら逃げ出した。
そして、この地で美由紀と結ばれたという訳だ。
「ねえ、まー君。」
「なに?」
「…大好き。」
「なんだよ、それ。」
甘える美由紀をみつめながら、俺は、これでよかったんだと確信した。
ある昼下がりのことだ。俺は、家の掃除をしていた。
「美由紀の部屋も、しとくか。」
俺は、美由紀の部屋の扉を開けた。
その途端、棚に乗せていたのだろう段ボール箱が落ちてきて、中の物が飛び散った。
「あちゃー、早く片付けなきゃ。」
俺は大急ぎで、散らばった物を段ボール箱にしまった。
最後の一つに手をかけた時、俺はおやっ、と思った。
それは、写真の入ったケースだった。その一枚目を見て、俺は啞然とした。
俺と一華の、ツーショット。
どうしてこれがここに?もしかして、一華の友達?
いや、友達とはいえ、こんなに簡単に恋人との写真を渡すはずがない。
・・・まさか!!
「やっと気付いたの。整形だけで騙されちゃって。…馬鹿な男。」
はっとして振り返ると、後ろに美由紀がいた。
片手に、包丁を握りしめている。
「お、お前、何を…」
「何がダメなの?あんたは、あたしを捨てたくせに。」
美由紀は、ゆっくりと、俺に近づいてくる。
「やめろ。そのことは謝る。だから、やめてくれ。」
「やだ。許さない。許せない!」
俺が何か言おうとした時には、もう遅かった。
鋭利な包丁が、俺の身体を貫いた・・・。