学園へ(3)
「……イラ、レイラったら!!」
「はっ!!」
ああ、ぼーっとしすぎててケイトに話しかけられたことに気が付かなかった……
「ちょっと、本当に大丈夫なの??まだ具合悪いんじゃない??」
「サラ、違うのよ。本当に。ええ、朝のインパクトが強すぎただけで、ええ、本当に本当に……」
ああ、2人に話したい。とても話したい。でもここで話すわけにいかない。今日の放課後も無理だ。シンディー先生に、なんでギルバート様を使ってまで守る、って言われたのか、聞かないといけないもの。
ああ、ダメだ、集中できない……
そんなことを思っていたら、今日の授業はすべて終了した。
「レイラ、元気になったのなら、学園内のカフェサロンにでも行かない??」
ケイトとサラが声をかけてくれた。きっと、私の昼間のぼーっとしっぱなしなことが気がかりで、カフェに誘ってくれたのだろう。
ああ、私、前世でも今世でも、良い友達を持ったなぁ。はあ、幸せ者だよ、私は。
「ケイト、サラ、ありがとう。だけど私、今日は保健室に行かないといけなくて。」
「あら、そうなの??もしかして、本当は具合が悪いのに来たんじゃ無いでしょうね??」
サラ、そんな笑顔の圧をかけてこないで!!アルマに少し似てるわ!!笑顔で圧をかけることって、淑女の嗜みだったかしら……
「そ、それは違うわサラ!!本当に具合は大丈夫よ!!ただ、保健室の先生と少しお話しがあるだけなの。」
「そう??具合が悪くないのなら良いのだけど……それじゃあ、残念だけど、また今度一緒にいきましょ。」
サラは、そう言って器用にウインクをした。
「ええ、もちろん!!」
「それじゃあ、一階まで一緒に行きましょ。」
急いで荷物をまとめ、2人と話しながら廊下へ出る。すると、なぜだかいつもより廊下が騒がしいことに気づいた。
ケイトは言う。
「あら、珍しいわねぇ。なんか賑やかだと思ったら。」
サラは言う。
「ほんとね。あそこにいるの、高魔力保持者の、フォーサイス様じゃない??」
それを聞いた私はたまらず変な声が出る。
「ふぁ!?」
2人は私の方を見る。
なんと、この騒ぎの中心となっていたのは、ギルバート様だった。しかも運が良いのか悪いのか、そちらをそろりそろりと伺うと、バッチリ目があった、ような気がする。
私は全力で逸らしましたとも。ええ。ぐるっと。思いっきり逆を向きましたとも。
ギルバート様はものすごい無表情で、廊下の柱に寄っ掛かっていた。ように見えた。その周りを、たくさんの人が囲んでいて、輪の中心にいる彼は、心なしか疲れているように見えた。
彼とは今朝方、知り合いになった。多分。それでも、こんな場面で助けることはできない。できない、というか、したくない。したら私の学園生活、地に落ちる。間違いない。主に女子から殺気を向けられるに違いない。
そんなことを、誰がわざわざするだろうか。かわいそうだけど、人気者の務めだ。うん。
是非に頑張ってくださいませ、ギルバート様!!
そんなことを思っていたからだろうか。私の目の前に、影ができる。
「レイラ、行こう。」
とてもよい声に顔を上げれば、なぜかギルバート様が前にいたのだった。
サラ・アメル(14歳)
学園でレイラ、ケイトと仲良くなった子。アメル子爵家の長女。茶髪に青色の瞳。
〜レイラがあまりにも反応しなかったお昼休みのケイトとサラの会話〜
「ケイト、これ、どう思う??」
「朝、何かあったことは確実ね。この子、嘘がつけない質だもの。」
「そうよね。一体、何があったのかしら。」
「この子は、相談事は割とすぐになんでも話すタイプだから、多分、ここでは言いにくいことなんだわ。」
「…まさか、悪口を言われた、とか??」
「それは無いわ。この子、悪口は聞こえないもの。それに、聞こえたとしても、全く違う方向に解釈するわ。」
「それもそうよね。レイラならそうなるわよね……」
2人揃って、遠い目になるのだった……