学園へ(2)
「あの、フォーサイス様、私のこと、送っていかなくても大丈夫ですよ。あの、荷物を渡してくだされば自分で行きますから…」
ああ、氷の魔道士様に送ってもらったりしたら、嫉妬の目線が!!女子が怖い!!特にフォーサイス様のファンクラブが怖いよ!!
私はイケメン好きなミーハーだけどさ、別にアイドルに手を出したいわけではないんだ!!アイドルはみんなのアイドルだよね!!普通に見て元気を貰うだけで十分ですよ!!
「……いや、送る。君、名前は?」
あっ!!自己紹介してなかった!!送る送らないの前に、重要なことだよね。
「た、大変失礼いたしました。私、スピネット伯爵家が娘、レイラと申します。」
「レイラ。うん。……俺は、ギルバート・フォーサイス。」
存じておりまする。
「レイラって呼んでも平気?」
「え??はい、大丈夫ですけど…」
え??なんでいきなり名前呼び??
いやそんなことより良い声なんだが。ちょっと素晴らしく良い声なんだけど、うわぁ、好きだ……
「うん。それじゃあレイラ、俺のことはギルバートかギルって呼んで。」
なんか保健室にいた時より遥かに饒舌なんだけどどうした!?しかも優しいんだけどどうした!?この人ほんとに氷の魔導士って呼ばれてるの??
「そ、それは、あの、お、恐れ多いので…」
そんなん、呼んでるところを他の女子に見られたら……
絶対に、「あんた何様よ!!」が始まるに決まってるよ!!
「ん、長い付き合いになりそうだから、大丈夫。」
え?長い付き合いになる、って一体どういうこと!?
やめて!!謎だけ増やしていかないで!!あと時間、時間無いんだよね!!
「えっと、その、フォーサイス、さ、ま、」
ま、まって、なんかすごい悲しそうな目でこっちを見てくるんですけど……
む、無理だ!!こ、こんな美形に悲しそうな目をさせるなんて!!
それで、表情がほぼ動いてないのに悲しそうに見えるのはなんでなの!?一体どんな技術駆使してるの!?
「あの、ギ、ギルバート、様、その、」
「うん。」
「ふぁ!!」
え、!何、何事なの!?氷のように表情が動かないって、嘘なの!?やっぱり嘘だったの??ちょっと、笑いましたよ!!激レアな笑顔ですよね!!
いや、笑顔というより微笑か。でも、それでも笑われましたよ!!ふわぁぁぁ、!
あ、元戻った…
「それじゃあ、行こう。」
こくん、と、思わず私は頷いていた。そして、あ、まずい、と思った時には右手首を握られていた。
「ん。ちょっとだけ、目、瞑っててね。」
突然そんなことを言われたかと思うと、なんと、私の教室の前にいた。
「え、……」
思わず、ギルバート様の方を見る。
「またね、レイラ。」
私が驚いている間に、荷物は私の手に戻って来ており、ギルバート様はそのままシュンッと消え去って行った。
私はそのまま、教室の前でチャイムが鳴るまでぼーっと突っ立っていることしか出来なかったのだった……