出逢い
「……きて、」
声がする。
「ほら、…い、起きて!」
「んぅ、」
「ほら、れい!!起きて!!!」
「おきたー、おきたってばぁ〜、」
「チョコチップメロンパン、」
「食べる!!」
「よかった、やっと目を開けた。」
「え、」
「待っていたわ。あなたがここへ来る時を。」
だれか、嘘だと言ってくれ。
「ようこそ、我らの心の城へ。」
これは一体、なに??
「分からないことだらけじゃろう。妾が一から説明するゆえ、よく聞きなさい。」
「あな、たは」
「ふむ、緑茶とくっきー、とな?」
彼女がパチン、と手を叩くと、私は椅子に座っており、目の前にあるテーブルには、緑茶とクッキーが置かれていた。
「なに、ここは我らの心の城。欲しいものなどすぐに出てくる。」
「は、はぁ。」
「さて、どこから話そうか。いや、見てもらうが早いか。テレビ!」
彼女がパチン、と手を叩くと、そこには大型で薄型の見るからに高級そうなテレビが現れた。
「えぇ、なんでもありだな、ここ。」
「うむ、その通り!これに妾の伝えたいこと、妾が見聞きしたもの、ちょっとアレなシーンは飛ばして映すゆえ、見てくれ。」
「え、あの、あなたのなまえ……」
「ポチッとな。」
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ザザザ、という音の後そこに映し出されたのは、日本にいた頃、韓国ドラマだか、中国ドラマだったか、そんなので見たことがあるような、後宮、のようなものだった。
自分と手を繋いだ母と思しき女性は、子に語って聞かせる。
「母は、裕福とは言い難い、貴族の家に生まれました。」
自分は、必死に頷いているのか、画面が異常に揺れる。なるほど、カメラの視点はきっと彼女の目線。彼女が見聞きしたものが、ほんとにまるっと映されているのだろう。
「そして、母は家のため後宮に入り、下級女官として仕事をこなしていたのです。」
「にょかん??」
「ええ、そう。女官です。母は、この広い宮の、お掃除をしていたのです。」
画面が再び揺れた。
「その中でも母は、母と同じように家のため、10にして後宮に召し抱えられた皇妃様と出会い、そのお方にお仕えしておりました。
しかし、陛下は皇妃様が10歳であることを知らなかったのか。果たして、忘れておられたのか。皇妃様の元へと足を運ばれたのです。」
母の顔がこちらを向いて、ふわりと微笑んだように見えた。
「母は、皇妃様のことを庇うため、皇妃様に成りすましました。なにせ、皇妃様はまだ10の子供でした。しかも、皇妃様は、…」
「???こうひさまは??」
「皇妃様は、女子ではなかったのです。皇妃様は、男の子であらせた。」
「お、おなごではむぐっ、」
「シーッ、このことは、誰にも話してはなりません。良いですね。」
画面が必死に頷いた。
「よろしい。あなたは賢い子ですね。」
「そこでたまたま皇帝の目に止まったのでしょう。母は皇帝の寵愛を受け、麗羅、あなたを身籠ることができたのです。
だから、皇妃様には感謝してもしきれません。あなたに出逢わせて下さったのですから。」
ザーッ、と画面が砂嵐になり、場面が切り替わる。
そこに映っていたのは、口から血を流して倒れている女性。
「かあ、さま、」
私はそう口にした。つまり、この人は私の母だった人。その場から一歩も動けずにいる私に、誰かが声をかけている。がしかし、その声は彼女に届いてはいなかった。
突然視界が大きく揺れ、目の前に誰かが現れた。そして、私のことを呼ぶ。
「姫さま!!」
「かい、り??」
「いいですか、姫さま。よくお聞きになって。時間がないんだ。今、この宮は攻められている。皇帝に対して、反逆が起きたんだ。だから、せめてあなた様だけでも。
以前は入るなと伝えていた森。そこをひたすら真っ直ぐに走ってください。そうすれば、私の連れが待っている手筈になっている。どうか、お逃げになって。あなた様は、生きて。」
「かいり、いや、いやよ、妾と一緒に、そなたも逃げようぞ。」
「姫さま、残念ながら妾は逃げられぬ。なにせ、そなたの母が仕えた、皇妃なのだから。」
「!!なぜ今になって、真実を語る!!妾が気づいていないとでも!!」
「ほら、お行きになって。愛しい人の娘ぐらい、守らせておくれ。守れなかった分まで。」
「っ、、」
視界に映る地面が歪んだ。そして、それを振り切るように腕で擦られた。
「必ず、必ず後から来るのですよ!!約束です!!」
「麗羅、生きるのです。何があろうとも。さぁ、早く!!」
画面の中の私は、そこからひたすら走った。森の中に入っても、走って、走って走って走って走って。
ひたすらに走っていたら、突然視界がブラックアウトした。当たり前だ。突然、そこにあるはずの地面が消えたのだから。
再び、画面に砂嵐がおどった。
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「さて、れい。ここまでが、妾の元の世界での記憶、だいじえすと版、とやらじゃ!」
「…………」
は、話が重いのに、なんか明るいんですけど……
「それはそうじゃろう。妾はお主なのじゃから。お主だって、過去は変えられぬこと、知っておろう?なれば、それは抱えて生きてゆくしかないと。」
「そう、ですね。」
「さぁ、次はこの世界に落ちた記憶じゃ。ポチッとな。」
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砂嵐が消え、再び画面が映る。
そこに見えるのは、ひたすら青い空に、鬱蒼としげる草木に、先ほどまでとは異なる空気。
この時すでに、彼女はどこかで理解していた。だから、嫌に冷静だった。
目覚めた彼女は、立ち上がろうとして、自身の足の違和感に気づく。そう、左足首がぶくぶくに腫れ上がっていたのだ。どうやら捻挫したらしい。
その場でどうしようかと困っていると、特に音もなく、黒いライオンが現れた。その瞳は金色と紫色のオッドアイ。
画面は、そのライオンに固定された。ライオンもまた、こちらを見ていた。そして、ゆったりとした足取りで近づいてくる。不思議と、彼女はそのライオンに恐怖を感じない。
やがて、ライオンは手の届く距離にやって来た。もちろん、画面の中の手はそのライオンに触れる。
「あなたは、だれ?」
「……」
私は尋ねるが、ライオンは何も答えずにじーっとこちらを見てくるだけである。
「答えては、くれないの。」
「……」
ふいっとライオンはそっぽを向き、私から少し離れた。そして、眩い光を放った。眩しくて、目を開けていられなかった。
「っ、」
「もう、目を開けて大丈夫だ。」
そう言われてゆっくりと目を開ければ、そこには美しい青年がいた。その外見は、ギルバート様にそっくり、瓜二つ。瞳の色以外は同じ。
思わず、「ギルバート様…」と言ってしまったくらい。
「あなたは、さっきの動物さんね?」
「いかにも。俺は、この世界の妖精王である。」
「妖精王??ここには妖精がいるのね。」
「そして、其方は聖女である。」
「妾が???」
「とりあえず、森の家へ案内しよう。ふむ、その足では歩けまい。失礼する。」
そう言った妖精王は、なんでもないことであるように彼女を抱き抱えた。
彼女も特に反抗などはしなかった。いや、する気力すら残っていなかったのだろう。自然と瞼が落ちていくのが分かった。
ざざっ、と画面が揺れる。
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「さて、これが妾がこの世界へ落ちた記憶じゃ。」
「妖精王……ギルバート様にそっくり…」
「そうさな。彼は妾たちの子孫であり、王の力を受け継ぎし者じゃからな。」
「え、それは一体、どういう……」
「ははは、先に妾の幸せ絶頂の記憶を見せてやろう。」
「幸せの、記憶……」
「さーて、ポチッとな!!」
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画面に、子供が映る。
「おかあさま!!」
「あ!!かあさまだ!!」
ちらほらと黄色くなる黒髪に黄色の瞳の男の子、ちらほらと青色になる黒髪に青色の瞳の男の子が突進してきた。
「ヨミ、シジマ、楽しそうで何よりじゃ。」
私は優しく彼らの頭を撫でる。
彼らの髪の毛、本当に不思議だ。なんで黒一色にならないんだろう。黄色に青に、染めた様に急激に色が濃くなっていっている。
「母上、来ておられたのですね。」
後ろから、少女の声がかかる。
「シラン、そなたもおいで。」
シラン、と呼ばれた少女は、綺麗な白髪に紫色の瞳をしていた。
「は、母上、私はもうそのような年ではありません。」
「何、母がそうしたいのじゃ。だからおいで。」
「シランねえもおいでよ!!」
「シランねぇも、ぎゅーっ!!」
「し、仕方ありませんね。お母さん、ヨミ、シジマ。」
「ふふ、シランもかわいいの。」
「ねぇもかわいいの!」
「かわいいの!」
「、もぅっ!」
「あらあら、シラン様が拗ねちゃった??」
「ほんと!!かわいいね〜。」
「コマ、フウ!!」
そこに映ったのは、目覚めてから会った、小さな妖精たち。綺麗な白髪に、少し紫が入った髪、瞳が金の可愛い少女、コマ。黒髪に少し紫が入った髪、瞳は金の、綺麗なお姉さん、フウ。
通りで見たことがあると、知っていると、懐かしいと感じるわけだ。
「おや、コマ、フウ。もうこちらに来て良いのか??アルフは??」
「王は、支度を済ませたらこちらへ来るかと。あと3分もしたら来ますよ。」
「そうか、ありがとう、2人とも。」
「いいえ!!我らは王の伴侶であらせられる麗羅どのに支えられて幸せでございますから。」
「また大袈裟な、コマ。ふふ、それじゃあ、イチイとスイが来るのが1番最後かの?」
「麗羅の息子、緑と赤いののことね?今はロクとハクと森にいるわよ。うーん、何か狩ってくるかもね。」
フウがそう言った途端、森の方でボーン、という爆発音が響いた。
「そうかそうか。元気なことは良いことじゃ。」
ザザっと画面が揺れた。
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「さて、れい。妾が見せられるのはここまでじゃ。」
「え?」
「これ以上、妾の記憶を見せるわけにはいかぬ。そなたが戻れなくなるからの。」
「戻れなく、なる?」
「そうじゃ。えーっと、そうそう、たいむずあっぷ、じゃ!」
「え、まだ分からないことが沢山あるのに、」
「まぁ、ここから先は見ていて気持ちの良いものではない。」
「何を言ってる…」
「子どもらに責を負わせ、妾は1番に死に、アルフに負の力を作らせてしまった。飲み込ませてしまった。すまない…」
彼女が謝罪を伝えたいのは、私なのか、それとも、妖精王なのか。
「そなたらに残したものは、大きな悪意。そなたと妾は違う。じゃが、そなたは妾である。妾のやらかしたことの後始末をする時じゃ。」
なんとなく、それは分かる。だから私は頷いた。必ず解決して、私の愛した人を自由にすると。
「すまぬが、よろしく頼む。そなたのこと、妾はずっと見守っておる。さぁ、彼の者の元へ帰りなさい。あなたのことを待っておる……」
突然目の前がぽやぽやと光り始め、私は再び意識を失った。
○人物紹介
・麗羅
黒髪黒眼の初代聖女で、妖精王と結ばれた人。妖精王と結ばれ、彼女の瞳の色は妖精王と同じ、金と紫のオッドアイとなった。
その後4人の息子、1人の娘に恵まれた。
・妖精王
黒いライオン。瞳は金と紫のオッドアイ。
黒髪に金と紫のオッドアイの麗しい青年になれる。
麗羅との間に、4人の息子たち、1人の娘がいた。
⚪︎麗羅とアルフレッドの息子、娘たち
・シラン(紫蘭)
紫の瞳に白髪の娘。長女。兄妹の中で1番妖精の力が強かった。
・ヨミ(黄泉)
黄色くなる黒髪、黄色の瞳。
男の子。
・シジマ(静寂)
青くなる黒髪、青色の瞳。
男の子。
・スイ(翠)
緑になる黒髪、緑の瞳。
男の子。
・イチイ(赤檮)
赤くなる黒髪、赤の瞳。
男の子。
⚪︎妖精たち
・ロク(シカ)
色は柔らかい茶色。一部紫。瞳は金。
人型は、茶髪の一部が紫、瞳が金の美しい青年。
麗羅をあるじと呼ぶ。
・コマ(キツネ)
色は白。一部紫。瞳は金。
人型になると、綺麗な白髪に一部紫が入る。瞳は金の、可愛い少女。
麗羅を麗羅と呼んでいた。
・ハク(ユキヒョウ)
色は白黒。一部紫。瞳は金。
人型になると、白髪に黒、紫が混ざった髪の毛に、瞳の色は金の、野性味あふれるイケメン。
麗羅を妹分だと思っているので、麗羅と呼んでいた。
・フウ(ウマ)
色は黒。一部紫。瞳は金。
人型になると、黒に一部紫が混ざった髪に、瞳は金。クール系のお姉さん。
麗羅をご主人と呼ぶ。




