現状把握します(4)
「私から質問しても?」
私の少しの違和感はさっと流れてしまった。
「なんでしょう、お義母様。」
この一言で。
ねえギルバート様、私のお母様のこと、おかあさま、って言った?
え?
ちょっとストーップ!!!ナチュラルすぎませんかね!??
そんな私の心の声と同調した人間がおりまして。
「「お、おかあさま、だと!???」」
はい、兄と父がハモりました。
うわぁ、覚悟は決めたけど、こういう風になる事にも慣れないといけないし、なんなら私もギルバート様の母に対してするってことだよね??
慣れるまでは緊張と恥ずかしさでりんごになりそうだ。
むぅ、なんだかギルバート様に負けた気分。なんでそうもサラッと言えちゃうのか。練習とかしてないのに。
ちなみに私は言える自信が 1ミリもないです。はい。コソ練するかな……
「ふふ、ロビン、リアム、うるさいわよ。」
ぎゃーぎゃー騒いでいた父と兄がひゅっと息を呑む。
うん、大事な話を邪魔されること、お母様が嫌いなことだからね。キレた母は怖いからね。ついでに言うと強いからね。問答無用で実家に帰る寸前だね。もちろん、リッカルドおじ様とカーラおば様と共に戦うために。
よくよく考えちゃったら物騒なことこの上ないな。だって、ストレス発散のために狩りに行く、みたいなもの……
「ふふ、ごめんなさいね、ギルバート。」
「いえ。」
うおう、母がギルバート呼びになっとる。適応力が高すぎる。私ですらまだ呼べてないのに。
でも、覚悟を決めたのなら、それもそう。私はお母様の娘。きっちりしないとだな。
「私が聞きたいのはね、今の話に出てきた、人型になれる妖精たちのこと。この子を守る妖精たちは、一体何者かしら?」
とってもファンシーな女の子2人、コマとフウ。きっとあの2人も含まれているんだろう。
「……申し訳ないが、俺にも分からない。ただ、推測はできる。」
ギルバート様が目だけで大丈夫か、と問うてきたので、大丈夫だと返せば、彼はゆっくりと口を開いた。
「……昔、実家の書庫で人型になることのできる妖精たちに関する記述を目にしたことがある。その本には、人型になることのできる妖精たちは、かつて妖精王に仕えていた者たちであり、初代聖女に忠誠を誓いし者である、と。そう書かれていた。」
あぁ、なるほど。
「そう。その本に書かれている妖精たち、十中八九あの子たちのことでしょうね。」
「うん、間違いない。あの子たちは、あの人に仕える者たちなんだ。もちろん、あなたに仕える者たちでもある。」
「レイラ?」
はぁ、またしても私は1番にはなれないのか。代替品であると??
いや、嫌だ。私を、ワタシとして、見て。変なフィルターなんか通さないで、私を1番に……
「レイラ!!しっかりして!!」
「ッハ、んっ、ゲホっ、」
危なかった。何かに引っ張られていた。いや、沈められていた??
ギルバート様がいなかったら、彼の声が私に届かなかったら、どうなっていたことか。
「っ、レイラ、お願い、置いていかないで。俺を置いて、何処かに行ってしまわないで。」
「ごめ、なさい、ゲホッ、!!」
「レイラ!!」
あぁ、私と彼は、結ばれているのか。だから、彼を見た瞬間に堕ちた。
これは罠?
それとも、運命?
私のことを愛してくれている、私の愛する家族よりも強く、太く、結ばれているなんて。
そんなことを思いながら、私は再び意識を手放した。




