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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる
48/51

現状把握します(3)


「だから廊下を走ってはなりませんと申しましたのに……はぁ、やれやれですわ。」


「ほんと、ロビンとリアムはいつまで経っても変わらないんだから。」


 そう呟きながらゆっくりとした足取りでハドリーと母がやってきた。


 その間にギルバート様から離れていればよかったんだろうけど、なぜかギルバート様に抱きしめられていて。まるで、私のことを渡すもんか、みたいな感じで………


 結果、その2人も私とギルバート様が抱き合っているところを見るわけで。


「まぁまぁまぁ!!!ふふ、私の勘はやっぱり当たるわねぇ。」


「本当に、奥様の勘にはいつも驚かされますわ。」


 母よ、何なのかなその勘ってやつは……


 ハドリーもハドリーだよ……


 いや、知ってた。知ってたよ??2人がこんな人だって知ってたよ??ものすごく大好きな2人だよ??


 でも、恥ずかしさっていうのは別なんだよね!!ちょっとどころじゃなくて恥ずかしい!!


 よし、離れよう。そう思ってそろそろ〜っと離れようとしたら、ギルバート様に膝に乗せられてしまった。なぜ??私は貴方の膝に座ろうとはしていないんだよ??


 そんなことを思っていると、前から声が掛かる。


「さて、レイラ。あなたの心は決まったのよね。」


 うん、なんでそういうことがわかっちゃうのかなぁ、お母様は。疑問系じゃなくて、確認でもない言い方をするんだから。


「はい。決まっております。」


 それでも、私の決意を表すために、きちんと目を合わせて答えた。


「よろしい。」


 母は深く頷いてくれた。


 入り口付近で固まっていた父と兄は、母の後ろで、ハドリーに廊下を走ったことについて怒られている。父も兄も、ハドリーには敵わないんだよね。


 まあ、それはそれとして置いといて。


「ギルバート様、お話ししてくださいますか?一体、私がいなかった間に何があったのか。」


 私はギルバート様の胸に頭を預けて言う。


「………………」


 ギルバート様は無言、ただ、ギルバート様の鼓動がトクトクと心地よい。もちろん、ハドリーに父と兄がぐちぐち怒られている声は聞こえてるけど。


 しばらくするとギルバート様は決心ができたのか、私のことをゆるく抱きしめながらこっくりと頷いた。


「では、とりあえず私を下ろしてもらって。お話をお願いします。」


「……………」


「おい、ギルバート。妹を助けてくれたことには感謝しているが、さっさと妹から離れないか!!」


「そうだぞ!!アレクの倅、我が娘レイラを早く離しなさい!!」


 いつの間にか復活した父と兄が騒いでいる。


「…………………」


 そこに無言を貫くギルバート様。ギルバート様と目が合う。目は口ほどにものを言う。目が、私を離したくないと言っている。


 んぐぅ、きゅんですよきゅん!!


 って、いやいや、違くて!!


「…と、り、あ、え、ず!!お父様もお兄様も、お座りください!!お母様みたいに!!そして、私も座りますから!!」



―――――――――――――――――――


 そこから語られたことは、私が想像していたことに近かった。


 まあ、あの会場にいた貴族たちが一様に彼女に向かって跪いた、と聞いたときはめちゃくちゃ驚いたけど。私の今後に心配しかねぇ、って心の底から思ったけど。


 ギルバート様とのあれやこれやがバレてる時点で終わってたからもう良いか………


 さらば、平和な私の学園生活………


 まあ、それだけじゃない、ね。


「何があったのか話して下さり、ありがとうございます。それから、お母様もお父様もお兄様も、ご心配をおかけしました。私は大丈夫です。それに、きっと彼女は、私の一部なのでしょうから。」


 実は、私が()()から離脱させられた時、別の者が表に出てくるのを感じていた。でも、別にそれが居心地が悪いとかではなくて。


「それは、どういうことだ?」


 ギルバート様に尋ねられる。


「そう、ですね………言葉にするのは難しいですね。ただ、彼女は私の中にずっといたのだと思います。彼女が出てきても、特に拒絶反応が起きたわけではないですから。」


「レイラ?何で悲しいの?」


 あぁ、まったく、この人にも敵わない。何で悲しいってバレたんだろう。


 私は大きく息をついて、言葉を発する。


「私は彼女と入れ替わるまで、混沌が近づいてくることが怖かったんです。大きな恐怖しかなかった。でも、彼女と入れ替わるとき、とにかく悲しい、という感情が溢れて溢れて止まらなくて。あの恐怖の理由が、悲しい、と分かってしまうことが怖かったんだ、って理解したんです。」


 だから、もう怖くはない。ただ、悲しい。早く魔物を、あの混沌を、何とかして天に返してやらなくてはならない。悲しさで潰れてしまう前に。


「あなたは…」


「え?」


「いや。」


 ギルバート様が何か言ったけれど、私には聞き取れなかった。



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