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平凡令嬢、夢を掴む  作者: 海ほたる


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追憶の中


『……、…い。起きなさ〜い。もう7時になるわよ〜。』


 あぁ、お母さんがカーテンを開けたせいで眩しい。


『ほら、いいかげん起きなさい。学校、遅刻するわよ。』


 ちらっと薄目でスマホを確認。時刻は6時55分。


 ちっ、あと5分寝れるじゃないか。起こしに来るのが少し早い。


『……んん、あと5分〜。』


『はぁ。まったく。ちゃんと起きて来なさいよ。』


 そう言った母は私の部屋から出て行く。一方の私は浅い眠りへと落ちてゆく。なんかこの感覚、懐かしい。


『あれ、お母さ〜ん。……、まだ寝てるの??』


 階下から姉の声がする。夢と現の狭間でその声が響く。大好きで大切で憧れで、それでいて嫉妬の対象だった、姉の声。


『……、そうなのよ。あなたも言ってやって。お姉ちゃんの言うことはよく聞くんだから。』


『も〜、……は仕方のない子だなぁ。』


 今日は仕方ないんだってば。数学の課題があるのをすっかり忘れていたせいで徹夜だったんだもん。眠いもんは眠い。だから後少し、あと少しこのまま、…


『……、お姉ちゃんが……のチョコチップメロンパン、食べちゃうよ〜??』


 まったく、うるさいなぁ、……は。って、ん?何っ!!チョコチップメロンパンだと!!そんな、それは私が食べる!!


 文字通りがばっとベットから飛び起きた私は、慌てて姉の声がする階下へと駆けてゆく。


『……、それは私が食べる!!もう起きた!!トイレ行って顔洗って来るから!!食べないでよ!!』


 どかどかとトイレに入り、ダッシュで出て、洗面所で顔を洗う。あー、水が冷たい。でも目が覚める。


 そんな朝の、()()()()()のルーティーン。


 横にかかっているタオルで顔を拭く。


 自然と前を見れば、ものすごく美人でもなければ、ものすごく不細工なわけでもない。整ってるけど美人じゃない。眼鏡を掛けたり、髪の毛を切ったり、マスクを付けたりすると私だと判別されなくなる。そんな、()()()()()の私の顔があった。


 そう、私はこんな顔()()()。私が思うに、この顔は化粧映えすると思うんだよね〜。お母さんそっくりだし。自分じゃできないから分かんないけど。あー、お化粧の練習しなくちゃなぁ。もう受験も終わったし。やりたいことは目白押し。


 さて、これからどう生きようか。


 とりあえず、まずは朝食、チョコチップメロンパンだけどね!!








 ミーンミンミンミン、と蝉が鳴いている。太陽はジリジリと地面を焼きつける。


 あれ?なんで私、こんなところにいるんだろう。それに、あそこにいるのは幼い頃の私、と、お兄、ちゃん?


『…くん、……のこと、だ〜い好きなんだよ!!わたし、しってりゅの!!…くんはね、わたしのお兄ちゃんなんだけど、一番すきなのはね、……なんだよ!!』


『ちょっ、……、何言ってやがる!!そんなわけ、』


『……、しってりゅのよ!!すごいでしょ!!ふふん!!』


『はぁ〜、お前には敵わないな。小さいくせに、周りをよく見てやがる。そうだ、そんなすごいお前にお願いだ。このお願いを守れるなら、アイスを買ってやろう。』


 そうだ、あんな風に、よく頭を撫でてくれたっけ。あと、お菓子をいつも買ってくれた。あの人の、お兄ちゃんの、名前、は、…


『ふわぁ〜、アイス!!…くん、早く早く!!アイス!!』


『ちょ、引っ張るな……、それにお願いを聞いてくれたら、って、こりゃあ聞いてねーな。はぁ、まあいいか。』










 外は快晴。ドライブ日和である。


『……、早く早く!!今日は約束の日よ!!』


『ふふ、……、そんな急かさないでよ。準備は万端にして行かなくちゃ。私だって姉妹2人旅、楽しみにしてたんだから!!』


 私、高校を卒業して、免許を取ったの。それで、練習も兼ねてってことで、お姉ちゃんと一緒にドライブに行く約束をしてたんだ。


 お姉、ちゃん??ねえ、姉の名前は??私、お姉ちゃん、なんて呼んだこと無い、のに。


 そう言えば、私の名前も。


 なんで、分からないの??










 景色がガラスのように割れ、漆黒に溶けていく。


 ねえ、ここはどこなの??


 ここ?どうせ夢の中、とかでしょ。確か気絶したんじゃなかったっけ??


 それじゃあ私は??私は、一体、誰なの??


 それは、……なんて言えばいいんだろうね。私は私、としか……。あっ!ほら、私にもいろんな私がいるじゃない??前世の私、今世の私、その私の中にもたくさんの私。だから総じて私、みたいな??


 そういうことじゃなくてさ、いや、そういうことなの??って、やっぱ違うでしょ!私が聞きたいのは、私の今世の名前。前世の名前も気になるけど、思い出せないし。思い出したところで、前世、終わってるし。前世だけに。


 あぁ、いまの名前、ね。私は、えっと、……なんだっけね??


 おい、思い出さないと帰れないんだが。ギルバート様待ってるじゃん。サラもケイトもお兄様も。いなくなって欲しいとかなら別だけどさ。あ、自分で言っててクソ野郎だなって思ったから今の撤回で。私の大切な人たちを信じずにいてどうするってんだ。


 そうだよ私。これだけ救われて助けられて守られてきてるってのに。ま、名前は時がくれば思い出せるよ。


 やっぱり??そうだよね〜、そんな感じするもん。


 ……………


 ねえ、私。そろそろ帰ろう。


 そうだね。暇だわ。回想みたいなの終わっちゃったし。


『…いで、ほら、こっちだ。時は巡った。さあ、今こそ、………』


 なんか喋ってない?私以外の者が。


 いいよ、めんどくさそうだし。捕まると長そう。今は帰ること優先。


『ちょ、なんで………、いつの時代も自由な子多くないか?少しく………』


 しかも音質わっる。


 それな〜。さて、帰ろうか。


 私が大好きな人たちがいる、あの場所へ。


 今なら、思い出せる。


 私の名前は、レイラ。さ、夢から覚める時間だ。思い出は大切に抱えていればいい。


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