お疲れさんの夜会(3)
「ケイト、サラ!!」
私は早速、2人に声をかけた。
「レイラ、こっちに来たの??」
「今日は2人ね、ってケイトと話してたところなのに。」
「うん!!ギルバート様に食べてきて良いよって言われたの。」
「あら、そうなの。ふぅん、フォーサイス様、随分と懐が広いじゃない。」
「そうね、ケイト。ただ、このドレスを着ているレイラにちょっかい出せる人なんて、中々いないでしょう。」
「ちょっと2人とも、何言ってるの。ギルバート様の懐は深いかもしれないけど、私、誰かにちょっかいなんて出されたことないんだから。」
いつも注目集めてるのあなたたちですからね!!私にまで男は回ってきませんよ!!
しかも、集まってきた男の子たちを毎度毎度素晴らしく、ぱっぱかぱっぱかあしらっていますからね、あなた方!!
「「…………….」」
「そんな目されてもそれが事実だってば、」
「まぁ、そういうことにしておきましょうか。」
むぅ、解せぬ。なぜそんなジト目で見られるのだ。
そんなことを話していれば、7時の鐘が鳴る。今夜の夜会のスタートの時間だ。
確か、最初に王太子様とアリス様があの壇上に立って、今日の優勝者たちに賞状を渡したりするんだよね。
でも、鐘が鳴ったのに、王太子様とアリス様はやってこない。
そこから30分経っても、2人はやって来なかった。
まぁ、王太子様もアリス様も、ものすごいオーバーワークだもんなぁ。他の生徒会役員の人たちは、今日の司会進行頑張りました、準備も頑張りました、ってことで、仕切る側より私たちと同じ客側に近いもの。
……まじで近い将来、2人とも過労で倒れないかな??何気、国王よりも今の学生の期間が1番忙しい気がするよ??
だって、王太子様は国王様から任せられている仕事に加えてこの生徒会の仕事。
アリス様は王妃教育に加えて生徒会の仕事。学園にもきちんと通われてる。
2人の勤務体制、ブラックもブラック、ってところじゃない??
大人たちよ、できる時にやらせれば良いっていうのは、少しわかる。若い奴らにやらせたい、っていうのは、少しわかる。エネルギー分けろ、っていうのも少しわかる。
分かるけど、やらせ過ぎて潰したらどうしようもないですからね!?未来の国王様、潰さないように気をつけてよね!?
でも、それにしても遅いなぁ。
「王太子様とアリス様、遅いね。」
「そうね。……何か、学園外で問題でもあったのかしらね。」
「そう言えば、リアム兄さんとグランディエ様もまだ来てないわ。」
「でも、メトカーフ様は来てるよ??」
お兄様たちは一緒に遊んでる可能性が高いかな。あの2人、仲良しっぽいからなぁ。
しかし兄よ。お前は将来の嫁探しから逃げたいだけだろう。そこにグランディエ様を巻き込んだ形なんだろう。
今日の大トリ務めた奴らが此処にこなくてどうするよ……
「……まあ、皆様そのうち来るでしょう。」
「……それもそう、だね。」
兄よ、妹といとこは来ると信じているぞ。
「ふふ、このいちごのケーキ、とっても美味しいわよ。」
「じゃあ次はそれ食べる〜。」
片手にケーキの入ったお皿、片手にフォーク、からの立ち食いである。
お行儀悪いかもしれないけど、別に良いよね!!ぱくっとひと口。うんまっ!!これは最高、絶品ですわ。他のクッキーとか、
「ん〜、おいひぃ〜。」
「相変わらず美味しそうに食べるわねぇ。」
「だって美味しんだもん!!美味しいは幸せ〜。」
「ふふ、そうね。」
「まったく、レイラが美味しそうに食べるからこのケーキ、大人気になっちゃったじゃないの。」
「ん?」
「あらほんと。今日はいつもの倍くらいの視線を感じているだけあるわ〜。」
何言ってるんだ、私が客寄せパンダみたいだってか。でも分かる、美味しそうに食べてる人がいると自分も食べたくなるよね。客寄せパンダ、よくできた仕組みだな。
そして視線が倍なのは私のせいか。いや、私じゃなくてギルバート様の人気分だな。ギルバート様かっこいいもんな、分かる分かる。みんな惚れちゃうよ。
だから、好きになんてなりたく無かった。私、独占欲強いもの。私だけを愛してくれないと嫌なの。
でも、好きにならない、なんて選択肢も無かった。見た瞬間から惹かれていたから。綺麗な瞳に見つめられたら、問答無用で胸が高鳴るから。このドキドキを無視することなんて出来なかった。
私はこれが恋だと分からないほど、無知では無かった。
分からない方が、知らない方が、無知でいた方が、幸せなこともあるって言うのに。
知ってしまったことを消すことは難しい。
私は、見た瞬間から惹かれているこの感情が本物なのか、たまに分からなくなる。
今のお母様、お父様、お兄様を家族として愛しているこの感情は本物なのか。
この世界は、本物なのか。
もしも、もしもこの世界が、私の見ている夢だったとしたら?
もしもこの世界が、仮想現実なのだとしたら?
もしも、私がまだ、日本に生きているのだとしたら?
私は、怖い。この世界にいることが、私はどうしようもなく怖い。




