お疲れさんの夜会(2)
今日あったことをできる限り頭の中で整理整頓していれば、舞踏館に到着する。
できる限りっていうのは、隣にギルバート様がいて、手を取られていて、もう神々しいくらいに美しくて、かっこ良すぎる人が隣にいるからです。
はい。集中なんて無理難題だった。
学園内にある舞踏館の開け放たれた扉の前。この舞踏館、授業でも使ったりしてるんだけど、やたら立派である。王宮にあるものの縮小版、みたいな規模で。ほんと、ご立派なことで。
たまたまなのか、すでに開け放たれた扉の前に人はいなかった。そして、受付のような人に名前を確認され、ギルバート様がそれに応える。
ここにいるこの、受付のような役割を果たしている人。この人は、この日のために、王城から派遣されてきている。会場内を整えてくれているのも、王城から派遣されてきた人たちである。つまりは、その道のプロをこの学園に呼んで、この夜会を催している訳である。
まったく、とっても豪華な人事をしてくれているものである。こんな豪華な場所で、将来の予行演習ができるのだから。
まあ、学生たちが行うこの夜会の内容なんて、ほんと、お疲れの会みたいなものらしいんだけどね。飲んで食べて、お話しして、みたいな。あぁ、あとは人脈作りってやつか。うん、それは貴族っぽいね。
そんなことを考えていれば、マイクのような魔具を使って、私とギルバート様の名前が読み上げられる。
「ギルバート・フォーサイス様、レイラ・スピネット様、ご入場です。」
「レイラ、行こう。」
そう、ギルバート様に声をかけられる。それに、私は意を決して頷き、微笑みながら返事を返す。
「はい、ギルバート様。」
私とギルバート様が、2人で中へ入った瞬間。場が、しーん、と静かになった。そして、ありとあらゆる視線が私とギルバート様に集まっているのを感じる。
私たちが一歩一歩と前へと進めば、人々はざわざわし始める。話している内容は、敵意と興味、と言ったところだろうか。
予想していたとはいえ、こんなたくさんの視線、この間の食堂事件以上だし、随分と久しぶりに受ける。
私は、手を握ってくれているギルバート様を仰ぎ見た。すると、気付いてくれたのか、ギルバート様がこちらを見てくれた。そして、安心させるようにその紫の瞳が和らいだ。
ついでに、と言わんばかりに、ギルバート様の手のひらに乗せられていた私の手は、ギルバート様の腕にかけられた。結果的に、腕を組んで歩いているような感じになる。
なんだろう!?んーと、どうしたんだろう!??えっと、その、何というか、距離が近い!!近くてなんかもう、もう、ええい!!もう、何でもいいや!!
そんなことを思いつつ、ふわふわとギルバート様にエスコートされて歩いていけば、サリヴァン様のところに連れてこられていた。
ギルバート様がサリヴァン様に声をかける。
「ディラン。」
「ギルバート、どうして、今、こっちにきたんだ……」
サリヴァン様、目元を手で揉んでいる。ずいぶん頭が痛そうである。大丈夫かな。まあ、その原因は私たちでしかないよね。ははは。
だって、人はいなくなるのに、視線は一緒に移動してくるんだもんね。はははは。
「紹介したい人がいるって言ったのは、そっち。」
ん?紹介したい人??サリヴァン様の隣にいる女の子かな??
「あぁ。そうだがな、今じゃなくても良かったと思うんだ。…すまないね、スピネット嬢。」
「いえ、私は別に。それよりも、その、サリヴァン様のお隣の方は……」
申し訳なさそうな顔をしたサリヴァン様に、私は微笑みながらそう返す。
だって私ってば、もう割り切りましたからね!!分かってたことだしね!!
「あぁ、今日はあなたに、私の妹のミアを紹介したかったんだ。ほら、ミア。」
紹介された女の子は、サリヴァン様と色がそっくりで、ルビーのように綺麗な瞳に、キャラメルみたいな髪をしている、とても綺麗な女の子だった。
「……どうも、ミア・サリヴァンです。」
「私はレイラ・スピネットです。どうぞ、レイラとお呼びくださいな。」
「……はい。……………」
ただし、愛想はゼロである。何というか、その、こちらとは関わりたくない、と全身が訴えているようにしか見えないのだけれど………あと、すっごくつまんなそう。
「すまない、スピネット嬢。ミアはいつもこんな調子でな。少しは視野を広げてほしいのだが……」
そんなことを兄が話している間も、彼女は1人、サリヴァン様の隣でひたすらお菓子を摘んでいる。
あ、少し奥にケイトとサラがいる。
みんな良いなぁ、高みの見物で。私だって、お菓子食べたいのに!!ミア様もそうだけど、2人もずるい!!めっちゃ美味しそう!!
それもそのはず、この夜会のお菓子類、王城から派遣されてきた人たちが作っている、めちゃくちゃ美味しいやつなのだ。
くっ、みんなが羨ましいぜ!!
「…レイラ、食べてきていいよ。俺はここでディランと待ってるから。」
「それじゃあ、私、行ってきます!サリヴァン様、失礼いたしますね。」
「あ、あぁ。」
サリヴァン様には申し訳ないけど、こちらと仲良くしたくなさそうな子に、わざわざ話しかけよう、とか思うような人じゃないんだな、私は。
1人でいたい時だってあるし、1人の方が良い、っていうタイプもいるし。
私は、私を受け入れてくれる人たちと、穏やかに、楽しく、幸せに生きていければ、それで。
欲を言えば、私を愛してくれる人、私の愛する人がいたら。
さて、ギルバート様に行ってきて良いって言われたし、とりあえず美味しいもの、たっくさん食べるぞ!!
私はそんなことを考えながら、ケイトとサラがいる方へ向かった。




